「印刷都市東京と近代日本」 印刷博物館

印刷博物館
「印刷都市東京と近代日本」
2012/10/20-2013/1/14



印刷博物館で開催中の「印刷都市東京と近代日本」へ行ってきました。

幕末維新期から現代に至るまで、国内最大の印刷出版都市である江戸、そして東京。その変遷はまさに近代日本の発展の歴史だとしても差し支えないかもしれません。

そうした江戸、東京の出版の様相を、とりわけ1860~1890年後に着目して紹介します。

構成は以下の通りでした。

プロローグ 東京は印刷都市
第1章 江戸で熟した印刷
第2章 印刷がつくった近代日本
第3章 東京という地場と印刷
第4章 近代日本の出版と印刷都市、東京の躍進


展示は江戸後期、早くも花開いていた出版物から始まります。


杉田玄白、前野良沢、他「解体新書」1774年

まずは1774年の「解体新書」。杉田玄白や前野良沢らが蘭訳本を三年半に渡って訳したこの力作、実は杉田は当初の出来に満足せず、しばらくしてから重訂本が出たことをご存知でしょうか。


大槻玄白「重訂解体新書」1826年

また当時、重要であった蘭学の知識を解説した「紅毛雑話」も興味深い作品。挿絵を担当したの浮世絵師の北尾政美です。


司馬江漢「和蘭天説(太陽真形)」1796年

それに「和蘭天説」も挿絵に注目。こちらは司馬江漢による作品ですが、地動説に基づいた地球の姿や星座、また何故か岩石の転がっているような地面ある太陽などが描かれています。


「南総里見八犬伝」

そして読み物としては「東海道中膝栗毛」や安政地震を国芳が描写した「安政見聞録」なども見どころ。ちなみに安政地震関連では「地震=鯰」ということで、流行したなまず絵もいくつか展示。それに木版画では「南総里見八犬伝」の意匠に富んだ表紙にも要注目ではないでしょうか。

さらに江戸期の有力版元の蔦屋を北斎が表した狂歌本、また広重の「名所江戸百景」なども出ています。こうした工夫を凝らした木版画の数々、江戸の出版文化の多様性と厚みを知ることが出来ました。

さて維新後の日本へと進みましょう。


「太政官日誌」

明治政府は積極的に印刷を活用し、例えば官報ならぬ「太政官日誌」などを発行していきます。またこの時期は印刷も木版から活版へと変化。それにともない社会においても出版印刷がより盛んに行われるようになりました。

その頃の有名な作品としては福沢諭吉の「学問のすゝめ」も。当時の金属製の楷書彫刻活字により印刷されたという初版、稀覯本が展示されています。


「生糸ラベル(前橋生糸商会生糸)

それに経済面では、近代日本の産業を支えた製糸業から、輸出に用いられた生糸のラベルなどを紹介。そして輪転機が誕生し、出版文化を大いに牽引した新聞や雑誌なども多数出品されています。

また先に木版から活版への展開について触れましたが、明治期は様々な版の入り乱れた、言わば群雄割拠の時代でもありました。


「東洋之貴嬢」

芳年の「芳流閣両雄動」は木版ながらも明治の錦絵。それに明治中期に盛んになったという石版額絵の「東洋之貴嬢」もどこかエキゾチックな作品言えるのではないでしょうか。


月岡芳年「芳流閣両雄動」

それに芳年では「郵便報知新聞」や有名な「羅城門渡辺綱」なども展示。またいわゆる開化絵もいくつか出品されています。


「開化因循興廃鏡」

約130点の資料で辿る江戸、そして近代の東京の出版史。近代化の諸相、つまりは文化だけでなく、政治、経済にまで目を向けた厚みのある展示です。見応えは十分でした。

2013年1月14日まで開催されています。文化の日(11/3)は入場無料です!

「印刷都市東京と近代日本」 印刷博物館
会期:2012年10月20日(土)~2013年1月14日(月・祝)
休館:毎週月曜日。但し12月24日(月・祝)、1月14日(月・祝)は開館。12月25日(火)は休館。年末年始(12/29~1/3)。
時間:10:00~18:00 *入場は17:30まで。
料金:一般500円、学生300円、中高生200円、小学生以下無料。
 *20名以上の団体は各50円引き。65歳以上無料。11月3日(土・祝)は無料。
住所:文京区水道1-3-3 トッパン小石川ビル
交通:東京メトロ有楽町線江戸川橋駅(4番出口)より8分。JR線飯田橋駅(東口)、東京メトロ有楽町線・東西線・南北線・都営大江戸線(B1出口)より15分。
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