「ベルギー近代美術の殿堂 アントワープ王立美術館コレクション展」

東京オペラシティアートギャラリー新宿区西新宿3-20-2
「アントワープ王立美術館コレクション展 アンソールからマグリットへ - ベルギー近代美術の殿堂」
7/28-10/3



東京オペラシティアートギャラリーで開催中の「アンソールからマグリットへ - ベルギー近代美術の殿堂 - アントワープ王立美術館コレクション展」へ行ってきました。

本展の概要は以下の通りです。 (展覧会WEBサイトより転載。)

アントワープ王立美術館の所蔵する14世紀から20世紀にわたる幅広く膨大なコレクションの中で、質量ともに充実した19世紀末から20世紀中頃までのベルギー絵画を紹介するものです。ベルギー近代絵画の3大巨匠とも呼ばれるルネ・マグリット、ポール・デルヴォー、ジェームズ・アンソールをはじめレオン・スピリアールト、フェルナン・クノップフなどの象徴派、フランドル表現主義、シュルレアリスムなどの39作家、計70作品によって、ベルギー近代美術の流れをたどります。

なお出品全70点のうち63点は日本初公開とのことでした。

さて冒頭で紹介されているのは、ベルギーにおける外光、印象主義などの諸作品です。縦長の構図で森の小路を描いたクルテンスの「陽光の降り注ぐ小道」(1894年)からは、それこそ西美常設のコローの「ナポリの浜の思い出」(1870-72年)を彷彿させはしないでしょうか。実際、彼はバルビゾン派の影響を受けていたそうですが、木立に木漏れ日が差し込む様子は情感にも溢れていました。


ジャン・バティスト・デ・グレーフの「公園にいるストローブ嬢」(1884-86年)

またもう一点、是非とも触れておきたいのが、ジャン・バティスト・デ・グレーフの「公園にいるストローブ嬢」(1884-86年)です。草地を背景に立つ白いドレスの少女の面影は、どこかセガンティーニの作風を連想させます。いかんせんタイトルに『アンソールからマグリットへ』とあると、象徴派やシュルレアリスムばかりかと思ってしまいますが、このようなアカデミスム絵画などを楽しめるのもまた見所の一つと言えるかもしれません。


レオン・スピリアールト「自画像」(1907年)

さて今回の展覧会で絶対に忘れられないのが象徴主義の画家、レオン・スピリアールトです。彼は絵を独学で学び、このような自画像を多く描いたそうですが、青いスケッチブックを持った本人のメランコリックな表情をはじめ、ハンマースホイを思わせる暗鬱な室内空間の様相には強く心を揺さぶられました。


レオン・スピリアールト「海辺の女」(1909年)

また海を向いて立つ女を描いた「海辺の女」(1909年)もただならぬ気配を感じさせる一枚です。闇に沈み色に溶けゆく亡霊のような姿はもはやこの世の人間ではありません。今回の一推しは断然、これらのスピリアート(計4点)を挙げたいと思います。


ポール・デルヴォー「バラ色の蝶結び」(1937年)

全体の2割程度を占める表現主義・抽象絵画を経由し、最後に到達するのが第4章『シュルレアリスム』です。ここは全7点とやや物足りないかもしれませんが、月と木のイメージが反転するマグリットの「9月16日」(1956年)における神々しいまでの美しさはフィナーレを飾るのに相応しいものでした。もちろん大好きなデルヴォーの「バラ色の蝶結び」(1937年)の幻想世界にも酔いしれたことを付け加えておきます。

ベルギー美術好きにはたまらない企画ではありましたが、初台の箱との相性はあまり良くないかもしれません。建築展などでは見事な演出が光るオペラシティも、今回の展示に限って言えば照明に冴えがありません。作品がぼんやりと赤茶けて見えます。少し残念でした。

なお今のところ混雑とは無縁のようです。ゆったりとした環境で見ることが出来ました。

10月3日までの開催です。
コメント ( 8 ) | Trackback ( 0 )
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コメント
 
 
 
