東京シティ・フィル定期 「ムソルグスキー:展覧会の絵」他 パスカル・ヴェロ

東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団 第230回定期演奏会

ドビュッシー 牧神の午後への前奏曲
ラヴェル 亡き王女のためのパヴァーヌ
ラヴェル 組曲「マ・メール・ロワ」
リャードフ バーバ・ヤーガ 作品56
ムソルグスキー(ラヴェル編) 組曲「展覧会の絵」

管弦楽 東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団
指揮 パスカル・ヴェロ

2009/7/16 19:00 東京オペラシティコンサートホール



かつて新星日響の首席指揮者をつとめ、現在では仙台フィルの常任指揮者をつとめるパスカル・ヴェロが、東京シティ・フィルの指揮台に立ちます。いわゆるご当地もののプログラムです。第230回定期演奏会へ行ってきました。

フランス人によるフランスものというと、先入観のみで言えば往年のフルネのような軽妙でかつ清涼な響きを引き出すものと、一転してカンブルランのようなエネルギッシュな演奏をイメージしますが、ヴェロはその両者の特性をいささか中途半端に合わせ重ねたものと言えるかもしれません。冒頭、フルートのソロから幻想的な調べが紡ぎだされる「牧神の午後への前奏曲」こそ、各パートの音のバランスにも配慮されつつ、透明感の溢れる演奏で楽しませてくれましたが、休憩を挟んでの後半部、とりわけメインの「展覧会の絵」はやや力押しに過ぎる嫌いがあるように感じられてなりませんでした。よって私の印象では、前述の「牧神」、そしてホルンに難があったものの「亡き王女」、そして音楽の中の物語を快活に表現した「マ・メール・ロワ」へと至る前半部にこそ軍配をあげたいと思います。シティの瑞々しい弦のサポートはもちろん、フルートをはじめとした手堅い木管群、そしてホールの豊かな残響にも支えられて、茫洋たる大河の中にも繊細な美意識が随所に光る美しい調べに浸ることが出来ました。これでもう一歩、曲の構造を浮き彫りにもする各パート毎のクリアな響きがあればとは思いましたが、それは無い物ねだりと言うべきものなのでしょう。

Pictures at an Exhibition: Esa-Pekka Salonen (1 of 4)


何度聴いても、これがおおよそ展覧会会場でインスピレーションを得たとは思えない、半ば大仰な「展覧会の絵」は、各プロムナードを挟んで、例えばある冒険家が大自然でも彷徨う一種の紀行物語を見るかのような激しい演奏で幕を閉じました。とは言え、音から開けるイメージを連想するのは、例えば第二曲の「古城」においてもそう難しいものではないかもしれません。その切々と流れる曲想を聴くと、クールベの描いた「シヨン城」を思い出すのは私だけでしょうか。また「キエフの大門」ではぐっとテンポを落とし、それこそブルックナーのラストでも聞くような大伽藍にてホールを震わせていました。

演奏後は指揮者、もしくはオーケストラのメンバーに対して惜しみない拍手が送られていました。余談ながらも、シティの演奏会へ行くと、いつもカーテンコールの拍手に温かみを感じます。気持ち良く会場を後にすることが出来ました。
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