「明治の七宝」 泉屋博古館分館

泉屋博古館分館港区六本木1-5-1
「近代工芸の華 明治の七宝 - 清水三年坂美術館コレクションを中心に」
7/19-9/15



このような工芸品があったとは知りませんでした。明治時代に花開いた、ガラス粉を焼き付けて模様を描いていく工芸、七宝の品々を展観します。泉屋博古館分館での展示を見てきました。

 

その艶やかでかつ繊細な絵付けの様子を見ていくと、さながら流麗な蒔絵の世界をガラス工芸で再現した世界を楽しんでいるような気分になっています。出品されているのは主に明治期に活躍し、近代七宝を完成させた尾張の作家、梶常吉や林小伝治らによる、全150点弱にも及ぶ七宝の数々です。実際、その意匠は時に肉眼で確認するのが困難なほど細かく、一部の作品には虫眼鏡が用意されているほどでもありますが、花鳥の美しい世界を蒔絵の如く雅やかに、それでいて西欧への眼差しを思わせるどこかエキゾチックな様は、確かに目を奪われるものがありました。私はどちらかというと花瓶の全面を紋様で埋め尽くす、例えば林小伝治の「花鳩図花瓶」などよりも、もっと余白を用い、モチーフにも軽やかさを感じさせる「菖蒲図花瓶」の方が好みですが、色彩感に溢れた絵が花瓶いっぱいにひろがっても、あまり重厚感を見ないのは、やはりガラスという素材のなせる業なのかもしれません。透明感が感じられます。

色絵貼付屏風の七宝仕立てにした「七宝貼込屏風」には驚かされました。まさに珍品とも言えるような代物ですが、壮麗な屏風に、例えば鳥獣戯画などをモチーフを借りたような七宝の板が何枚も文字通り貼り込まれています。また七宝との名を初めて聞く私のような素人にも理解出来る解説パネル、もしくはVTRなど、簡潔な装置を用いながらも丁寧に展示を組み立てる泉屋博古館の企画のセンスにも感心させられました。知られざる良品の魅力を紹介する、同美術館ならではの好企画です。



出品の大半は、世界屈指の七宝コレクションを誇るという、京都の清水三年坂美術館の所蔵品です。これ以上の七宝展は世界のどこを見ても存在し得ないとも言えるのかもしれません。



9月15日まで開催されています。
コメント ( 8 ) | Trackback ( 0 )
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コメント
 
 
 
Unknown (ruru)
2008-08-18 20:05:51
余りの緻密さに息が止まりましたね
全く、銀線で作った枠に色を入れ間違えたりしないのか?
などと考えたり…
三年坂美術館は訪れてみたい美術館の1つとなりました。
 
 
 
Unknown (はろるど)
2008-08-18 20:31:51
ruruさんこんばんは。
早速のコメントをありがとうございます。

>余りの緻密さに息が止まりましたね

同感です。
技術こそ海の外側からやってきたもののようですが、
あの細やかさの意匠は日本人ならではではないかなと思いました。
見事ですよね。

三年坂美術館、私も行ってみたいものです。
 
 
 
Unknown (はな)
2008-08-20 21:26:04
こんにちは!
京都旅行したとき、並河靖之記念館に行き、堪能してまいりました。ほんとに鳥肌が立つくらい感動したものです。
三年坂の作品も持ってきて企画展をやっていたタイミングにいけたのですが、私も三年坂美術館いきたいなっておもいました!
 
 
 
Unknown (はろるど)
2008-08-21 01:07:25
はなさんこんばんは。コメントありがとうございます。

>並河靖之記念館に行き、堪能してまいりました

何とそのような記念館があったのですか!
本当に細かくて綺麗ですよね。
当時の人々が驚きを持って受け入れたというのにも納得がいきます。

三年坂、京都では有名な観光地なので何回か通ったことはありますが、
美術館の存在には全く気付きませんでした。
次は是非行きたいです!
 
 
 
Unknown (とら)
2008-09-01 21:21:22
未知なる工芸の世界に案内していただき、ありがとうございました。明治の日本人の器用さには呆れました。拡大鏡なしで仕事してたのでしょうね。
 
 
 
Unknown (はろるど)
2008-09-02 01:35:09
とらさんこんばんは。
先日はどうもありがとうございました。

>明治の日本人の器用

大したものですね。その芸の細かさで競った部分もあったのではないでしょうか。単眼鏡ならぬ顕微鏡も必要な展示ですね。
 
 
 
Unknown (m25)
2008-09-07 08:45:09
「七宝」という言葉は聞いた事はあれど、
恥ずかしながら陶磁器の一種か装飾品ぐらいに思ってましたので、
この様な繊細な工芸品があったことに驚くばかりでした。

オークラの秘蔵の名品展のついで程度の軽い気持ちで行ったらとんでもなくて、
まさに「知られざる良品の魅力を紹介」の文字通りでした。
仰る通り、見せ方もうまかったですね。ボリュームも丁度いい感じで。

それにしても清水寺には何度か行ったことがありますが、
そばにこんな素晴らしいコレクションを持つ美術館があったとは知らず、
やはり知らないことばかりだと反省です。
 
 
 
Unknown (はろるど)
2008-09-08 20:38:29
m25さんこんばんは。
コメントありがとうございます。

私も本当に「七宝」という言葉くらいしか知らなかったので、まさかこれほど深い世界があるとはと感心しました。繊細かつ、時にエキゾチックなほど大胆ですよね。

>見せ方もうまかったですね。ボリュームも丁度いい感じ

泉屋は手狭で地味ですが、いつもこのような要所を押さえた展示で満足できます。
密かにあの界隈では一番好きな美術館です。

>こんな素晴らしいコレクションを持つ美術館があったとは知らず

同感です。もう三年坂には何年も行っておりませんが、
次回は是非訪ねたいと思います。
 
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