「ネオテニー・ジャパン - 高橋コレクション」 上野の森美術館

上野の森美術館台東区上野公園1-2
「ネオテニー・ジャパン - 高橋コレクション」
5/20-7/15



日本屈指のコレクター、高橋龍太郎氏の現代美術コレクションを概観します。(ちらしより引用。一部改変。)上野の森美術館で開催中の「ネオテニー・ジャパン - 高橋コレクション」へ行ってきました。

出品作家は以下の33名です。絵画、立体、インスタレーションなど、約80点の作品が紹介されていました。

会田誠、青山悟、秋山さやか、池田学、池田光弘、伊藤存、小川信治、小沢剛、小谷元彦、加藤泉、加藤美佳、工藤麻紀子、鴻池朋子、小林孝亘、佐伯洋江、さわひらき、須田悦弘、高嶺格、束芋、千葉正也、照屋勇賢、天明屋尚、できやよい、奈良美智、名和晃平、西尾康之、町田久美、Mr.、三宅信太郎、村上隆、村瀬恭子、村山留里子、山口晃(50音順。公式HPより転記。)

どうしてもスペース自体に魅力の欠ける上野の森美術館ということで、趣のある展示を求めるのは酷かもしれませんが、それでも手狭な会場を器用に使っているという印象は受けました。また出品作家毎の演出に著しい差が存在していましたが、まずは以下、その見せ方を含め、心引かれた作品をベスト5ということで挙げます。順は不同です。

・鴻池朋子
 立体、映像、絵画の大作三点を最高のシチュエーションで提示している。白金の高橋コレクションでの展示には及ばないが、入口そばの通路という空間を逆手にとった手法が見事だった。冒頭としてはこの上ない掴みだろう。

・加藤泉
 二階のラストを飾る展示。木彫の人形三点、また油彩数点と、出品数にも申し分がない。壁面に手を向けて寄り添う人形の様子は、奇妙でありながらもどこか可愛らしかった。

・西尾康之
 外の公園を緑を望んだテラスに並ぶ巨大な彫刻群。鱗のような肌を露に、腕を組み、また前へと見据える老若男女の姿は異様な光景を生み出していした。大阪の国立国際で見て威圧された時のことを思い出す。

・池田学
 出品数一点のみにも関わらず、恐ろしいほどにまで存在感のある作品。摩訶不思議なドラマが、細密な描写にて細胞増殖するかのようにふくれあがる。ミヅマで見た時とは異なり、立派な額装をしていたのには驚かされた。

・奈良美智
 てっきり一、二点程度の展示かと思いきや、大作を含めた計4点の絵画を展開していて見応えがあった。特徴的な少女のモチーフはともかくも、画肌におけるアクリルの質感をはじめとした素材感に絵としての巧さを見出せる。



難しい理論を並べたキャプションがあるわけでもなく、上記の作家が比較的淡々と紹介される展示なので、幼児成熟を意味するという「ネオテニー」云々までを汲み取るのは困難でしたが、一個人の蒐集したコレクションで、今の主要なアートシーンを一気に楽しめてしまうのはやはり他に例がありません。その点でも希有な展覧会であることは間違いなさそうです。

どこまで高橋氏が展示に携わっているのかは不明ですが、前述した演出効果の差は、例えば氏の嗜好の方向性を素直に表したものだと捉えるとまた興味深いのではないでしょうか。さわひらきの映像が気の毒なほど目立っていませんでしたが、その辺の状況も気になりました。

かつて一度どこかでお目にかかった作品も多く、若干の既視感を覚えるのは事実でしたが、できやよい、三宅信太郎、Mr、村山留里子ら、私としては画廊にまでなかなか追えない作家を楽しめたのも重要なポイントです。なお産経新聞がipod他、PC上でも聞くことの出来る作家本人の作品解説を配布中です。詳細は下記公式ブログをご覧下さい。(ちなみにブログ上のアラーキー鑑賞記もなかなか楽しめます。)

作家の作品解説が聞ける「音声ガイド」配信中!/アラーキー来場! そして大絶賛!!!ネオテニー・ジャパン公式ブログ



それにしてもこの手の展示としては稀なほどにグッズが充実していました。鴻池のみみおは手が出ませんが、各種ポストカードを見ているだけでも財布のひもが緩くなってしまいます。



当日、会場にて開催された鴻池朋子のアーティスト・トークを拝聴してきました。そちらも追って記事にするつもりです。

7月15日までの開催です。なお本展示は以降、新潟県立近代美術館(7/21~9/10)の他、秋田県立近代美術館(9/19~11/29)と米子市美術館(12/13~2010/2/11)へと巡回します。
コメント ( 5 ) | Trackback ( 0 )
« 「ゴーギャン... 「内海聖史 - ... »
 
コメント
 
 
 
行きました。 (RICARDO)
2009-07-05 21:27:13
皆でワイワイとあれがこう見えると言いながら回るといいと思いましたね。
色んな作品があって楽しめました。
ワンポイントの解説が欲しかったですけど。
雑草でしたっけ?あれにはフフフと笑ってしまいました。
 
 
 
Unknown (はろるど)
2009-07-05 21:30:17
RICARDOさんこんばんは。早速のコメントありがとうございます。

>皆でワイワイ

仰る通りですね。
失礼な言い方かもしれませんが、学園祭的なノリで見たりすると意外と楽しめるような気がしました。

>解説

そういえばありませんでしたね…。簡単なものくらいはあっても良かったとは思います。

>雑草

今回の須田さんは比較的分かりやすかったですね。
以前、東近美工芸館かなにかの展示では見つけるのに苦労しました。
 
 
 
Unknown (あおひー)
2009-07-06 00:58:48
こんばんは。
今日は入れ違いだったみたいですね。

ネオテニーはまた行こうとは思うのですが、前回行ってみて時間が足りないなあと。

やはりこれは全国を巡回する価値のある展示だと思います。
 
 
 
Unknown (テツ)
2009-07-06 11:53:58
こんにちは。
はろるどさんもご指摘の通り、
鴻池朋子の展示でつかみは良かったのですが、
上野の森美術館の展示空間にはやはり不満です。

私にはどうも作品に没入することが出来ませんでした。
好きな作品たくさんあったのですが・・・
 
 
 
Unknown (はろるど)
2009-07-06 22:32:50
@あおひーさん

こんばんは。
昨日は失礼しました。あの日は皆さん、時間差(?)で谷中に集合状態だったようです…。

>全国を巡回する価値のある展示

書きそびれましたが、この巡回がまた意欲的で見事ですよね。
この展示を契機に、少しでも現代アートの面白さが認知されればと思いました。


@テツさん

こんばんは。コメントありがとうございます。

>鴻池

鴻池さんとそれ以降ではちょっと落差が激しかったですね。
コレクターさんなので作品に対する思いは人一倍だと思うのですが、
空間の制約が強すぎたのか、展示からそういう面が伝わってこないのは残念でした。

上野の森は本当に難しいです…。
 
コメントを投稿する
ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません
 
名前
タイトル
URL
コメント
コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

数字4桁を入力し、投稿ボタンを押してください。