都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
『国立新美術館開館15周年記念 李禹煥』 国立新美術館
国立新美術館
『国立新美術館開館15周年記念 李禹煥』
2022/8/10~11/7

1960年代後半より制作をはじめた現代美術家の李禹煥は、自然や人工の素材を組み合わせて場を作り出す「もの派」と呼ばれる動向を牽引し、約60年にわたって活動を続けてきました。
その李禹煥の東京での初めての大規模な回顧展が『国立新美術館開館15周年記念 李禹煥』で、初期作から新作までの約60点の作品が公開されていました。
まず前半の立体で目立っていたのは、李の代表作として知られる「関係項」のシリーズで、石とガラスを組み合わせた『現象と知覚B 改題 関係項』や、石と鉄板をあわせた『関係項ーサイレンス』などが並んでいました。
また一面の床に鉄板を敷いた『関係項―棲処(B)』や、白い砂利の上にステンレスの板と石を置いた『関係項ー鏡の道』も展示されていて、いずれも作品空間へと立ち入ることもできました。

『関係項ーアーチ』 2014/2022年 作家蔵
高さ4メートルにも及ぶアーチ状の作品、『関係項ーアーチ』も目立っていたのではないでしょうか。ちょうど野外展示場の中央にはアーチ状に曲がったステンレスと2つの石が置かれ、その中央には直交するように長いステンレスの板がのびていました。

『関係項ーアーチ』 2014/2022年 作家蔵
そしてステンレス板の上を歩きながら、アーチを行き来することも可能で、移りゆく景色を楽しむこともできました。
この『関係項ーアーチ』を挟んで後半に続くのが、「点より」や「線より」、あるいは「風より」などと名付けられた平面のシリーズでした。
ここでは主に制作年代を辿るようにして展示されていて、初期の「線より」などから次第に余白が大きくなり、ストロークが短くなる「照応」、さらには1、2個の限定された点の描かれた「応答」といったシリーズへの作風の変遷を見ることができました。壁に直接描いた新作の「対話ーウォールペインティング」の光景も美しかったかもしれません。

『関係項ーエスカルゴ』 2018/2022年
李禹煥の回顧展として思い出すのは、2005年に横浜美術館にて開かれた『李禹煥 余白の芸術展』でした。
この時も今回と同様、李本人が展示のプランを練り、展示を組み立てていて、主に90年代以降の新作を含む絵画と彫刻、計36点の作品が公開されていました。
また展示室のカーペットを取り払い、コンクリート剥き出しの床へ「関係項」のシリーズなどを並べていて、どこか作品と空間とが対峙、あるいはせめぎ合っているような印象も受けました。
それに比べると今回の回顧展は、美術館のホワイトキューブを作品へとたくみに取り入れていて、作品と調和するような空間が築かれているように感じられました。

私の中での李禹煥体験は、主に横浜美術館と今回の国立新美術館、そして直島で訪ねた李禹煥美術館でしたが、それぞれの空間でまた異なった印象も与えられたかもしれません。

この回顧展は東京での会期を終えると、兵庫県立美術館(*)へと巡回しますが、どのように安藤建築の空間にどのように響くのかにも興味を覚えました。*会期:2022年12月13日(火)~2023年2月12日(日)
イロハニアートへも『国立新美術館開館15周年記念 李禹煥』について寄稿しました。
【東京では初めての開催!】李禹煥の大規模回顧展をより楽しむための見どころ紹介 | イロハニアート
11月7日まで開催されています。*屋外彫刻は会期中も撮影OK。
『国立新美術館開館15周年記念 李禹煥』 国立新美術館(@NACT_PR)
会期:2022年8月10日(水)~11月7日(月)
休館:火曜日。
時間:10:00~18:00
*毎週金・土曜日は20:00まで
*入館は閉館の30分前まで。
料金:一般1700円、大学生1200円。高校生800円。中学生以下無料。
*団体券の発売は中止。
住所:港区六本木7-22-2
交通:東京メトロ千代田線乃木坂駅出口6より直結。都営大江戸線六本木駅7出口から徒歩4分。東京メトロ日比谷線六本木駅4a出口から徒歩5分。
『国立新美術館開館15周年記念 李禹煥』
2022/8/10~11/7

