都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「平常展 - 雨宿り図屏風(英一蝶)他」(2009年6月) 東京国立博物館
東京国立博物館(台東区上野公園13-9)
「本館平常展(7~8室) - 屏風と襖絵、暮らしと調度、書画の展開 - 」(2009年6月)
屏風と襖絵、書画の展開:6/2~7/12、暮らしと調度:5/19~8/2
日本美術関連としては過去最多の入場者を記録した阿修羅展(92万6172名)が先日閉幕しましたが、何も東博の魅力はこうした特別展だけにあるわけではありません。阿修羅終了後、静けさを取り戻した館内で見る平常展もまた良いのではないでしょうか。本館2階、江戸絵画コーナーの一角で印象に深かった作品をいくつか写真におさめてきました。
【屏風と襖絵】(第7室 6/2~7/12)
「雨宿り図屏風」英一蝶
突然の驟雨に見舞われた中を、人々が慌てて屋根の下に駆け込んで肩を寄せる姿が描かれています。心配そうに雨を眺める者から、何やら楽しそうに談笑する者、または退屈してしまったのか、門の中で遊ぶ子どもらが生き生きとした様子で表現されていました。
黒い犬の表情が何やら怪し気ですが、唐突に登場する赤い獅子もまた不気味です。何者でしょうか。
「歌舞伎図屏風」(重文)菱川師宣
芝居小屋「中村座」の舞台から観客席、それに楽屋から茶屋までが、人々の集う熱気までをも伝えるかのように描かれています。
忙し気な楽屋でのシーンが鳥瞰的に示されています。次々と繰り広げられる情景描写には思わず目移りしてしまいました。
花見の席でのばか騒ぎは今も昔も変わらないようです。
【暮らしと調度】(第8室 5/19~8/2)
「染付吹墨月兎図皿(伊万里)」
初期伊万里の名品では、可愛らしいウサギの描かれた一枚が目に留まりました。上部の月と下方のウサギ、そして銘までが、あたかも皿の中を回転するかのような収まりよい構図で描かれています。
【書画の展開】(第8室 6/2~7/12)
「山水図屏風」狩野探幽
余白を十分に活かし、広がりある空間を作り上げた長閑な山水図です。中央に湖を配し、右に切り立つ岩山、また正面に楼閣と、整理された風景にも探幽画らしい几帳面な部分を感じます。所々に散る金砂子が微かな光をまとっていました。
「花鳥図」英一蝶
上記屏風でも目立った英一蝶の風流な花鳥画です。写実すら思わせる花や枝にちょこんと鳥が乗っています。板橋の一蝶展が待ち遠しくなってきました。
「宇治蛍狩図」酒井抱一
実は下調べもせずに出向いたので、まさかの抱一の登場に胸が高まりました。目に眩しいほどに鮮やかな彩色は、蛍狩りをする男女を華やかに演出します。
抱一というよりも光琳の様式を連想させる作品かもしれません。
「竹図」池大雅
何気にも今回一番惹かれた作品はこれです。颯爽たる墨の線描が、竹の漲る生気を見事に表します。
なお昨日は前述の阿修羅展閉幕と合わせ、東洋館が長期改修工事に入る前の最後の公開日でもありました。なお工事は数年の長期にわたるため、その間の館蔵品は表慶館で紹介されます。東洋館は外見以前に、内部空間にも良い印象がなかったので、借景に優れた表慶館での展示に期待したいと思いました。
「東洋館休館」(弐代目・青い日記帳):こちらの記事が参考になります。
上記の作品は全て次の特別展、ともに7月14日から始まる「伊勢神宮と神々の美術」と「染付展」の始まる前に展示が終わります。また阿修羅の半券をお持ちの方は、入口で提示すると平常展の入場料が半額の300円(6月28日まで)になります。そちらも合わせてご活用下さい。
注)平常展は指定されている作品を除き、全て写真の撮影が可能です。
「本館平常展(7~8室) - 屏風と襖絵、暮らしと調度、書画の展開 - 」(2009年6月)
屏風と襖絵、書画の展開:6/2~7/12、暮らしと調度:5/19~8/2
日本美術関連としては過去最多の入場者を記録した阿修羅展(92万6172名)が先日閉幕しましたが、何も東博の魅力はこうした特別展だけにあるわけではありません。阿修羅終了後、静けさを取り戻した館内で見る平常展もまた良いのではないでしょうか。本館2階、江戸絵画コーナーの一角で印象に深かった作品をいくつか写真におさめてきました。
【屏風と襖絵】(第7室 6/2~7/12)
「雨宿り図屏風」英一蝶
突然の驟雨に見舞われた中を、人々が慌てて屋根の下に駆け込んで肩を寄せる姿が描かれています。心配そうに雨を眺める者から、何やら楽しそうに談笑する者、または退屈してしまったのか、門の中で遊ぶ子どもらが生き生きとした様子で表現されていました。
黒い犬の表情が何やら怪し気ですが、唐突に登場する赤い獅子もまた不気味です。何者でしょうか。
「歌舞伎図屏風」(重文)菱川師宣
芝居小屋「中村座」の舞台から観客席、それに楽屋から茶屋までが、人々の集う熱気までをも伝えるかのように描かれています。
