都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
コルボ 「フォーレ:レクイエム」 LFJ2007
ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン 熱狂の日音楽祭2007
公演番号448
フォーレ レクイエム
ソプラノ アナ・キンタンシュ
バリトン ピーター・ハーヴィー
合唱 ローザンヌ声楽アンサンブル
演奏 シンフォニア・ヴァルソヴィア
指揮 ミシェル・コルボ
2007/5/5 22:15 東京国際フォーラムホールC(カフカ)

全くの澱みのない、清純極まりない響きがホールを包み込みました。オーケストラ、ソリスト、合唱、そして指揮の全てが一体となって、音楽を越えた何かを探し求めます。フォーレの「レクイエム」です。
コルボの指揮には一点の迷いもありません。泰然とした様子で、ほとんど緩急を付けることなく、静謐なレクイエムの調べをホールいっぱいに瑞々しく響かせています。昨年の「モツレク」では、驚くほど激しい音楽を聴かせたコルボでしたが、今回は曲の趣にも合わせたのか、その表現のベクトルは完全に正反対な方向を示していました。まさしく身動きすらとれないほど、息をのむような美しいハーモニーが次々と展開されていきます。失礼ながら、LFJでこれほど高いレベルの公演が聴けるとは思いませんでした。
透明感溢れるアナ・キンタンシュの美声と、内省的で語りかけるようなハーヴィーの歌唱もまた優れています。そして、お馴染みのローザンヌ声楽アンサンブルの合唱も絶品です。持ち前の軽やかで力みのない歌声が、この曲に独特な浮遊感を見事に表現していました。彼らの合唱の力が、この無機質な国際フォーラムを、さながら教会のような宗教的な場へと変えていたのではないでしょうか。音楽が一種の儀式となり、イエスへの帰依のない私でも、一種の宗教的カタルシスを味わうような感覚さえ受けます。演奏の内容や、その学究的な部分に一切の注意を払わなくても良い、言い換えれば、ただひたすらに響きへ浸ることだけで満足出来る内容です。
「モツレク」ではやや粗さも感じたシンフォニア・ヴァルソヴィアも、今年は一体何が起きたのかとさえ思うほど合奏力を高めていました。天使の舞うようなオルガンの旋律が、オーケストラの清らかな響きと溶け合っています。まさに渾然一体です。

オーケストラや合唱団が退場した後も拍手は鳴り止みません。率直に申し上げると、CDでのコルボにはそう感銘したことがなかったのですが、この実演だけは全く別です。音楽を聴いて久々に体が震えました。音楽祭のハイライトにも相応しい「名演」だったと思います。
公演番号448
フォーレ レクイエム
ソプラノ アナ・キンタンシュ
バリトン ピーター・ハーヴィー
合唱 ローザンヌ声楽アンサンブル
演奏 シンフォニア・ヴァルソヴィア
指揮 ミシェル・コルボ
2007/5/5 22:15 東京国際フォーラムホールC(カフカ)

全くの澱みのない、清純極まりない響きがホールを包み込みました。オーケストラ、ソリスト、合唱、そして指揮の全てが一体となって、音楽を越えた何かを探し求めます。フォーレの「レクイエム」です。
コルボの指揮には一点の迷いもありません。泰然とした様子で、ほとんど緩急を付けることなく、静謐なレクイエムの調べをホールいっぱいに瑞々しく響かせています。昨年の「モツレク」では、驚くほど激しい音楽を聴かせたコルボでしたが、今回は曲の趣にも合わせたのか、その表現のベクトルは完全に正反対な方向を示していました。まさしく身動きすらとれないほど、息をのむような美しいハーモニーが次々と展開されていきます。失礼ながら、LFJでこれほど高いレベルの公演が聴けるとは思いませんでした。
透明感溢れるアナ・キンタンシュの美声と、内省的で語りかけるようなハーヴィーの歌唱もまた優れています。そして、お馴染みのローザンヌ声楽アンサンブルの合唱も絶品です。持ち前の軽やかで力みのない歌声が、この曲に独特な浮遊感を見事に表現していました。彼らの合唱の力が、この無機質な国際フォーラムを、さながら教会のような宗教的な場へと変えていたのではないでしょうか。音楽が一種の儀式となり、イエスへの帰依のない私でも、一種の宗教的カタルシスを味わうような感覚さえ受けます。演奏の内容や、その学究的な部分に一切の注意を払わなくても良い、言い換えれば、ただひたすらに響きへ浸ることだけで満足出来る内容です。
「モツレク」ではやや粗さも感じたシンフォニア・ヴァルソヴィアも、今年は一体何が起きたのかとさえ思うほど合奏力を高めていました。天使の舞うようなオルガンの旋律が、オーケストラの清らかな響きと溶け合っています。まさに渾然一体です。