1960年代後半より制作をはじめた現代美術家の李禹煥は、自然や人工の素材を組み合わせて場を作り出す「もの派」と呼ばれる動向を牽引し、約60年にわたって活動を続けてきました。
その李禹煥の東京での初めての大規模な回顧展が『国立新美術館開館15周年記念 李禹煥』で、初期作から新作までの約60点の作品が公開されていました。
まず前半の立体で目立っていたのは、李の代表作として知られる「関係項」のシリーズで、石とガラスを組み合わせた『現象と知覚B 改題 関係項』や、石と鉄板をあわせた『関係項ーサイレンス』などが並んでいました。
また一面の床に鉄板を敷いた『関係項―棲処(B)』や、白い砂利の上にステンレスの板と石を置いた『関係項ー鏡の道』も展示されていて、いずれも作品空間へと立ち入ることもできました。

『関係項ーアーチ』 2014/2022年 作家蔵
高さ4メートルにも及ぶアーチ状の作品、『関係項ーアーチ』も目立っていたのではないでしょうか。ちょうど野外展示場の中央にはアーチ状に曲がったステンレスと2つの石が置かれ、その中央には直交するように長いステンレスの板がのびていました。

『関係項ーアーチ』 2014/2022年 作家蔵
そしてステンレス板の上を歩きながら、アーチを行き来することも可能で、移りゆく景色を楽しむこともできました。
この『関係項ーアーチ』を挟んで後半に続くのが、「点より」や「線より」、あるいは「風より」などと名付けられた平面のシリーズでした。
ここでは主に制作年代を辿るようにして展示されていて、初期の「線より」などから次第に余白が大きくなり、ストロークが短くなる「照応」、さらには1、2個の限定された点の描かれた「応答」といったシリーズへの作風の変遷を見ることができました。壁に直接描いた新作の「対話ーウォールペインティング」の光景も美しかったかもしれません。

『関係項ーエスカルゴ』 2018/2022年
李禹煥の回顧展として思い出すのは、2005年に横浜美術館にて開かれた『李禹煥 余白の芸術展』でした。
この時も今回と同様、李本人が展示のプランを練り、展示を組み立てていて、主に90年代以降の新作を含む絵画と彫刻、計36点の作品が公開されていました。
また展示室のカーペットを取り払い、コンクリート剥き出しの床へ「関係項」のシリーズなどを並べていて、どこか作品と空間とが対峙、あるいはせめぎ合っているような印象も受けました。
それに比べると今回の回顧展は、美術館のホワイトキューブを作品へとたくみに取り入れていて、作品と調和するような空間が築かれているように感じられました。

私の中での李禹煥体験は、主に横浜美術館と今回の国立新美術館、そして直島で訪ねた李禹煥美術館でしたが、それぞれの空間でまた異なった印象も与えられたかもしれません。

この回顧展は東京での会期を終えると、兵庫県立美術館(*)へと巡回しますが、どのように安藤建築の空間にどのように響くのかにも興味を覚えました。*会期:2022年12月13日(火)~2023年2月12日(日)
イロハニアートへも『国立新美術館開館15周年記念 李禹煥』について寄稿しました。
【東京では初めての開催!】李禹煥の大規模回顧展をより楽しむための見どころ紹介 | イロハニアート
11月7日まで開催されています。*屋外彫刻は会期中も撮影OK。
『国立新美術館開館15周年記念 李禹煥』 国立新美術館(@NACT_PR)
会期:2022年8月10日(水)~11月7日(月)
休館:火曜日。
時間:10:00~18:00
*毎週金・土曜日は20:00まで
*入館は閉館の30分前まで。
料金:一般1700円、大学生1200円。高校生800円。中学生以下無料。
*団体券の発売は中止。
住所:港区六本木7-22-2
交通:東京メトロ千代田線乃木坂駅出口6より直結。都営大江戸線六本木駅7出口から徒歩4分。東京メトロ日比谷線六本木駅4a出口から徒歩5分。
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