「宇宙と芸術展」 森美術館

森美術館
「宇宙と芸術展」
2016/7/30~2017/1/9



森美術館で開催中の「宇宙と芸術展」を見てきました。

狭義的には高度100キロ以上の空間を指す宇宙。それは空間や時間や全ての物質などを含む存在であり、時に人々の信仰の対象でもありました。

そうした宇宙を芸術の観点から捉えようとする試みです。とは言え、アプローチは多角的。そもそも芸術自体も多様です。歴史や天文学、さらに宇宙開発資料などを交え、人類の見た宇宙の諸相を紹介しています。

それにしても一見、親和性が薄いようにも思える宇宙と芸術です。そもそも何が出ているかと思いきや、冒頭は曼荼羅でした。しかもこれが充実。鎌倉や室町や南北朝期の「両界曼荼羅」や「星曼荼羅」などが一定数まとめて出ています。

気がつけば竹取物語も舞台の一部は宇宙です。竹の中に生まれながら、最後は月の都へと帰るかぐや姫。10世紀後半に成立したとも言われています。江戸時代前期の「竹取物語絵巻」が展示されていました。

ほか「天球儀」や「天球図」も面白い。江戸時代は学問の進展もあったのでしょう。国友藤兵衛重恭による「月面観測図」などの興味深い資料も出ていました。

一部作品の撮影が可能でした。


岡吉国宗「流星刀」 1898年 東京農業大学図書館

一振りの刀に目が留まりました。「流星刀」です。時は明治31年。富山に落ちたという隕石を素材に作られました。刀身はやや青みを帯びています。妖しい光が放たれていました。


歌川芳虎「西郷星の珍説」 1877年 千葉市立郷土博物館

星の中に何やら人物の影が見えます。歌川芳虎の「西郷星の珍説」です。西郷とは西郷隆盛。人影も彼を表したものです。もちろん実際に西郷隆盛が星と化すわけはありません。何でも人々は隆盛の死に際し、ちょうど大接近していた火星に隆盛が見えたと噂し、星を西郷星と名付けたのだそうです。一騒動あったに相違ありません。

西洋の天文学資料もあります。反射望遠鏡や天球図、それに日時計です。コペルニクスの「天球の回転について」の初版本や、天文学の父とされるガリレオ・ガリレイの手稿なども目を引きます。全体を通して博物資料が意外と多いのも特徴と言えるかもしれません。

中盤は一転して現代美術でした。アンドレアス・グルスキー、森万里子、トレヴァー・パグレン、ヴォルフガング・ティルマンスらといった、第一線で活動するアーティストの作品が展示されています。


ビョーン・ダーレム「ブラックホール(M-領域)」 2016年

ビョーン・ダーレムがスケールの大きいインスタレーションを展開していました。名は「ブラックホール(M-領域)」。テーマは銀河と多元宇宙です。9つのサークルが渦を巻きながらも複雑に交錯しています。壮大です。一方で素材は極めて簡素。木や蛍光灯、それに電球といった身近な日用品ばかりでした。その辺のギャップも面白いところかもしれません。


コンラッド・ショウクロス「タイムピース」 2013年

コンラッド・ショウクロスの「タイムピース」は時間をテーマとしています。直接のモチーフは日時計です。写真では分かりにくいかもしれませんが、終始回転しています。やや激しい。動きはあまり予測出来ません。


ヴォルフガング・ティルマンス「ガイド星、ESO」 2012年 ほか

ティルマンスは8枚の写真を組み合わせた作品を出品。もちろん宇宙がテーマです。写真には天体望遠鏡から見た星などが捉えられています。うち「ガイド星、ESO」が異色でした。写されたのはモニターの画面。オレンジ色の光がモザイク状に広がっています。実はこれが星です。チリの天文台の捉えた深宇宙の画像とのことでした。