忙し気な楽屋でのシーンが鳥瞰的に示されています。次々と繰り広げられる情景描写には思わず目移りしてしまいました。
花見の席でのばか騒ぎは今も昔も変わらないようです。
【暮らしと調度】(第8室 5/19~8/2)
「染付吹墨月兎図皿(伊万里)」
初期伊万里の名品では、可愛らしいウサギの描かれた一枚が目に留まりました。上部の月と下方のウサギ、そして銘までが、あたかも皿の中を回転するかのような収まりよい構図で描かれています。
【書画の展開】(第8室 6/2~7/12)
「山水図屏風」狩野探幽
余白を十分に活かし、広がりある空間を作り上げた長閑な山水図です。中央に湖を配し、右に切り立つ岩山、また正面に楼閣と、整理された風景にも探幽画らしい几帳面な部分を感じます。所々に散る金砂子が微かな光をまとっていました。
「花鳥図」英一蝶
上記屏風でも目立った英一蝶の風流な花鳥画です。写実すら思わせる花や枝にちょこんと鳥が乗っています。板橋の一蝶展が待ち遠しくなってきました。
「宇治蛍狩図」酒井抱一
実は下調べもせずに出向いたので、まさかの抱一の登場に胸が高まりました。目に眩しいほどに鮮やかな彩色は、蛍狩りをする男女を華やかに演出します。
抱一というよりも光琳の様式を連想させる作品かもしれません。
「竹図」池大雅
何気にも今回一番惹かれた作品はこれです。颯爽たる墨の線描が、竹の漲る生気を見事に表します。
なお昨日は前述の阿修羅展閉幕と合わせ、東洋館が長期改修工事に入る前の最後の公開日でもありました。なお工事は数年の長期にわたるため、その間の館蔵品は表慶館で紹介されます。東洋館は外見以前に、内部空間にも良い印象がなかったので、借景に優れた表慶館での展示に期待したいと思いました。
「東洋館休館」(弐代目・青い日記帳):こちらの記事が参考になります。
上記の作品は全て次の特別展、ともに7月14日から始まる「伊勢神宮と神々の美術」と「染付展」の始まる前に展示が終わります。また阿修羅の半券をお持ちの方は、入口で提示すると平常展の入場料が半額の300円(6月28日まで)になります。そちらも合わせてご活用下さい。
注)平常展は指定されている作品を除き、全て写真の撮影が可能です。
コメント ( 6 ) | Trackback ( 0 )
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「宇治蛍狩図」には驚かされました!
いやはやなんとも。。。
阿修羅展の喧噪がうそのような本館でしたね。
>宇治蛍
本当にびっくりしました。
つい先日、日本橋で数点の抱一を見たばかりだったので、
また抱一熱がふつふつとわいてきたような気がします。
>阿修羅展
このところの混雑で、最終日は少し敬遠されたのかもしれませんね。
さて九州ではどうなるのでしょう。
ところで「宇治蛍狩図」、これは珍しい絵ですね。画集などでも見覚えのない作品ですが、東博所蔵なんでしょうか?
ちなみにただ今国立能楽堂でも、抱一下絵の蒔絵を見ることができますよ。
オフ会の件、お気遣い下さってありがとうございます。
また開催致しますので是非お越し下さい!
>画集などでも見覚えのない作品ですが、東博所蔵なんでしょうか?
私も全く初見でした。
キャプションには所蔵が書かれていなかったので不明ですが、
写真撮影が可能でもあったので東博の可能性が高いと思います。
ちょっとらしからぬ一枚ですよね。
>能楽堂
情報ありがとうございます!調べてみます!
阿修羅で修羅場の平成館から数分で、静かな古美術の世界が待っていましたね。
はろるどさんが取り上げた作品は、どれもこれも小生の好みでした。
「雨宿り」の犬は胡乱な目つきで、「何かご不満でも?」と声を掛けたくなりました。
「歌舞伎図屏風」、菱川師宣の大作と言うべきか?
右隻第1扇の人物達は、本当に師宣タイプですね。
楽屋で衣装を下げてある様子は、誰が袖屏風に見えて、不思議でした。
探幽は、本当に上手いです!出光の水墨画展でも舌を巻きましたが、この作品もです。
一蝶はこれからブームになるかも知れませんね。
板橋の展覧会が楽しみになってきました。
抱一には吃驚です。こんな作品があったとは!東博の蔵はどうなっとるんじゃ?!
浮世絵コーナーの最初の作品「縁先美人図」に目が惹きつけられました。濃絵から浮世絵への道中に立つ作品かな?と思っちゃいました。
東博の平常展は本当に楽しめます。
>小生の好み
それは嬉しいです!それにしても今回の江戸絵画も充実していました。常設あってこその東博ですね。
>抱一には吃驚です。こんな作品があったとは!東博の蔵はどうなっとるん
全く未見の作品なのでこれには驚きました。
最近の収蔵なのでしょうか。今度問い合わせてみたいと思います。
>探幽は、本当に上手いです!出光の水墨画展でも舌を巻きました
一見、とても地味ですが、構図など、細部まで良く練られた作品だと感心しました。そろそろ探幽の回顧展を見たいところです。