ダフィット・テニールス 「聖アントニウスの誘惑」 国立西洋美術館より

国立西洋美術館(台東区上野公園7-7)
常設展示 本館2階
「ダフィット・テニールス(子) -聖アントニウスの誘惑- 」

西洋美術館の常設展示室に飾られている、ダフィット・テニールス(1610-1690)の「聖アントニウスの誘惑」です。これまではあまり興味深く見たことがない作品だったのですが、先日常設展へ出向いた際、いつの間にかそのコミカルな画面に引かれている自分に気がつきました。どうやら、何度となく出会ううちに、気付かぬまま好きになる作品があるようです。

砂漠で隠修士として苦行生活を送る聖人アントニウスが、悪魔の様々な誘惑を受けていく。「修道士の父」としても有名なアントニウスのこの主題は、テニールス以外にも、ボシュやダリなどの多くの画家によって取り上げられています。また、音楽でも、ヒンデミットの「画家マチス」から第三楽章、「聖アントニウスの誘惑」が有名なところです。

この作品が魅力的なのは、お馴染みの「誘惑」の主題を、実にコミカルに、アニメーション的とも言える描写で可愛らしく見せてくれることです。画面左上にて浮いている二匹の悪魔。質感にも優れて、まるでそこから飛び出してきそうなほどの立体感をもっています。また、白いドレスに身を纏って、まさにアントニウスを「誘惑」しようとする美しい女性も必見です。黒い杯を持って、アントニウスに一歩一歩近づいていく。しかし彼女の足を見れば一目瞭然、実は悪魔であることが分かります。その他奇怪な動物に乗る悪魔や、一騒動を起こさんと企んでいるような、大勢のまるで小人のような悪魔まで、どれもが生き生きと描かれています。邪険さが全くありません。この、あまりにも愉し気な雰囲気は、まるでアントニウスがこれらを悪魔を飼っていて、実は一緒に仲良く生活しているとさえ思わせるほどです。

17世紀のフランドル派を代表するテニールス多様な主題を手広く描いたということで、他にもこの時代に特徴的な「画廊画」なども残しているそうです。
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コメント
 
 
 
おはようございます。 (Tak)
2006-01-14 07:53:19
私もこの作品とても気に入っています。

自然と笑みがこぼれます。



同じ主題で描かれた作品が

1階にもありますが、

そちらは「まとも」で

面白みがありませんよね・・・
 
 
 
Unknown (とら)
2006-01-14 09:06:25
こんな面白い画がありましたかネ。ボッシュの影響でしょうか。今度よく見てみます。

彼は、コレクターのレオポルド・ウィッルヘルム大公付きの宮廷画家だったので、大公が立っている画廊の画がありますね。日本に来たものを見たことがありますが、その細密さに驚きました。
 
 
 
私も観ました♪ (gem)
2006-01-14 12:15:14
この絵、わたしもドレスデン国立美術館展の時に見てきました。

おっしゃるとおり、修行中の危険を描いたと言うより、

どちらかというと無邪気な想像力を感じるような作品ですよね・

また見に行きたい絵です。
 
 
 
Unknown (はろるど)
2006-01-14 23:30:23
@Takさん



こんばんは。



>1階にもあります



ラトゥールの作品でしたかがありましたよね。

あれも結構好きなのですが、

確かにこの作品のようなユーモラスな雰囲気はありません。

それにしてもこの主題にて描かれた作品は非常に多いようですね。

ダリのものは見てみたいと思うのですが…。





@とらさん



こんばんは。



>コレクターのレオポルド・ウィッルヘルム大公付きの宮廷画家だったので、大公が立っている画廊の画



そのようですね。

この記事を書く時に少し検索してみた所、

画廊画がまずたくさん出てきました。



>日本に来たものを見たことがありますが、その細密さに驚きました。



日本にも来たことがあったのですか!

これは拝見したかったです…。

特異なジャンルですよね、画廊画というのは…。





@gemさん



こんばんは。



>修行中の危険を描いたと言うより、

どちらかというと無邪気な想像力を感じるような作品





そうなのです。

修行しているの?それとも楽しんでいるの?というような感じでして…。

もう誘惑に負けた後を描いているのかと思いました。

楽しい絵ですよね。

ちょっと暗い作品なので目立ちませんが、

また一つ西洋美術館にお気に入りの作品が出来ました!
 
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