「レオナルド・ダ・ヴィンチ美の理想」 Bunkamura ザ・ミュージアム

Bunkamura ザ・ミュージアム
「レオナルド・ダ・ヴィンチ美の理想」
3/31-6/10



Bunkamura ザ・ミュージアムで開催中の「レオナルド・ダ・ヴィンチ 美の理想」展のプレスプレビューに参加して来ました。

現存する作品こそ少ないものの、新発見云々など、何かと話題の多いレオナルド・ダ・ヴィンチですが、今回の展示では彼の追い求めたであろう「絵画上の美」についてスポットを当てています。


展示室入口

出品はレオナルドの真筆「ほつれ髪の女」(東京会場のみ)の他、レオナルド派、さらには後の時代の作品、また資料など全90点です。

展覧会の構成は以下の通りでした。

1. レオナルド・ダ・ヴィンチの時代の女性像
2. レオナルド・ダ・ヴィンチとレオナルド派
3. 「モナ・リザ」イメージの広がり
4. 「裸のモナ・リザ」、「レダと白鳥」
5. 神話化されるレオナルド・ダ・ヴィンチ


はじめにレオナルドと同時代の作品を概観した上で、レオナルドの真筆「ほつれ髪の女」を挟み、さらには「モナ・リザ」におけるイメージの変遷を辿っています。

また「モナ・リザ」や「レダと白鳥」の主題については、同種の作品を比較するなど、かなり突っ込んだ内容となっています。さらにレオナルド以降の、彼に因んだ作品を展示するのも大きな特徴と言えるかもしれません。


ボッカッチョ・ボッカッチーノ「ロマの少女」1504-05年頃 ウフィツィ美術館

冒頭、同時代の女性像で目立つのは、ボッカッチョ・ボッカッチーノの「ロマの少女」です。

当時としては擬古趣味的として批判も受けたそうですが、その前を見据える表情には何か訴えかけられるものを感じてなりません。

またこのセクションではラファエロの工房、及び周辺の作品が4点ほど展示されています。その辺も見どころとなりそうです。

続いてのレオナルド派では、レオナルドの若き日の習作とも言われる「衣紋の習作」、計2点が目を引きます。


レオナルド・ダ・ヴィンチ「衣紋の習作」1470-75年頃 バーバラ・ピエセッカ・ジョンソン・コレクション財団 他

レオナルド自身、「人体に着せた布は、そのなかに人体があるかのように表現しなくてはならない。」と述べたそうですが、確かにボリューム感のある衣服からは、そうした言葉を裏付ける表現力を見ることが出来るのではないでしょうか。

また突如目に入る大作、「岩窟の聖母」に思わず心を奪われた方も多いかもしれません。


レオナルド・ダ・ヴィンチと弟子(名誉監修カルロ・ペドレッティ氏説)「岩窟の聖母」1495-97年頃 個人蔵

言うまでもなくこの作品は、ルーヴル、及びロンドンのナショナル・ギャラリーにある同名作に良く似たものですが、一説ではルーヴルとナショナル・ギャラリー作の間に描かれたのではないかと指摘されているそうです。

もちろん議論はあるのかもしれませんが、ここは個人蔵という、滅多に出る機会のない「岩窟の聖母」を存分に楽しみました。

文化村ではハイライト、前回展でも3作のフェルメールが展示されていたメインフロアでは、レオナルドの真筆、「ほつれ髪の女」が可憐な姿を披露しています。


レオナルド・ダ・ヴィンチ「ほつれ髪の女」1506-08年頃 パルマ国立美術館

レオナルドに特有の中性的な優美さをたたえた作品ですが、巧みな筆の陰影がもたらす頭部の立体感は比類がありません。

レオナルドは「頭部を描く場合は、その頭髪が、若々しい顔の周りの風に合わせて動いているように描くことだ。その際、顔の周りを優美に飾る髪の癖も描かなくてはならない。」と述べました。

また細部の精密な描写にもよるのか、あくまでも慈悲に満ちた表情ながらも、近づくと大変なリアリティー、そして迫力を感じます。幸いにも近寄って見ることが可能です。しばらく作品の前から動けませんでした。

