世界遺産の町、岩手・平泉を半日でめぐる旅~毛越寺と中尊寺~

奥州藤原氏が3代にわたって拠点を構えた平泉には、中尊寺や毛越寺などの古刹が点在し、2011年には「仏国土(浄土)を表す建築・庭園及び考古学的遺跡群」として世界遺産にも登録されました。



仙台のホテルをチェックアウトすると、朝9時に仙台駅を出発する東日本急行の高速バスに乗って、平泉へ行くことにしました。同社の高速バスは、朝と昼過ぎから夕方にかけて計4便、仙台と平泉間を運行していて、所要時間は片道1時間50分ほどでした。



一ノ関を経由し、定刻通りの11時前に平泉へ着くと、少し早めの昼食を取ることにしました。ちょうど駅前にあるそば屋の芭蕉館へ入ると、ランチタイム前だったからか人はまばらで、名物の盛り出し式わんこそばを注文しました。



薬味とわんこそば2段のセットで、さらにサービスの1段の36杯をいただくと、さすがにお腹もいっぱいになりました。



まず平泉で目指したのは、平安時代の浄土世界を今に伝える毛越寺でした。同寺は奥州藤原氏2代基衡と3代秀衡の時代に多くの伽藍が造営され、往時は中尊寺さえしのぐほどの規模を誇ったものの、奥州藤原氏滅亡後は荒廃し、すべての建物が失われました。



しかしながら現在、大泉が池を中心とする浄土庭園と伽藍遺構が残されていて、国の特別史跡と特別名勝の指定を受けています。



その広大な池泉には島が2島、さらに南側に出島などが築かれ、大きい中島の正面には金堂の跡が残されていました。



また随所に山水の景観も築かれていて、平安時代の曲水の宴の舞台ともなり、同時代では唯一の遺構とされる遣水も見ることができました。ともかく想像以上に広大で、この地にていかに奥州藤原氏が力を持っていたのかを肌で感じることができました。



一通り、毛越寺を見学したのちは、平泉でも特に有名な中尊寺へと向いました。毛越寺から中尊寺へは道なりで約1.5キロほどあり、歩くこともできますが、たまたまやってきた巡回バス「るんるん」に乗車することにしました。

平泉駅や毛越寺、中尊寺や道の駅などを巡るバス「るんるん」は、冬季を除く土日のみに運行されていて、中尊寺へは平泉文化遺産センターを経由して僅か5分ほどでした。



バスで中尊寺へ着くと、土産物店が連なる駐車場にはたくさんの車が停まっていて、大勢の人々がやって来ていました。



850年に比叡山延暦寺の僧、円仁によって開かれた中尊寺は、12世紀に奥州藤原氏の初代清衡が前九年・後三年の合戦によって亡くなった人を供養するため、大規模な伽藍を造営しました。その後、14世紀に多くの堂塔が焼失するも、金色堂をはじめとする実に3000点余りもの国宝や重要文化財といった寺宝が残されました。



弁慶堂や物見台などのある月見坂を進み、地蔵堂をすぎると右手に見えてくるのが本堂でした。中尊寺は標高130メートルほどの丘陵に堂塔が点在するため、表参道でもある長い坂道をあがる必要があります。中尊寺は本寺と17ヶ院の子院からなる一山寺院で、中心となるのが明治42年に再建された本堂でした。



そして本堂から不動堂、大日堂などの並ぶ参道を進むと左手に見えてくるのが、いわゆる宝物館である讃衡蔵と創建当初のすがたを唯一今に伝える金色堂でした。



讃衡蔵には平安時代の諸仏、国宝の中尊寺経、そして奥州藤原氏の副葬品などが納められていて、その一部を仏像を中心に見学することができました。



阿弥陀堂である金色堂は、極楽浄土を表すべく内外に金箔が押されていて、一面に極めて精緻な蒔絵や螺鈿が施されていました。まさに眩いばかりの輝きに目を奪われましたが、奥州藤原氏の遺体や首級の安置された霊廟であることを鑑みると、どこか寂しい気持ちにもさせられました。



この金色堂を見学したのちは、かつて同堂を守っていた旧覆堂や能楽堂などを歩き、再び参道へと戻って丘を降りることにしました。

平泉レストハウスのお土産店へ立ち寄り、少し休憩していると、帰りのバスまでにまだ時間があることに気づきました。



そこで中尊寺通りから駅の方向へ歩くことにすると、しばらくして右手に水をたたえた広い池のある場所へとたどり着きました。それが三代秀衡が平等院を模して建立したという寺院の跡地、無量光院跡でした。



この無量光院跡から左手に折れ、北上川の方へと歩くと開けてくるのが、清衡、基衡の屋敷跡とも伝わる柳之御所遺跡で、その向かいに平泉世界遺産ガイダンスセンターが建っていました。



昨年11月に開館したばかり平泉世界遺産ガイダンスセンターとは、世界遺産平泉の文化をパネルや資料などを交えて紹介する施設で、平泉の歴史と奥州藤原氏の関係や足跡などを学ぶことができました。



こうした平泉に関する常設展示とは別に、企画展示室では遠野と平泉のつながりを紹介する「遠野と平泉 ―新発見!平泉時代の遺跡を探る―」も行われていました。(9月11日終了)いずれも観覧無料ながらもかなり充実していたのではないでしょうか。



ガイダンスセンターのすぐ横の道の駅に立ち寄ったあとは、中尊寺駅へ向かい、偶然見つけた駅前のカフェSATOで美味しいコーヒーとロールケーキをいただき、高速バスにて仙台へと戻りました。



平泉へ行ったのはおそらく中学生以来のことだったかもしれません。この日は毛越寺や中尊寺を中心としたルートだったため、少し離れた達谷窟や名勝の厳美渓や猊鼻渓までは行くことができませんでした。また次に旅する際は、足を伸ばして巡りたいと思いました。

毛越寺
拝観時間:8:30~17:00 *11月5日~3月4日は16:30まで
拝観料:大人700円、高校生400円、小・中学生200円。
住所:岩手県西磐井郡平泉町平泉字大沢58
交通:JR線平泉駅より徒歩10分。平泉町巡回バス『るんるん』(土日のみ運行。冬季運休)毛越寺バス停。

中尊寺
拝観時間:8:30~17:00 *11月4日~2月末日は16:30まで
拝観料:大人800円、高校生500円、中学生300円、小学生200円。
 *讃衡蔵・金色堂・経蔵・旧覆堂の拝観
住所:岩手県西磐井郡平泉町平泉衣関202
交通:JR線平泉駅より徒歩20分。平泉町巡回バス『るんるん』(土日のみ運行。冬季運休)中尊寺バス停。

平泉世界遺産ガイダンスセンター
開館時間:9:00~17:30(4月~10月)、9:00~16:30(11月~3月)
 *最終入館は閉館の30分前まで
休館日:毎月末日、年末年始、資料整理日
料金:無料
住所:岩手県西磐井郡平泉町平泉字伽羅楽108-1
交通:JR線平泉駅から徒歩12分。平泉町巡回バス『るんるん』(土日のみ運行。冬季運休)道の駅平泉バス停。
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