泊原発3号機の営業運転移行プロセスはデタラメ

菅総理(当時)は8/11の参議院予算委員会で次のように答弁した。

  

泊原発については、従来の原子力安全・保安院による検査のみでは、国民の理解と安心を得ることは困難と考えております。このため、官房長官・原発事故担当大臣及び経産大臣で協議した結果、原子力安全委員会も関与した形での安全性の確認を行うことといたしております。

具体的には、原子力安全・保安院による検査結果を原子力安全委員会に報告するとともに、同委員会に安全確保上の留意事項の有無についての意見を求め、問題がないことを確認した場合には、経産大臣の方から定期検査の終了証を交付する、問題があるということになれば、そこでもう一度考え直すということになるわけであります。

8/11参議院予算員会議事録 当該答弁は本委員会での菅総理最後の答弁)

 

一方、原子力安全委員会・斑目委員長は8/11夕の記者ブリーフィングで次のように述べ、安全委員会によるダブルチェックを全面否定した。 

 

・私の方は何ら要請等を受けていません。

・あくまでも我々は、報告を受けたという、それだけの立場ということになります。

・そういう立場に安全委員会は法的にもない。

・あくまでも、そういう報告を受けたということだけでございます。

・細野大臣から要請を受けることはあっても少なくとも指示を受けることはないという、独立した立場にございます。等々

 

斑目安全委員長がこのようにダブルチェックがなかったことを明言したにもかかわらず、8/17高橋はるみ北海道知事は泊3号営業運転移行の同意を発表した記者会見の場で、「安全委員会のダブルチェックを受けた」と嘘をつき、住民を騙した。高橋はるみ知事の「同意」を受けて、同日、泊3号は営業運転へ移行した。

 

また同日(8/17)夜、菅総理(当時)は「原子力安全委員会でもきちんとチェックしたと聞いている」と発言。菅総理(当時)も高橋はるみ知事も、斑目安全委員長が自らダブルチェックの要請すら受けていないと明言しているにもかかわらず、「ダブルチェック」はあったと「嘘」の発言をしたのだ。

 

8/11の菅総理(当時)発言「原子力安全委員会も関与して泊3号の安全性の確認を行う」は、国会での答弁であり正式な政府見解だ。総理の指示のもと、この問題を担当した枝野官房長官(当時)・細野原発相・海江田経産相(当時)3閣僚は「協議」したというが、結局何をしたのか、しなかったのか。

 

8/23菅総理(当時)は参議院財政金融委員会で「ダブルチェックはしていない」との質問に対して次のように答弁した。

 

私は、ちゃんと原子力安全委員会も関与してチェックをするようにということを指示し、そういうふうになされたという報告を受けております。

 

今日質問があるということで、改めて法的背景を調べてみました。そうすると、この原子力委員会及び原子力安全委員会設置法の中に、核燃料物質及び原子炉に関する規制のうち、安全の確保のための規制に関すること、あるいは原子力利用に関する安全の確保のための規制に係るものに関することというのは、十三条の中で原子力安全委員会が企画、審議及び決定するという項目の中に入っております。つまり、私は、この法律に基づいて企画、審議及び決定するという手続を原子力安全委員会がきちっと取ったという理解の下で了解をいたしました。

 

私がきちんと原子力安全委員会にも関与するように、すべきだと言ったときに、こういう設置法に基づいてそれが可能ですという説明を事前の段階で受けておりまして、その法律に基づいて原子力安全委員会の方に指示をしたという理解をいたしておりました。今の議事録(8/11斑目安全委員長・記者ブリーフィング)については、確かにこの御質問いただくということで初めて見ましたけれども、もし法律に基づかない対応がなされたとすれば、それは問題ですので、私ももう一度法律にきちっと基づいた対応がなされたかどうかは確認してみたいと思っております。

 

私が一般的にやったことは、御承知のように、七月十一日に三大臣に新たなルールを作ってくれということで申し上げました。実は、この新たなルールの中では、一次評価というものは、定期検査中で停止中の原子力発電所についての運転再開の可否について判断するとなっておりまして、率直に申し上げて、定期点検中で稼働が再開されているものというものがややグレーゾーンに掛かっておりました。そういうこともありましたので、改めて原子力安全委員会の方にきちんと関与してくれという確かに指示もいたしました。その裏付けとしての、法律にあるから指示をしたというよりも、裏付けとしての法律もきちんと確認をしたということで、もしそうした手続がちゃんと取られていないとすれば、少なくとも私の指示なりその裏付けとなる法律にのっとらないことになりますので、それについては改めて原子力安全委員会の方にどういうことであったかは聞いてみたいと思います。

8/23参議院財政金融委員会議事録 後半の大門実紀史委員に対する答弁)

 

菅総理(当時)は8/23国会質疑で、安全委員会によるダブルチェックが行われていない可能性を認識し、安全委員会に確認・事実関係を聞いてみたいと述べたが、まさに政権末期症状でその後に対応した形跡はない。このように泊3号の営業運転移行に関する政府の対応、高橋はるみ北海道知事らの対応は、支離滅裂でまるでデタラメだったのだ。新任の鉢呂経産大臣は、まず、泊3号営業運転移行問題について、事実関係を精査・検証する必要がある。

 

現在、菅総理(当時)が指示した「ストレステスト」が行われている。政府は7/11の枝野・海江田・細野3閣僚文書で、ストレステストについて「(現行法令では関与が求められていない)原子力安全委員会による確認の下、評価項目・評価実施計画を作成し、これに沿って、事業者が評価を行う。その結果について、原子力安全・保安院が確認し、さらに原子力安全委員会がその妥当性を確認する」という方針を示した。しかし、次々と「やらせ」が明らかになっている電力会社がテストを実行・評価し、その結果を「やらせ」の主犯たる保安院が確認し、更に法的権限もスタッフもない安全委員会が確認するというやり方で行われるストレステストの信頼性は、あまりにも低いと言わざるを得ない。

 

泉田新潟県知事も西川福井県知事も、地震による損壊の可能性に言及し、事故原因究明・検証が行われない限り再稼働は認めないと言明している。再任となった細野原発担当大臣は統合会見のやりとりからも明らかになったように、保安院・東京電力と完全に一体となっている。臨時国会で国会に設置される「福島原発事故調査委員会」は、原発批判派の専門家の意見も求め、隠蔽を許さず徹底的に真実を追及すべきだ。

 

鉢呂経産大臣は就任会見で「より厳格な安全基準で評価し、保安院のみに任せず、地元の理解を得る方向でやっていく」と述べたのだから、誰もが納得するチェック体制の構築を最優先に行うべきだ。その誰もが納得する新体制のもとで安全審査指針・耐震設計審査指針・防災指針等の全面改定がなされ、それに基づく新たな知見による安全チェックが行われない限り、原発再稼働は議論・検討の対象とさえならないことは、論理的に自明ではないか。

 

コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )