渋谷区立松濤美術館にて『装いの力―異性装の日本史』が開催されています

日本において男性が女装したり、女性が男装する異性装の文化をたどる展覧会が、渋谷区立松濤美術館にて開かれています。



その『装いの力―異性装の日本史』についてPenオンラインに寄稿しました。

女装はいつから始まったのか?『装いの力―異性装の日本史』で考える多様な性の未来|Pen Online

この展覧会では古事記にまでさかのぼる異性装の歴史について追いかけていて、中世王朝物語や能といった芸能、そして女武者や江戸の若衆、さらに歌舞伎などにおける異性装の諸相を、絵巻や装束、また浮世絵などを通して見ることができました。

キリスト教といった教義上の理由からタブーだった西洋とは異なり、日本では芸能を中心に異性装の文化が根付いていて、江戸時代では祭礼でも男装の女芸者などが現れるなど、比較的身近な場においても許容されていました。



そうした異性装の文化に大きな転機が訪れたのが明治時代のことで、異性装は西洋諸国に対して恥ずべき風俗として位置付けられるようになりました。

そして現在の軽犯罪法にあたる違式詿違条例(いしきかいいじょうれい)が制定されると、歌舞伎などを除き異性装は禁止の対象となり、実際に違反者が摘発されるなど大きな影響を与えました。

同条例は8年間にて廃止されるものの、異性装を忌避する感情が次第に一般化していきました。ただそれでも少女歌劇の男役など芸能による異性装の習慣が続きました。

*館内の撮影コーナー

今回の展示で興味深いのは現代における異性装についても触れていることで、漫画や映画だけでなく、ダムタイプや森村泰昌などの現代アートなども紹介されていました。ラストにはDIAMONDS ARE FOREVERのメンバーによるドラァグクイーンたちを描いたインスタレーションも楽しかったかもしれません。


一連の作品と資料は実に150点近くにも及んでいて、あまり知られているとは言い難い日本の異性装の諸相について丹念に掘り下げていました。またジェンダーの問題も踏まえ、未来の異性装のあり方についても考えさせられるような内容と言えるかもしれません。

最後に展示替えの情報です。前後期、及び前期、後期の各会期にて一部の作品が入れ替わります。詳しくは作品リストをご覧ください。

『装いの力―異性装の日本史』作品リスト(PDF)
前期:9月3日(土)~10月2日(日)
A期間:9月3日(土)~9月19日(月・祝)/B期間:9月21日(水)~10月2日(日)
後期:10月4日(火)~10月30日(日)
C期間:10月4日(火)~10月16日(日)/D期間:10月18日(火)~10月30日(日)

巡回はありません。10月30日まで開催されています。

『装いの力―異性装の日本史』 渋谷区立松濤美術館@shoto_museum
会期:2022年9月3日(土)~10月30日(日)
 *前期:9月3日(土)~10月2日(日) 、後期:10月4日(火)~10月30日(日)
休館:月曜日。但し9月19日、10月10日は除く。9月20日、10月11日。
時間:10:00~18:00 
 *毎週金曜日は20時まで開館
 *入館は閉館の30分前まで。
料金:一般1000(800)円、大学生800(640)円、高校生・60歳以上500(400)円、小中学生100(80)円。
 *( )内は渋谷区民の入館料。
 *渋谷区民は毎週金曜日が無料。
 *土・日曜、祝日は小中学生が無料。
場所:渋谷区松濤2-14-14
交通:京王井の頭線神泉駅から徒歩5分。JR線・東急東横線・東京メトロ銀座線、半蔵門線渋谷駅より徒歩15分。
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