「李傑(リー・キット) The voice behind me」 資生堂ギャラリー

資生堂ギャラリー
「李傑(リー・キット) The voice behind me」 
6/2-7/26



資生堂ギャラリーで開催中の李傑(リー・キット)個展、「The voice behind me」を見てきました。

1978年に香港で生まれたアーティスト、リー・キット。現在は主に台北を拠点に活動しているそうです。

2013年にはヴェネチア・ビエンナーレの香港館の代表に選出。展示は高い評価を受けます。ウォール・ストリート・ジャーナルにて「必見ベスト5」のアーティストにも挙げられました。



さて場内、まず目に飛び込んで来たのが壁でした。しかしながらそれはただ空間を仕切るものではなく、文字が記され、絵具が塗られ、まるで一枚のキャンバスのようにも見えます。そして壁の前には一脚の椅子が置かれていました。果たして監視の方が座るためのものか、そうではないのか。必ずしも明確に見分けがつくわけでもありません。



奥へ進んでみました。すると暗がりの中から浮かぶのは2点の平面作品、いずれも男性がモチーフとなっています。さらに再び備品が現れました。今度は机です。紙、布も垣間見えます。いずれも既製品なのでしょうか。また照明も特徴的です。限りなく淡く、時に青白いが空間を満たします。まるで薄日の差し込むリビングのようです。そういえばペアのクッションの並んだソファもありました。



リーは、布やダンボールに描いた絵画、ライトやタオルハンガーのような既製品と絵画を組み合わせた作品、映像と絵画を並べた作品など、日常の一部と見紛うさりげない作品を制作しています。 *資生堂ギャラリーサイトより

結論から言えば、これら全てが作品です。新作と旧作を交えたもの。平面や立体を組み合わせては一つのインスタレーションを展開しています。



照明はギャラリーの壁そのものにも「絵画」を作り上げました。光になぞられた壁の質感はまるでキャンバス地のようでもあります。光の色はまるで塗られた絵具のようです。そのニュアンスは絶妙、一つとして同じ景色を作りません。また光と影の合間がキャンバス同士の境、さらには床面の影までが一つの抽象絵画のようにも見えてきました。

ただしリーの作品、必ずしも何かの絵画のみを空間に志向しているわけではありません。といいのも例えばテーブルの表面を引っ掻き続けた作品には「効率のみを追求するようになった都市への静かな批判がこめられている」(解説シートより)とのこと。率直なところ、一見するだけでは、なかなかリーの「問題意識」は汲み取れませんでしたが、社会的な批評性を持ちえた作品でもあるようです。



それにしても2巡、3巡すると、どこか空間から離れ難くなるような展示でした。不思議なまでの心地よい感覚は何に由来するのでしょうか。しばし時間を忘れて滞在しました。

7月26日まで開催されています。

「李傑(リー・キット) The voice behind me」 資生堂ギャラリー
会期:6月2日(火)~7月26日(日)
休廊:毎週月曜日
時間:11:00~19:00(平日)、11:00~18:00(日・祝)
住所:中央区銀座8-8-3 東京銀座資生堂ビル地下1階
交通:東京メトロ銀座線・日比谷線・丸ノ内線銀座駅A2出口から徒歩4分。東京メトロ銀座線新橋駅3番出口から徒歩4分。
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )
« 速水御舟「菊... 「ヘレン・シ... »
 
コメント
 
コメントはありません。
コメントを投稿する
ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません
 
名前
タイトル
URL
コメント
コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

数字4桁を入力し、投稿ボタンを押してください。