都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「松戸アートラインプロジェクト2010」 松戸駅西口周辺
JR常磐線・新京成線松戸駅西口周辺(千葉県松戸市松戸1836-2 5階:実行委員会事務局)
「松戸アートラインプロジェクト2010」
11/20~12/19

松戸駅周辺の市街地を舞台に若手アーティストらが様々な展示を繰り広げます。松戸アートラインプロジェクト2010へ行って来ました。
実のところしばらく前までは松戸駅から自転車で行ける場所に住んでいた私にとって、地元でこのようなアートのイベントがあるだけでも感無量でしたが、実際の展示も充実したものが多くて予想以上に楽しめました。

松戸駅西口周辺。基本的に雑多なビル街です。
会場はかつて水戸街道の宿場町として栄え、現在でも松戸市の中心市街地を形成する、JR常磐線松戸駅の西口の一帯です。駅前の雑居ビルの一室から大学施設、また宿場町のなごりを残す古民家からデパートの屋上までといった多様なスペースにて、若いアーティストたちのインスタレーションを中心とする展示が行われていました。
出品アーティストなどについては、アートプロジェクト公式WEBサイトをご参照下さい。
アーティスト@松戸アートラインプロジェクト
malp_2010(公式ツイッターアカウント)
出品作家計31組、会場数も大小あわせて約15箇所と相当のスケールです。非常に興味深い作品が多くありましたが、全て紹介すると大変なので、いくつか印象に深かったものをご紹介したいと思います。
井口雄介「繰り返される日常」 ルシーナビル7F

エレベーターの行き先階ボタンを推した瞬間から作品がはじまっているのかもしれません。ともかく7階へ行ってみて下さい。この仕掛けは見事でした。
津田翔平「KYO-ZO 響像」 津田ビル3F

展示イメージ。
私としては一推しにしたい展示です。暗室の中に入ると赤色のレーザー光線による驚くべき空間が出現しました。音とレーザーの織りなすイリュージョンがSF的な宇宙を連想させます。なおこの展示は一度に2~3名(1グループ)しか入ることが出来ません。手すりにつかまりながらそれこそ宇宙遊泳でもする気持ちでレーザーの光を浴びました。
村上鉄兵「space in the leaf」 松戸伸和ビル4・5F

金属の森が広がります。鮮やかな色彩を帯びて広がる枝葉はとても軽やかでした。
太田遼「阻まれてまで」 岡田ビル2F

何もないがらんと雑居ビルの一室に不思議な景色が広がります。作品と空間そのもののせめぎ合いに緊張感を覚えました。

日大松戸歯学部。駅からは一番遠い会場です。
山本麻璃絵「街の中の存在感」 日本大学歯学部松戸校舎、松戸市立図書館本館、NTT前、商工会館別館前


大学の玄関口に何気なくそっと置かれた消化器やゴミ箱は何と木彫でした。なお作品はこの他、松戸市の図書館などにも置かれているそうです。

旧水戸街道沿いに建つ旧・原田米店。いくつかの展示が集中しています。
満尾洋之「穏」 旧・原田米店

古びた和室の襖や壁面にはあたかも宗達を連想させるような絵画が展開します。これは強烈です。
木村恒介「ゆれる景色の先に」 旧・原田米店母屋

母屋二階の窓を開放しての作品です。一見、外が普通に開けているように思えますが、両側の鏡によってその景色が歪んでいました。何気ない日常が変化していくような感覚を受けます。
小松宏誠「静寂の中で風は探す」 旧・原田米店母屋

母屋の一室で羽をつけたオブジェがゆらゆらと風に揺られています。その姿はまるで精霊のようでした。
池田剛介「無人島に降る雨」 旧・原田米店ガレージ

古びたガレージの中へお邪魔すると中には雨が降り注ぎます。雨に洗われる「地表」部分の水の動きを見ていると時間を忘れました。
山中彬充「ニュートラル」 坂川沿い

坂川沿いにそびえ立つ木製の階段、塔です。元々、土手に階段があるようですが、その延長として木製の塔のような建造物が出現していました。

対岸のデッキの作品ともよく調和しています。

松戸神社。実は毎年初詣に行っています。
枯山水サラウンディング「WATER≒WAITER」 松戸神社

松戸の氏神様に神秘的な音響空間が登場しました。側の道路の騒音でややかき消されるのは残念ですが、耳を傾けると水のせせらぎにも似た美しい調べが聞こえてきます。
近藤洋平「境界」 伊勢丹屋上