さて「ほつれ髪の少女」から振り返ると見えるのは「モナ・リザ」揃いぶみです。


「モナ・リザ」イメージの広がり、展示室風景

もちろんかのルーヴル作がやって来ているわけではありませんが、いわゆる「モナ・リザ」イメージの作品が、約10点近く展示されています。

ともかく多種多様な「モナ・リザ」がずらりと並ぶ様子だけでも圧巻ですが、うち最も再現性が高いのが、アンブロワーズ・デュボア帰属の「モナ・リザ」ではないでしょうか。


「アイルワースのモナ・リザ」16世紀(レオナルドによる1503年の未完成作説あり) 個人蔵

レオナルドが用いたスフマートの技法ではありませんが、微笑む表情など、かなりルーヴル作に近くなっています。また実際にもルーヴルとサイズが同等、重ね合わせても原画にほぼ一致するそうです。

その他には、一部にレオナルドの筆が入っているとされる「アイルワースのモナ・リザ」や、モデルの人間性が伝わってくるような「ヴァッラルディのモナ・リザ」も印象に残りました。


中央:カルロ・アントニオ・プロカッチーニとエルコレ・プロカッチーニ「フローラ」1625-30年頃 アカデミア・カッラーラ美術館 他

「裸のモナ・リザ」、及び「レダと白鳥」のセクションでは、私の好きなフォンテーヌブロ派の作品と出会うことが出来ました。


左:フォンテーヌブロー派「浴室のふたりの女性」16世紀 ウフィツィ美術館
右:レオナルド周辺の画家「レダと白鳥」 ボルゲーゼ美術館


ルーヴルの有名な「ヴィラール」とも似た構図をとっていますが、その馨しいまでの官能性には思わず見惚れてしまいます。

また章は前後しますが、こうした裸体像としては、冒頭に登場する「マグダラのマリア」や「聖カテリーナ」も見逃せません。

総じてテーマ性の高い展覧会です。一つ一つの作品と向き合いながら、相互の関連、また背景などを読みといていくのも面白いかもしれません。

既に福岡、静岡と巡回してきましたが、東京会場のみ出品の「ほつれ髪の少女」をはじめ、会場構成などもやや違った内容になっています。一度ご覧になった方もまた楽しめるのではないでしょうか。


ファッションブランド「SOMARTA」とのコラボTシャツ

それに一点一点に詳細な解説の付いた図録も読み応えがありました。

「レオナルド・ダ・ヴィンチ (西洋絵画の巨匠 8)/池上英洋/小学館」

6月10日までの開催です。

「レオナルド・ダ・ヴィンチ 美の理想」 Bunkamura ザ・ミュージアム
会期:3月31日(土)~6月10日(日)
休館:4/23(月)のみ休館。
時間:10:00~19:00。毎週金・土は21:00まで開館。
住所:渋谷区道玄坂2-24-1
交通:JR線渋谷駅ハチ公口より徒歩7分。東急東横線・東京メトロ銀座線・京王井の頭線渋谷駅より徒歩7分。東急田園都市線・東京メトロ半蔵門線・東京メトロ副都心線渋谷駅3a出口より徒歩5分。

注)写真は報道内覧会時に主催者の許可を得て撮影したものです。
コメント ( 2 ) | Trackback ( 0 )
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コメント
 
 
 
モナリザ (いわた)
2012-04-22 13:10:42
実物を数回見て、また最近は2月に見てきたのですが、今回のは、各々良さを分割または強調したよーな、イメージがしました。
岩窟の聖母、初見でしたが、やはり魅せられる絵ですね~
昨日行ってきましたが、満足しました。
 
 
 
Unknown (はろるど)
2012-04-22 19:27:04
@いわたさん

こんばんは。

>実物を数回見て、また最近は2月に見てきた

素晴らしいですね!
実は私はまだ現地で一度も見たことがありません。
レオナルド作と今回の出品作のモナリザを見比べるのは面白そうです。

>岩窟の聖母、初見でしたが、やはり魅せられる絵

同感です。謎めいたところもまた良いですよね。
 
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