セミコンダクター「ブリリアント・ノイズ」 2006年 作家蔵

太陽のエネルギーが波打っています。セミコンダクターの「ブリリアント・ノイズ」です。3面スクリーンによる映像作品、太陽活動の記録です。核融合のエネルギーが放出される様子を見ることが出来ます。凄まじい。ノイズ音が響いています。太陽光の強度を表しているそうです。


「火星隕石(ナクライト)Y000593, 11」 ほか 国立極地研究所

惑星、ひいては宇宙の生成を知るための貴重な資料がありました。隕石です。所有は国立極地研究所。おおよそ17000点もの隕石標本が保管されています。月や火星からやって来た隕石も少なくありません。


ローラン・グラッソ「縄文時代の司祭」 2015年
 
宇宙の生命に関する作品も興味深い。ローラン・グラッソやパトリシア・ピッチニーニらは、異星人、ないし未知の生命体をテーマとした作品を制作しています。

ラストは宇宙探索ないし旅行、人類の未来を見据えた展示でした。


「アポロ11号任務記録(月着陸交信記録) アメリカ航空宇宙局」 1969年 金沢工業大学ライブラリーセンター

「アポロ11号任務記録」は人類初の月面着陸を成功させたアポロ11号の交信記録です。月着陸船イーグル号と管制センターとのやり取りを記録。交信直後に記者団に配布されました。


トム・サックス「ザ・クローラー」 2003年

スペースシャトルのモデルを制作したのはトム・サックスです。一際大きい。発射場でしょうか。配管や設備なども細かに再現されています。元はチャレンジャー号です。かの悲しい爆発事故を起こしました。サックスは事故で亡くなった宇宙飛行士の夢を叶えるべく、本作品を作ったのだそうです。


チームラボ「追われるカラス、追うカラスも追われるカラス、そして衝突して咲いていくーLight in Space 2016」 作家蔵

お馴染みのチームラボが迫力のあるデジタル・インスタレーションを展開しています。「追われるカラス、追うカラスも追われるカラス、そして衝突して咲いていく - Light in Space」です。さながら星の瞬く宇宙空間を舞うのは八咫烏。縦横無尽です。大変なスピードで四方八方に駆け巡っています。鑑賞者に当たると花と化して砕けました。音楽も軽快でテンポが良い。独特の浮遊感があるのも特徴です。さも無重力空間へ投げ出されたかのような錯覚にさえ陥ります。


サーチ/クラウズ・アオ「マーズ・アイス・ハウス」 2015年 作家蔵

未来といえば「マーズ・アイス・ハウス」も興味深いのではないでしょうか。マーズとあるように舞台は火星。何でも2030年以降に実現を目指す有人探査のコンペで優勝したプロジェクト案だそうです。火星の住居、4名の宇宙飛行士が居住可能です。果たして人類は火星に何時、到達するのでしょうか。

出展数は約200点と膨大です。内容もともかく多岐に渡ります。時間に余裕を持ってお出かけください。

ロングランの展覧会です。2017年1月9日まで開催されています。

「宇宙と芸術展」 森美術館@mori_art_museum
会期:7月30日(土)~2017年1月9日(月・祝)
休館:会期中無休。
時間:10:00~22:00
 *但し火曜日は17時で閉館。
 *「六本木アートナイト2016」開催につき、10月21日(金)は翌朝1:00まで、10月22日(土)は翌朝6:00まで開館。
 *入館は閉館の30分前まで。
料金:一般1600円、大学・高校生1100円、中学生以下(4歳まで)600円。
 *東京シティビュー(展望台)、屋上スカイデッキ、森アーツセンターギャラリーへは別途料金が必要。
場所:港区六本木6-10-1 六本木ヒルズ森タワー53階
交通:東京メトロ日比谷線六本木駅より地下コンコースにて直結。都営大江戸線六本木駅より徒歩10分。都営地下鉄大江戸線麻布十番駅より徒歩10分。


注)写真はいずれも「クリエイティブ・コモンズ表示 - 非営利 - 改変禁止 2.1 日本」ライセンスでライセンスされています。
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