「お伽草子展」 サントリー美術館

サントリー美術館
「お伽草子 この国は物語にあふれている」
9/19-11/4



サントリー美術館で開催中の「お伽草子 この国は物語にあふれている」へ行って来ました。

漠然とお伽草子と言われてピンと来なくても、一寸法師や浦島太郎と聞けば、内容を良く知っているという方も多いかもしれません。


「鼠草子絵巻」(巻二 部分)16世紀 サントリー美術館

古くは室町時代から江戸初期、主に民衆、市民層で大いに親しまれた読み物、お伽草子は、現在も約400種類ほど残されています。

本展ではお伽草子の優品を80点ほど紹介。一週間毎の頻繁な展示替えのため、一度に見られる数は限定されますが、それでも笑あり涙ありの多彩な物語を堪能することが出来ました。

さてお伽草子、その特徴を簡潔に挙げれば、まずは庶民向けの短編であるということと、テーマ、ストーリーの親しみ易さ、一方での新奇性です。


「福富草紙」(巻上 部分)15世紀 春浦院

その一例として印象深いのが「福富草紙」(室町時代)、ようは、放屁の芸で身を立てた男の物語です。

ともかくそのコミカルな描写、とりわけ屁を放つ男たちの楽しそうな姿には思わず笑ってしまうものの、例えば弟子入りしたある人物は芸のために下剤までを飲むという涙ぐましい努力も。

またテーマとして頻出するのが酒伝童子の物語です。同主題としては現存最古とも呼ばれる「大江山絵詞」(南北朝時代)、まさに鬼退治ならぬ血みどろの表現が目を引きます。


「酒伝童子絵巻」(下巻 部分)狩野元信 大永2年(1522年) サントリー美術館

またお伽草子は作者が分からない作品も少なくありませんが、このテーマでは狩野元信の描いた「酒伝童子絵巻」(1522年)もお目見え。こちらは顔料も総じて鮮やかで、鎧には金泥が塗られていることが見て取れます。

そしてお伽草子で面白いのは、強者と弱者の立場が入れ替わる物語が多いということです。

展示ではそれを時代性、つまりは室町から戦国期における動乱、文字通り下克上と関係付けて紹介しています。一見他愛ないようにも映るストーリーから垣間見える庶民の逞しさ。その点もお伽草子を鑑賞する上での重要なポイントかもしれません。

さてお伽草子、作中の時代設定こそ曖昧なものの、舞台については意外と具体的であることが知られています。中でも人気は京都の清水寺。何と400編のお伽草子のうち40編に登場します。

また「異類物語」と呼ばれる、異界の世界が数多く描かれるのも特徴。草木や鳥獣、それに器物に魂を吹き込んだ百鬼夜行や付喪神の物語も。


「付喪神絵巻」(上巻 部分)16世紀 崇福寺

その名も「付喪神絵巻」(江戸時代後期)では、すす払いで捨てられてしまった古道具たちが人間に一泡吹かせてやろうと、復讐の計画を立てている姿が描かれています。


「百鬼夜行絵巻」(部分)16世紀 真珠庵

結果的に失敗し、唯一復讐に反対した僧の数珠を頼って出家するというオチまでついていましたが、まさに新奇、この発想の斬新さにも大いに感心させられました。

最後に私の一押しの作品を。それがキャプションで少女漫画のハシリとも紹介された「しぐれ絵巻」(1513年)に他なりません。

ここに登場する二重まぶた男性の言わば奇妙な「キラキラ感」、確かに現代に通じるものがあります。この一枚には思わず笑ってしまいました。

会期もあと一週間足らずということもあってか、館内はそれなりに賑わっていました。小画面の絵巻の展示、最前列で見ないと楽しめません。これからの方は時間に余裕をもってのお出かけをおすすめします。

お馴染みの「青い日記帳」のTAKさんが、本展担当の学芸員、さんに展示についてのインタビューをして下さいました。

担当学芸員に聞く「お伽草子展」の見どころ。(弐代目・青い日記帳)

このまとめが大いに参考になります。是非ご覧下さい。

11月4日まで開催されています。

「お伽草子 この国は物語にあふれている」 サントリー美術館@sun_SMA
会期:9月19日(水)~11月4日(日)
休館:火曜日
時間:10:00~18:00(金・土は10:00~20:00) *10月7日は20時まで開館。
料金:一般1300円、大学・高校生1000円、中学生以下無料。
 *ホームページ限定割引券、及び携帯割(携帯/スマホサイトの割引券提示)あり。
場所:港区赤坂9-7-4 東京ミッドタウンガレリア3階
交通:都営地下鉄大江戸線六本木駅出口8より直結。東京メトロ日比谷線六本木駅より地下通路にて直結。東京メトロ千代田線乃木坂駅出口3より徒歩3分。
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