都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
『恐竜図鑑 失われた世界の想像/創造』 上野の森美術館
上野の森美術館
『恐竜図鑑 失われた世界の想像/創造』
2023/5/31~7/22

19世紀にイギリスで恐竜の化石が発見されて以来、人々は化石などの痕跡から想像を膨らませると、恐竜のすがたを描き続け、今に至るまで多くのパレオアート(古生物を復元する芸術)が生み出されてきました。
そうしたパレオアートの世界を紹介するのが『恐竜図鑑 失われた世界の想像/創造』で、会場には19世紀の復元図、20世紀の絵画にサブカルチャー、さらに近年の研究に基づくパレオアートなど150点の作品が展示されていました。

ロバート・ファレン『ジュラ紀の海の生き物―ドゥリア・アンティクィオル(太古のドーセット)』 1850年頃 ケンブリッジ大学セジウィック地球科学博物館
まずはじめに展示されるのは19世紀の黎明期におけるパレオアートで、古生物の生態を復元した史上初の絵画のひとつとされる『ドゥリア・アンティクィオル(太古のドーセット)』などを見ることができました。

ベンジャミン・ウォーターハウス・ホーキンズ『水晶宮のイグアノドン』 1853年頃 ロンドン自然史博物館
この頃はまだ恐竜に対する研究が進んでいなかったため、多くの画家はイマジネーションに基づいて恐竜を描いていて、中には鼻の上にツノがあるイグアノドンなど、現在では否定されているすがたをしている恐竜も少なくありませんでした。

チャールズ・R・ナイト『ステゴサウルス』 1901年 アメリカ自然史博物館
しかし1978年から80年にかけてベルギーにてイグアノドンの化石が多く発見されると、恐竜に対する新たな知見が生まれ、従来のすがたは大きく修正を余儀なくされました。またアメリカで「化石戦争」と呼ばれる発掘競争による次々と新たな恐竜が発見されると、同国のチャールズ・R・ナイトらがパレオアートとして描き、古典的な恐竜のイメージの規範として人々に影響を与えました。

ズデニェク・ブリアン『アントロデムス・バレンスとステゴサウルス・ステノプス』 1950年 ドヴール・クラーロヴェー動物園
このナイトの影響を受けて新たなパレオアートを手がけたのがチェコスロヴァキアのズデニェク・ブリアンで、画才を発揮しては恐竜をリアリティに富んだ様子で描き出すと、作品は書物を通して日本を含む世界へと拡散しました。

左からニーヴ・パーカー『イグアノドン』、『ヒプシロフォドン』 ともに1950年代 ロンドン自然史博物館
2大巨匠とも呼ばれるナイトとブリアンの展示もひとつのハイライトといえるかもしれません。またブリアンと同時代に活動したイギリスのニーヴ・パーカーの作品にも見入るものがありました。

ジョーン・マーサ『ホースシュー・キャニオンでの遭遇』 1997年 インディアナポリス子供博物館(ランツェンドルフ・コレクション)
20世紀に入り、1960年代から70年代になると、「恐竜ルネサンス」と呼ばれるように恐竜研究は大きな転換点を迎えました。それは恐竜は以前から考えられていた鈍重な変温動物ではなく、活発に活動する恒温動物であるという見解が示されたことで、パレオアートにおいても恐竜は新たなすがたとして表現されるようになりました。

ダグラス・ヘンダーソン『ティラノサウルス』 1992年 インディアナポリス子供博物館(ランツェンドルフ・コレクション)
こうした「恐竜ルネサンス」以降のパレオアートも見どころだったかもしれません。とりわけ恐竜を当時の生息環境とともに描き出したアメリカのダグラス・ヘンダーソンの作品に心を引かれました。

小田隆『篠山層群産動植物の生態環境復元画』 2014年 丹波市立丹波竜化石工房
このほか、日本における恐竜の受容史も紹介されていて、恐竜をモチーフとした福沢一郎や立石紘一らの絵画とともに、いま活躍する画家の小田隆や古生物造形作家の徳川広和などの作品も見ることができました。
WEBメディア「イロハニアート」にも展示の見どころを寄稿しました。
絵画の中でよみがえる、恐竜の生命の軌跡。上野の森美術館にて『恐竜図鑑』展が開催中! | イロハニアート

『恐竜図鑑 失われた世界の想像/創造』展示風景
化石ではない絵の主役が異色の恐竜展と呼べるかもしれません。また一部作品を除いて撮影も可能でした。

『恐竜図鑑 失われた世界の想像/創造』展示入口
7月22日まで開催されています。
*本エントリの写真はプレス内覧会の際に主催者の許可を得て撮影しました。
『恐竜図鑑 失われた世界の想像/創造』(@kyoryu_zukan) 上野の森美術館(@UenoMoriMuseum)
会期:2023年5月31日 (水) ~7月22日(土)
時間:10:0~17:00
*土日祝は9:30開館。
*入館は閉館の30分前まで。
休館:会期中無休
料金:一般2300円、大学生・専門学校生1600円、小・中学・高校生1000円。
住所:台東区上野公園1-2
交通:JR線上野駅公園口より徒歩3分。東京メトロ銀座線・日比谷線上野駅・京成線上野駅より徒歩5分
『恐竜図鑑 失われた世界の想像/創造』
2023/5/31~7/22