伊勢丹の屋上に出現したまさしく「境界」です。一見、何もないように見えますが、近づくとあるものが登場します。意表を突かれる感じで楽しめました。
以上です。ともかく色々なジャンルが混在しているので一言では表せませんが、やはりあえて制約のあるスペースを逆手にとったようなものや、古民家や川沿いなどの場所性を活かした展示が面白いと思いました。

旧水戸街道沿いの寺。実は松戸は寺の多い街でもあります。
先にも書いたように会場は松戸駅周辺の市街地です。展示場所は駅に隣接するビルから、徒歩10分程度かかる江戸川付近までとかなり広がりがあります。

大山エンリコイサム他のMADウォール。こちらも以前、拙ブログでご紹介しました。
私は駅北側に点在する雑居ビル内の展示を先に廻り、次に坂川を渡って日大松戸歯学部、そこから少し戻って旧街道沿いの原田米店から松戸神社、そして最後に伊勢丹へと歩きました。それで約2時間強です。

旧・原田米店敷地内。ちょっとした風情が感じられます。
なお階段で3~4階まであがらくてはいけない所や、靴を脱いで見る展示も多数あります。散歩をするような動きやすい格好がベストかもしれません。

アートラインの旗。目印は緑です。
会場には目印としてアートラインを示す緑の旗やポスターが掲げられています。
松戸アートラインプロジェクトマップ(PDF版)
またもちろん必携なのが地図の書かれたアートラインのチラシです。こちらは各展示場所の他、松戸駅にあるインフォメーションに置かれていました。実はこのインフォメーションが非常に分かりにくいのが問題ですが、JRの中央改札を出て一端左(東口方面)へ向かい、直ぐ右側にある自動きっぷ売場の奥の東西自由通路へ進むとあります。(松戸駅構内案内図)常に有人ではなくただ机の上にチラシが置いてある時もあるそうですが、そちらで戴いてスタートするのが良さそうです。

松戸駅付近を流れる坂川。昔よりはかなりきれいになりました。
なお同プロジェクトでは随時、ボランティアガイドによる展示ツアーが行われているそうです。集合場所が駅ではなく、やや離れたサポーターズカフェであることには要注意ですが、そちらに参加してみるのも手かもしれません。
「松戸アートラインプロジェクトアートツアー」
日時:12/4(土)、5(日)、11(土)、12(日)、18(土) 14:00~15:30
集合場所: MALPサポーターズカフェ(ほくとビル1F)/参加費: 無料/定員: 先着10名
参加希望者は、氏名、連絡先、人数、参加希望日を前日までにinfo@malp2010.comへメール、もしくは実行委員会へ電話、FAX。

江戸川河川敷。松戸市民にとっては親しみのある場所です。
また会期中、様々なイベントが企画されています。なお以下はその一例です。詳細はカレンダーをご覧ください。
「音楽パフォーマンス」
ジョン・ケージの「ヴァリエーションズ」(1961)、「ヴァリエーションズ3」(1962)の上演をします。
出演:足立智美(作曲家/パフォーマー)、北條知子(東京芸術大学 音楽環境創造科)他/日時:12/5(日) 14:00~/会場:松戸駅前西口 新角ビル3F
「山川冬樹パフォーマンス」
1973年、ロンドン生まれ。音楽、美術、舞台芸術の分野で活動。身体内部で起きている微細な活動や物理的現象をテクノロジーによって拡張、表出したパフォーマンスを得意とする。
出演: 山川冬樹/日時: 12/12(日)19:00~/会場:都市綜合開発第三ビル1F/無料/要事前予約→event@malp2010.com
「音粒子vol.3」
斎藤ちさとの映像作品の中で、ギター、ボイスなどを中心にした演奏を行う。
出演:バンドウジロウ/日時:12/18(土) 17:00~/会場:日大歯学部旧校舎
松戸駅近辺は既に宿場町の風情はなく、だからいってターミナルの賑わいにも乏しいという場所ではありますが、この企画を一回きりにせずに、今後も作家の活動をサポートするなどの息の長い取り組みが続けばと思いました。

松戸のメインストリート。歩いているとすっかり日が暮れてしまいました。
上野駅からは常磐線の快速で約20分ほどです。是非松戸へお越し下さい。
12月19日まで開催されています。 (展示時間は11:00~17:00。一部展示は異なる場合あり。)
「松戸アートラインプロジェクト2010」
11/20~12/19