オーケストラや合唱団が退場した後も拍手は鳴り止みません。率直に申し上げると、CDでのコルボにはそう感銘したことがなかったのですが、この実演だけは全く別です。音楽を聴いて久々に体が震えました。音楽祭のハイライトにも相応しい「名演」だったと思います。
コメント ( 9 ) | Trackback ( 0 )
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CDジャケットがワッツの『希望』だというのにもときめきました。
一本の弦だけ残しぼろぼろと切れてしまった竪琴にすがるような女、目隠しで隠されている両目・・・
『レクイエム』にふさわしい選択だと思いました。
5月3日の演奏でしたが、私もコルボ指揮のフォーレ「レクイエム」を聴いてきました。
本当に素晴らしかったです。
音楽を聴いてこれほど感動したのはたぶん初めてです。
今年のラ・フォル・ジュルネ、はろるどさんが以前今回はヤナーチェクの曲も演奏されると書いていたのを読んで、あわわててチェックして行ってきました。
6公演選んで行きましたがどれもとてもよかったです。
ぜひ聞きたいです!
昨夜は藤井一興先生のリサイタルでした。
フォーレもやりました。
初めて、メシアンすごいと思いました
こんばんは。
>フォーレは好きな作曲家
お好きでしたか。
どちらかと言うと私は苦手な作曲家だったのですが、
この実演で印象が変わったかもしれません。
素晴らしい演奏を前にすると、
もう言葉を紡ぐのも馬鹿らしくなってしまいます…。
>CDジャケットがワッツの『希望』
センス良いですよね。
クラシックCDのジャケットは概して「×」なので、
この選択は素晴らしいなと思いました。
@みどりさん
こんばんは。TBとコメントをありがとうございます。
>本当に素晴らしかったです。
音楽を聴いてこれほど感動したのはたぶん初めてです。
じわじわとその感動が体へ染み入るような演奏でした。
始終、その静謐な響きに痺れっぱなしで…。
こういう体験があると、
やはりコンサート通いをして良かったなと思います。
@グリシーヌさん
こんばんは。
藤井さんのフォーレですか!
それについにメシアンまでご開眼!
おめでとうございます!
コルボの実演に接せられてうらやましいです、はろるどさんは。
>東京のライブを収録したCDも出てますよね、三千円と高い
確か何種類も出ていますよね。
そのCDが一番お高いかもしれませんが…。
今回の演奏はもうCD化していただきたいくらいです。
国際フォーラムの難のある音響を差引いても、
コルボの代表盤になる可能性は十分にあります。
至福のひとときでした。
特に5日のCホールがベストだったのじゃないかと思います^^。
Aホールははじめて入ったのですが、やはり大きすぎの感が。
・・・と言いつつ
しょっぱなから涙が溢れてとまらなかった私です。
肝心の感想が少しになってしまっていますが、
TBさせてくださいませ。
TBをありがとうございます。
>特に5日のCホールがベストだったのじゃないかと思います^^。
Aホールははじめて入ったのですが、やはり大きすぎの感が。
Aは前列の方ですとそれなりですが、
後ろはややキツいですよね。
私も一度だけ入ったことがありますが、
そのあまりにも大きさにめがくらみました。
>しょっぱなから涙が溢れてとまらなかった私
どの日も集中力を切らさない、
素晴らしい演奏だったようですね。
フォーレは苦手だったはずと思いつつも、
その演奏に終始感動しておりました。