19世紀にイギリスで恐竜の化石が発見されて以来、人々は化石などの痕跡から想像を膨らませると、恐竜のすがたを描き続け、今に至るまで多くのパレオアート(古生物を復元する芸術)が生み出されてきました。
そうしたパレオアートの世界を紹介するのが『恐竜図鑑 失われた世界の想像/創造』で、会場には19世紀の復元図、20世紀の絵画にサブカルチャー、さらに近年の研究に基づくパレオアートなど150点の作品が展示されていました。

ロバート・ファレン『ジュラ紀の海の生き物―ドゥリア・アンティクィオル(太古のドーセット)』 1850年頃 ケンブリッジ大学セジウィック地球科学博物館
まずはじめに展示されるのは19世紀の黎明期におけるパレオアートで、古生物の生態を復元した史上初の絵画のひとつとされる『ドゥリア・アンティクィオル(太古のドーセット)』などを見ることができました。

ベンジャミン・ウォーターハウス・ホーキンズ『水晶宮のイグアノドン』 1853年頃 ロンドン自然史博物館
この頃はまだ恐竜に対する研究が進んでいなかったため、多くの画家はイマジネーションに基づいて恐竜を描いていて、中には鼻の上にツノがあるイグアノドンなど、現在では否定されているすがたをしている恐竜も少なくありませんでした。

チャールズ・R・ナイト『ステゴサウルス』 1901年 アメリカ自然史博物館
しかし1978年から80年にかけてベルギーにてイグアノドンの化石が多く発見されると、恐竜に対する新たな知見が生まれ、従来のすがたは大きく修正を余儀なくされました。またアメリカで「化石戦争」と呼ばれる発掘競争による次々と新たな恐竜が発見されると、同国のチャールズ・R・ナイトらがパレオアートとして描き、古典的な恐竜のイメージの規範として人々に影響を与えました。

ズデニェク・ブリアン『アントロデムス・バレンスとステゴサウルス・ステノプス』 1950年 ドヴール・クラーロヴェー動物園
このナイトの影響を受けて新たなパレオアートを手がけたのがチェコスロヴァキアのズデニェク・ブリアンで、画才を発揮しては恐竜をリアリティに富んだ様子で描き出すと、作品は書物を通して日本を含む世界へと拡散しました。

左からニーヴ・パーカー『イグアノドン』、『ヒプシロフォドン』 ともに1950年代 ロンドン自然史博物館
2大巨匠とも呼ばれるナイトとブリアンの展示もひとつのハイライトといえるかもしれません。またブリアンと同時代に活動したイギリスのニーヴ・パーカーの作品にも見入るものがありました。

ジョーン・マーサ『ホースシュー・キャニオンでの遭遇』 1997年 インディアナポリス子供博物館(ランツェンドルフ・コレクション)
20世紀に入り、1960年代から70年代になると、「恐竜ルネサンス」と呼ばれるように恐竜研究は大きな転換点を迎えました。それは恐竜は以前から考えられていた鈍重な変温動物ではなく、活発に活動する恒温動物であるという見解が示されたことで、パレオアートにおいても恐竜は新たなすがたとして表現されるようになりました。

ダグラス・ヘンダーソン『ティラノサウルス』 1992年 インディアナポリス子供博物館(ランツェンドルフ・コレクション)
こうした「恐竜ルネサンス」以降のパレオアートも見どころだったかもしれません。とりわけ恐竜を当時の生息環境とともに描き出したアメリカのダグラス・ヘンダーソンの作品に心を引かれました。

小田隆『篠山層群産動植物の生態環境復元画』 2014年 丹波市立丹波竜化石工房
このほか、日本における恐竜の受容史も紹介されていて、恐竜をモチーフとした福沢一郎や立石紘一らの絵画とともに、いま活躍する画家の小田隆や古生物造形作家の徳川広和などの作品も見ることができました。
WEBメディア「イロハニアート」にも展示の見どころを寄稿しました。
絵画の中でよみがえる、恐竜の生命の軌跡。上野の森美術館にて『恐竜図鑑』展が開催中! | イロハニアート

『恐竜図鑑 失われた世界の想像/創造』展示風景
化石ではない絵の主役が異色の恐竜展と呼べるかもしれません。また一部作品を除いて撮影も可能でした。

『恐竜図鑑 失われた世界の想像/創造』展示入口
7月22日まで開催されています。
*本エントリの写真はプレス内覧会の際に主催者の許可を得て撮影しました。
『恐竜図鑑 失われた世界の想像/創造』(@kyoryu_zukan) 上野の森美術館(@UenoMoriMuseum)
会期:2023年5月31日 (水) ~7月22日(土)
時間:10:0~17:00
*土日祝は9:30開館。
*入館は閉館の30分前まで。
休館:会期中無休
料金:一般2300円、大学生・専門学校生1600円、小・中学・高校生1000円。
住所:台東区上野公園1-2
交通:JR線上野駅公園口より徒歩3分。東京メトロ銀座線・日比谷線上野駅・京成線上野駅より徒歩5分
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