松戸駅周辺の市街地を舞台に若手アーティストらが様々な展示を繰り広げます。松戸アートラインプロジェクト2010へ行って来ました。
実のところしばらく前までは松戸駅から自転車で行ける場所に住んでいた私にとって、地元でこのようなアートのイベントがあるだけでも感無量でしたが、実際の展示も充実したものが多くて予想以上に楽しめました。

松戸駅西口周辺。基本的に雑多なビル街です。
会場はかつて水戸街道の宿場町として栄え、現在でも松戸市の中心市街地を形成する、JR常磐線松戸駅の西口の一帯です。駅前の雑居ビルの一室から大学施設、また宿場町のなごりを残す古民家からデパートの屋上までといった多様なスペースにて、若いアーティストたちのインスタレーションを中心とする展示が行われていました。
出品アーティストなどについては、アートプロジェクト公式WEBサイトをご参照下さい。
アーティスト@松戸アートラインプロジェクト
malp_2010(公式ツイッターアカウント)
出品作家計31組、会場数も大小あわせて約15箇所と相当のスケールです。非常に興味深い作品が多くありましたが、全て紹介すると大変なので、いくつか印象に深かったものをご紹介したいと思います。
井口雄介「繰り返される日常」 ルシーナビル7F

エレベーターの行き先階ボタンを推した瞬間から作品がはじまっているのかもしれません。ともかく7階へ行ってみて下さい。この仕掛けは見事でした。
津田翔平「KYO-ZO 響像」 津田ビル3F

展示イメージ。
私としては一推しにしたい展示です。暗室の中に入ると赤色のレーザー光線による驚くべき空間が出現しました。音とレーザーの織りなすイリュージョンがSF的な宇宙を連想させます。なおこの展示は一度に2~3名(1グループ)しか入ることが出来ません。手すりにつかまりながらそれこそ宇宙遊泳でもする気持ちでレーザーの光を浴びました。
村上鉄兵「space in the leaf」 松戸伸和ビル4・5F

金属の森が広がります。鮮やかな色彩を帯びて広がる枝葉はとても軽やかでした。
太田遼「阻まれてまで」 岡田ビル2F

何もないがらんと雑居ビルの一室に不思議な景色が広がります。作品と空間そのもののせめぎ合いに緊張感を覚えました。

日大松戸歯学部。駅からは一番遠い会場です。
山本麻璃絵「街の中の存在感」 日本大学歯学部松戸校舎、松戸市立図書館本館、NTT前、商工会館別館前


大学の玄関口に何気なくそっと置かれた消化器やゴミ箱は何と木彫でした。なお作品はこの他、松戸市の図書館などにも置かれているそうです。

旧水戸街道沿いに建つ旧・原田米店。いくつかの展示が集中しています。
満尾洋之「穏」 旧・原田米店

古びた和室の襖や壁面にはあたかも宗達を連想させるような絵画が展開します。これは強烈です。
木村恒介「ゆれる景色の先に」 旧・原田米店母屋

母屋二階の窓を開放しての作品です。一見、外が普通に開けているように思えますが、両側の鏡によってその景色が歪んでいました。何気ない日常が変化していくような感覚を受けます。
小松宏誠「静寂の中で風は探す」 旧・原田米店母屋

母屋の一室で羽をつけたオブジェがゆらゆらと風に揺られています。その姿はまるで精霊のようでした。
池田剛介「無人島に降る雨」 旧・原田米店ガレージ

古びたガレージの中へお邪魔すると中には雨が降り注ぎます。雨に洗われる「地表」部分の水の動きを見ていると時間を忘れました。
山中彬充「ニュートラル」 坂川沿い

坂川沿いにそびえ立つ木製の階段、塔です。元々、土手に階段があるようですが、その延長として木製の塔のような建造物が出現していました。

対岸のデッキの作品ともよく調和しています。

松戸神社。実は毎年初詣に行っています。
枯山水サラウンディング「WATER≒WAITER」 松戸神社

松戸の氏神様に神秘的な音響空間が登場しました。側の道路の騒音でややかき消されるのは残念ですが、耳を傾けると水のせせらぎにも似た美しい調べが聞こえてきます。
近藤洋平「境界」 伊勢丹屋上

