goo blog サービス終了のお知らせ 

「百花繚乱」 山種美術館

山種美術館
「百花繚乱 花言葉・花図鑑」
4/6-6/2



山種美術館で開催中の「百花繚乱 花言葉・花図鑑」のプレスプレビューに参加してきました。

今年の関東のお花見はすこぶる早く、4月初めに桜も散り始めてしまいましたが、ここ山種ではまだまだ見頃。全国津々浦々、桜に限らず日本人が古来より愛でた花々を日本画で楽しむことが出来ます。


右:橋本明治「朝陽桜」1970(昭和45年)紙本・彩色
山種美術館 *通期展示(4/6~6/2)


というわけで人気の百花繚乱展。広尾へ移転以来、2度目となる展示です。また今回はコレクションに限らず、他館、あるいは個人蔵の作品が前後期あわせて14点出ているのもポイント。珍しい作品も少なくありません。

構成は以下の通りです。

第1章 人と花
第2章 花のユートピア
第3章 四季折々の花


単に季節毎に花を並べるだけでなく、物語や故事、また例えば春と冬の花が同時に描かれた「四季花鳥図」、言い換えれば絵画だからこそ可能な花の理想風景にも注目している点も重要。さらにキャプションでは園芸の観点からも絵画を紹介しています。


荒木十畝「四季花鳥」1917(大正6)年 絹本・彩色
山種美術館 *通期展示(4/6~6/2)


定番の企画とは言えども、新たな切り口を取り込んでパワーアップした百花繚乱。また見応えがありました。

前置きが長くなりました。それでは美しき花の日本画の世界へ。まずあげたいのは花のユートピア。其一から「四季花鳥図」です。


鈴木其一「四季花鳥図」19世紀(江戸時代) 紙本金地・彩色
山種美術館 *前期展示(4/6~5/6)


ともかく目に飛んでくるのは鮮やかな色彩美。眩い金地に黄色い向日葵、そしてどこかうねるような草と、もはや表現主義的でさえある其一らしい作品です。

ところが一転、この「牡丹図」はどうでしょう。


鈴木其一「牡丹図」1851(嘉永4)年 絹本・彩色
*前期展示(4/6~5/6)


実はこの作品も其一ですが、先の濃厚な色遣いは影を潜め、実に繊細。そして何よりも中国絵画を踏まえての強い写実性が全面に表れています。

私自身、其一は抱一に学んだ上で光琳を志向し、最後には近代日本画への橋渡しをした画家だと思っていますが、この「牡丹図」にも、其一の多面性が反映されてはいないでしょうか。

同館顧問の山下裕二先生曰く「そろそろ単独の回顧展をやりましょう。」と仰るのにも頷けます。改めて知る其一の才能。また感心させられました。

さて琳派であえて触れておきたいのが、酒井道一。主に明治時代に活躍した画人。抱一の隠宅であった雨華庵の当主を継ぎ、抱一顕彰にも務めた弟子の一人です。

ともすれば抱一の影に隠れてしまう道一ですが、この「桜に雉・楓に鹿図」は実に力作。桜に楓を対にして華やかな画面を作り出しています。


酒井道一「桜に雉・楓に鹿図」19世紀(江戸-明治時代) 絹本金地・彩色
*前期展示(4/6~5/6)


また二頭の鹿も見逃せないポイント。鹿は古来からの伝統的な画題ですが、ここでは、雄と雌の番いが描かれていることから、おそらくは婚礼の際の調度品として制作されたのではないかということ。確かに状態も良好。草花も花びら一枚一枚から細やかに表現。絵具も上質なものが用いられています。ちなみに裏には銀地で波の文様が描かれているとか。観たいものです。

さらに琳派から離れますが、屏風として見逃せないのが作者不詳の「竹垣紅白梅椿図」。連なる竹垣に紅白梅を絡めた作品です。


作者不詳「竹垣紅白梅椿図」17世紀(江戸時代) 紙本金地・彩色
*前期展示(4/6~5/6)


ここで面白いのが右と左で視点が異なること。右隻は竹垣を正面から見据えていますが、左隻はやや上から覗き込むように捉え、中央の余白に対して弧を描いています。

また細かいところに目を向けると、穴があき、切れてしまった葉っぱも。若冲画を彷彿させます。それにしてもこのリズミカルな竹垣。力強さも持ち得ています。作者の同定など関係ありません。ただただ魅力的な作品でした。


小茂田青樹「水仙」1919(大正8)年頃 絹本・彩色
山種美術館 *通期展示(4/6~6/2)


少し珍しい作品を見ていきましょう。小茂田青樹の「水仙」。何やらぬめぬめしたようなただならぬ妖気。大正デカダンス期に流行ったデロリが水仙にまで乗り移った一枚です。


速水御舟「名樹散椿」【重要文化財】1929(昭和4)年 紙本金地・彩色
山種美術館 *通期展示(4/6~6/2)


最後は名品中の名品。速水御舟の「名樹散椿」も。地面に落ちる花びらの姿こそ儚いものの、目を凝らすと枝には新たな蕾がたくさん。未来への生命を予感させる作品です。


速水御舟「あけぼの・春の宵」のうち「春の宵」1934(昭和9)年 紙本・彩色
山種美術館 *通期展示(4/6~6/2)


また速水御舟といえば「春の宵」です。静寂に包まれた闇夜の中で健気に立つ桜。そして涙のように花びらを散らす様子。またそれを優しく見守る三日月。私の写真では全く伝わりませんが、実物の美しさといったら比類がありません。


右:山口蓬春「梅雨晴」1966(昭和39)年 紙本・彩色
左:山口蓬春「唐壺芍薬」1964(昭和41)年 紙本・彩色
ともに山種美術館 *通期展示(4/6~6/2)


またこれから時期を迎える山口蓬春の「梅雨晴」はいつ見ても鮮やか。これほど美しい青と紫を帯びた日本画もそう滅多にありません。

なお会期中、展示替えがあります。 *出品リスト(PDF)

前期展示:4月6日(土)~5月6日(月・休)
後期展示:5月8日(水)~6月2日(日)


桜に牡丹に菖蒲と、ともかく花真っ盛り。 お花見を逃した方にももってこいの展覧会ではないでしょうか。追っかけるならGWまで。まずは前期からどうぞ。


カフェ椿「百花繚乱展」特製和菓子

6月2日まで開催されています。

「百花繚乱 花言葉・花図鑑」 山種美術館@yamatanemuseum
会期:4月6日(土)~6月2日(日) 前期:4/6~5/6 後期:5/8~6/2
休館:月曜日(但し4/29、30、5/6は開館、5/7は休館。)
時間:10:00~17:00(入館は16時半まで)
料金:一般1200(1000)円、大・高生900(800)円、中学生以下無料。
 *( )内は20名以上の団体料金。
 *半券・新学期割引あり。
住所:渋谷区広尾3-12-36
交通:JR恵比寿駅西口・東京メトロ日比谷線恵比寿駅2番出口より徒歩約10分。恵比寿駅前より都バス学06番「日赤医療センター前」行きに乗車、「広尾高校前」下車。

注)写真は報道内覧会時に主催者の許可を得て撮影したものです。
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )
« ザオ・ウーキ... 「椿会展 2013... »
 
コメント(10/1 コメント投稿終了予定)
 
コメントはありません。
コメントを投稿する
ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません
 
名前
タイトル
URL
コメント
コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

数字4桁を入力し、投稿ボタンを押してください。