「ウィンター・ガーデン」 原美術館

原美術館品川区北品川4-7-25
「ウィンター・ガーデン:日本現代美術におけるマイクロポップ的想像力の展開」
5/23-7/20



原美術館で開催中の「ウィンター・ガーデン:日本現代美術におけるマイクロポップ的想像力の展開」へ行ってきました。

まず「マイクロポップ」とは何ぞやということで、公式HPより当該意味を示す箇所を抜き出してみます。(一部改変)

90年代後半から00年代前半にかけて現れた若い世代のアーティストたちの活動。断片を組み合わせて独自の世界感を示し、時代遅れのものや凡庸なものに新たな用途や意味を与えて表現する行為のこと。美術評論家松井みどり氏の造語。

なお出品作家は以下の通りです。

青木陵子/泉太郎/落合多武/工藤麻紀子/國方真秀未/佐伯洋江/杉戸洋/タカノ綾/田中功起/千葉正也/Chim↑Pom/半田真規/八木良太/山本桂輔

「既成の芸術や文化のイメージより離れ、安価な素材やシンプルな方法」(HPより引用。一部改変。)を採ることもあるのか、その印象を大まかに括ってしまえば、敢えて狙われた『チープさ』が押し出されている展示と言えるかもしれません。もちろん個別の作品、例えば佐伯のドローイングなどには緻密な手仕事の痕跡を見ないわけではありませんが、ある種どの作家よりも前に出た松井のキュレーションにもよるのか、そうした作品も何かナーバスで、それ自体に持つ力を削ぐような、小さくまとまった印象は否めませんでした。とは言え、それがこの展示の狙われた結果、ようは「ウィンター・ガーデン=温室」にあるような身体にべたべたとまとわりつく『ぬるさ』こそが持ち味であるとすると、今更文句を言っても仕方ないことなのかもしれません。

前置きが長くなり過ぎました。印象深かった作家を挙げていきます。


佐伯洋江「Untitled」
一階受付ホールに一点と二階に二点。ホールのドローイングは、まるで星の爆発を見るようなシャープな線描が際立っている。二階の二枚はあたかも屏風画風。中央の余白を軸に、右に龍がそして左には虎の対峙する「龍虎図」を連想した。細やかなグラデーション、またアクセントとなる紅色も美しい。



八木良太「VINYL」
氷のレコードプレイヤーで音を奏でる。音がプレイヤーの動きとともに、氷の溶ける時間とリンクして進んでいく。なお実演時間は下記時間に限定。それに合わせて行くのがお勧め。(火~土:13:00、15:00、水曜のみ19:00。日・祝:11:30、14:30、15:30。)



工藤麻紀子「よるにもとべる」他
階段途中に一点と二階展示室に二つの計三点のペインティング。不安げな少年少女の表情が印象的。深い森の奥のような緑や黒を背景に、どこか伺い、つながりを求めるような視線を虚ろに向けて立っていた。

泉太郎「キュロス洞」他
二階ギャラリー他、一階男性トイレ内など数点の映像作品。スポーツ番組の映像の変化に合わせ、即興的な絵を描き込んでいく。リズム感が良かった。なお男性トイレ内の作品は女性も観覧が可能。



千葉正也「泣き頭」
初見の方。制作途中のような頭像にホースを突き刺し、水流ならぬ涙がこぼれる様が描かれている。絵の下に台を置き、剥き出しの木枠にめくれたキャンバスを張った見せ方が面白かった。

「マイクロポップの時代:夏への扉/松井みどり/PARCO出版」

私自身、どちらかと言うとモノの物質感など、素材から作り込まれた作品を求める面があるので、佐伯などの好きな作家が出ていたにも関わらず、全体として少し物足りなく思えたのは事実でした。ただそれは私の頭が単に『古くさい』からなのでしょうか。本展示は今の日本のアートの一潮流として示すべく、これより胸を張って世界へと飛び出すそうです。(以下、海外施設へ巡回。)

2009年9月~11月 ドイツ「ケルン日本文化会館」
2009年12月~2010年2月 イタリア「ローマ日本文化会館」
2010年3月~ イギリス(会場未定)

 

ところで原美術館からの帰り、初めて無料シャトルバスの「ブルンバッ!」(日曜限定)に乗りました。なおこのバスは公式HPによると昨年夏からの一年間限定のみの運行です。期限は2009年6月末ということなので、そろそろ終了となってしまうのかもしれません。(注)

7月20日までの開催です。

注:「ブルンバッ!」の運行は6月28日をもって終了しました。
コメント ( 2 ) | Trackback ( 0 )
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コメント
 
 
 
Unknown (あおひー)
2009-06-10 06:51:54
こんにちは。
ネオテニーとはまた違いますがこちらもまた日本の現代美術を見る上では外せないなあと。
 
 
 
Unknown (はろるど)
2009-06-11 20:47:40
あおひーさんこんばんは。

>ネオテニーとはまた違いますがこちらもまた日本の現代美術を見る上では外せない

対照的な内容かもしれませんね。
海外でどのような評価を受けるのかも気になります。

ネオテニーも早く行かないと!
 
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