伊勢丹の屋上に出現したまさしく「境界」です。一見、何もないように見えますが、近づくとあるものが登場します。意表を突かれる感じで楽しめました。
以上です。ともかく色々なジャンルが混在しているので一言では表せませんが、やはりあえて制約のあるスペースを逆手にとったようなものや、古民家や川沿いなどの場所性を活かした展示が面白いと思いました。

旧水戸街道沿いの寺。実は松戸は寺の多い街でもあります。
先にも書いたように会場は松戸駅周辺の市街地です。展示場所は駅に隣接するビルから、徒歩10分程度かかる江戸川付近までとかなり広がりがあります。

大山エンリコイサム他のMADウォール。こちらも以前、拙ブログでご紹介しました。
私は駅北側に点在する雑居ビル内の展示を先に廻り、次に坂川を渡って日大松戸歯学部、そこから少し戻って旧街道沿いの原田米店から松戸神社、そして最後に伊勢丹へと歩きました。それで約2時間強です。

旧・原田米店敷地内。ちょっとした風情が感じられます。
なお階段で3~4階まであがらくてはいけない所や、靴を脱いで見る展示も多数あります。散歩をするような動きやすい格好がベストかもしれません。

アートラインの旗。目印は緑です。
会場には目印としてアートラインを示す緑の旗やポスターが掲げられています。
松戸アートラインプロジェクトマップ(PDF版)
またもちろん必携なのが地図の書かれたアートラインのチラシです。こちらは各展示場所の他、松戸駅にあるインフォメーションに置かれていました。実はこのインフォメーションが非常に分かりにくいのが問題ですが、JRの中央改札を出て一端左(東口方面)へ向かい、直ぐ右側にある自動きっぷ売場の奥の東西自由通路へ進むとあります。(松戸駅構内案内図)常に有人ではなくただ机の上にチラシが置いてある時もあるそうですが、そちらで戴いてスタートするのが良さそうです。

松戸駅付近を流れる坂川。昔よりはかなりきれいになりました。
なお同プロジェクトでは随時、ボランティアガイドによる展示ツアーが行われているそうです。集合場所が駅ではなく、やや離れたサポーターズカフェであることには要注意ですが、そちらに参加してみるのも手かもしれません。
「松戸アートラインプロジェクトアートツアー」
日時:12/4(土)、5(日)、11(土)、12(日)、18(土) 14:00~15:30
集合場所: MALPサポーターズカフェ(ほくとビル1F)/参加費: 無料/定員: 先着10名
参加希望者は、氏名、連絡先、人数、参加希望日を前日までにinfo@malp2010.comへメール、もしくは実行委員会へ電話、FAX。

江戸川河川敷。松戸市民にとっては親しみのある場所です。
また会期中、様々なイベントが企画されています。なお以下はその一例です。詳細はカレンダーをご覧ください。
「音楽パフォーマンス」
ジョン・ケージの「ヴァリエーションズ」(1961)、「ヴァリエーションズ3」(1962)の上演をします。
出演:足立智美(作曲家/パフォーマー)、北條知子(東京芸術大学 音楽環境創造科)他/日時:12/5(日) 14:00~/会場:松戸駅前西口 新角ビル3F
「山川冬樹パフォーマンス」
1973年、ロンドン生まれ。音楽、美術、舞台芸術の分野で活動。身体内部で起きている微細な活動や物理的現象をテクノロジーによって拡張、表出したパフォーマンスを得意とする。
出演: 山川冬樹/日時: 12/12(日)19:00~/会場:都市綜合開発第三ビル1F/無料/要事前予約→event@malp2010.com
「音粒子vol.3」
斎藤ちさとの映像作品の中で、ギター、ボイスなどを中心にした演奏を行う。
出演:バンドウジロウ/日時:12/18(土) 17:00~/会場:日大歯学部旧校舎
松戸駅近辺は既に宿場町の風情はなく、だからいってターミナルの賑わいにも乏しいという場所ではありますが、この企画を一回きりにせずに、今後も作家の活動をサポートするなどの息の長い取り組みが続けばと思いました。

松戸のメインストリート。歩いているとすっかり日が暮れてしまいました。
上野駅からは常磐線の快速で約20分ほどです。是非松戸へお越し下さい。
12月19日まで開催されています。 (展示時間は11:00~17:00。一部展示は異なる場合あり。)
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