こんばんわ (らびっと)
2010-08-18 23:04:42
「陽光の降り注ぐ小道」は「ナポリの浜の思い出」にそういえば似てますね!先日カポディモンテ展の際に西美でマイカメラに収めてきた所なんです。構図といい、大きさといい、両者とも木の高さが一層引き立つ描き方ですよね。
華やかな絵にばかり目が行く私にとって、スピリアールトなどはこうして他の方のブログでピックアップされていると、見方が変わって新鮮に感じます。
世田美でもモランディはあまり印象に残りませんでしたが、はろるどさんの記事を読んで妙に気になって来ました。。それこそハンマースホイのような静けさがありますね。
「バラ色の蝶結び」は、リボンはデルヴォーが女性を客人、つまり外側から眺めるだけの存在という事を現しているって本に書いてありました。やっぱりデルヴォーの女性の見方は特殊だったんですね。
お気に入りの絵がかぶっていて嬉しいです♪
 
 
 
Unknown (とら)
2010-08-19 00:06:48
全体としては、2006年に西美で開かれた「ベルギー王立美術館展」とは比較にならない規模のものでしたが、今回はスピリアールトに感動しました。
 
 
 
Unknown (一村雨)
2010-08-19 07:34:31
スピリアールトの自画像を見て、こんな偏屈そうな画家だったのかとはじめて知りました。
はろるどさんは、デルヴォー好きでしたか・・・
なるほどぉ~
 
 
 
Unknown (すぴか)
2010-08-21 18:07:05
こんにちは。

スピリアールトの4枚、もう一つピンとこなくて、
私のベルギー美術に関しては、デルヴォー、マグリット、
アンソールくらいしか名前も知らずに観てました。
これからは、ベルギーの美術展、少し意識して観たいと思っています。

涼しくて、ゆったりして、足場もいいし、楽しめました。
 
 
 
Unknown (はろるど)
2010-08-24 00:14:08
@らびっとさん

こんばんは。クルテンスは明らかにコローの影響を受けていますよね。この作品を見た時にすぐあの西美のものを思い出しました。本当にそっくりです。

スピリアールトは久々にツボにはまった画家でした。4点と言わずにもっと見たかったくらいです。

>デルヴォーの女性の見方は特殊

これは色々指摘されるところですよね。
どこか病的な面もあるデルヴォーのそうした表現はとても面白いなと思いました。


@とらさん

こんばんは。

>西美

確かにあの展示と比べると厳しいかもしれませんね…。
とらさんもスピリアールトがお好きだとは!嬉しいです!


@一村雨さん

>はろるどさんは、デルヴォー好きでしたか・・・なるほどぉ~

さすが一村雨さんの目はごまかせません。ばれてしまいましたね…。続きは酒の席で…。


@すぴかさん

こんばんは。

>意識して観たい

同感です。
マグリットは昔は苦手な画家だったのですが、最近は比較的素直に楽しめるようになりました。またアンソールは庭園美でもいい展示がありましたよね。記憶に残っています。

次はデルヴォーの単独回顧展を見たいです!
 
 
 
こんばんは。 (chariot)
2010-08-29 00:01:01
スピリアールトはアンソールのいわゆる追っかけをしていたそうですが、確かに初期のアンソールと雰囲気がよく似ていますね。
今回はスピリアールトをまとめて観ることが出来て、どんな絵を描く人か分かりました。
 
 
 
照明 (キリル)
2010-08-29 00:44:51
こんばんは。

>照明に冴えがありません。作品がぼんやりと赤茶けて

広い展示空間でのんびりみられたので、とても幸せに思っていたのですが、ご指摘にはっとさせられました。思い返してみると、たしかに「ぼんやりと赤茶けて」いた気がしてきました。
スピリアールトには意外に現実的な印象を受けたところが、個人的にはおもしろかったです。
 
 
 
Unknown (はろるど)
2010-08-30 21:39:32
@chariotさん

こんばんは。

>追っかけ

二人の間にそのような関係がありましたか。
それにしても今回の4点はとても印象的でした。
もっと見たいくらいですね。


@キリルさん

こんばんは。

>広い空間

初台はスペースが広いのでゆったりと気持ちで楽しめますよね。
照明についてはあくまでも素人意見ですので…。
ただ何となくぼんやりしていたように見えました…。

>現実的

なるほど確かにそうですね。もう一度スピリアールト目当てで行こうかと思っています!
 
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