都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「青木野枝 Mesocyclone」 ANOMALY
ANOMALY
「青木野枝 Mesocyclone」
2021/4/17~6/5
ANOMALYで開催中の「青木野枝 Mesocyclone」を見てきました。
1958年に東京で生まれ、工業用の鉄を使った作品で知られる青木野枝は、全国各地の芸術祭に参加するだけでなく、近年も府中市美術館にて展示を開くなどして多様に活動してきました。
その青木のANOMALYでの初めて個展が「Mesocyclone」で、タイトルに付けられた巨大な鉄のインスタレーションが空間の全てを支配するかのように展開していました。
ともかく目に飛び込んできたのは、コンクリート剥き出しの床の上から天井へと曲線を描くように連なる鉄のリングの群れで、まるで水流が激しく乱れながら自在に動くように広がっていました。
「Mesocyclone」とは気象用語で低気圧の循環構造などを意味していて、青木が思いを馳せるという世界に循環する水の一様を表していました。その上昇しては下降し、空間へ渦を巻くリングには、正面も後ろもなく、全てが連動しては結ばれているかのようでした。
本来的に重い素材である鉄が、あたかも軽みを見せるように繋がっているのも特徴で、1つ1つのリングが水の泡などを思い起こさせるものがありました。
しかしながら表面には溶断された跡が傷のように残っていて、荒々しく生々しい表情を見せていました。またリングの重なり合う溶接面にも力強さ、あるいは緊張感が感じられたのではないでしょうか。
しばらく全体を眺めていると、例えば空気や炎の柱が渦巻いているようにも思えて、無機的なはずの鉄からは想像もつかないイメージが頭に浮かんできました。鉄や塊のある彫刻という概念を解き放ち、空間全体へ新たな世界を築き上げるのも青木の制作の大きな魅力かもしれません。
この「Mesocyclone」とは別のスペースでは、鉄の「霧と山」や石鹸を用いた「立山」のほか、メゾチントによる平面の作品なども展示されていて、青木の近年の制作を追うことができました。
なお過去の府中での展示同様、恒久的に設置される場合を除くと、会期終了後に作品は解体されます。その意味では「Mesocyclone」も、ANOMALYでは最初で最後の展示となります。
予約は不要です。当初の会期が延長されました。6月5日まで開催されています。
「青木野枝 Mesocyclone」 ANOMALY(@ANOMALYtokyo)
会期:2021年4月17日 (土) ~6月5日 (土)
休廊:日、月、祝祭日
時間:11:00~18:00。
料金:無料
住所:品川区東品川1-33-10 Terrada Art Complex 4F
交通:東京臨海高速鉄道りんかい線天王洲アイル駅B出口より徒歩約8分。東京モノレール羽田空港線天王洲アイル駅中央口より徒歩約11分。京浜急行線新馬場駅より徒歩12分。
「青木野枝 Mesocyclone」
2021/4/17~6/5
ANOMALYで開催中の「青木野枝 Mesocyclone」を見てきました。
1958年に東京で生まれ、工業用の鉄を使った作品で知られる青木野枝は、全国各地の芸術祭に参加するだけでなく、近年も府中市美術館にて展示を開くなどして多様に活動してきました。
その青木のANOMALYでの初めて個展が「Mesocyclone」で、タイトルに付けられた巨大な鉄のインスタレーションが空間の全てを支配するかのように展開していました。
ともかく目に飛び込んできたのは、コンクリート剥き出しの床の上から天井へと曲線を描くように連なる鉄のリングの群れで、まるで水流が激しく乱れながら自在に動くように広がっていました。
「Mesocyclone」とは気象用語で低気圧の循環構造などを意味していて、青木が思いを馳せるという世界に循環する水の一様を表していました。その上昇しては下降し、空間へ渦を巻くリングには、正面も後ろもなく、全てが連動しては結ばれているかのようでした。
本来的に重い素材である鉄が、あたかも軽みを見せるように繋がっているのも特徴で、1つ1つのリングが水の泡などを思い起こさせるものがありました。
しかしながら表面には溶断された跡が傷のように残っていて、荒々しく生々しい表情を見せていました。またリングの重なり合う溶接面にも力強さ、あるいは緊張感が感じられたのではないでしょうか。
しばらく全体を眺めていると、例えば空気や炎の柱が渦巻いているようにも思えて、無機的なはずの鉄からは想像もつかないイメージが頭に浮かんできました。鉄や塊のある彫刻という概念を解き放ち、空間全体へ新たな世界を築き上げるのも青木の制作の大きな魅力かもしれません。
この「Mesocyclone」とは別のスペースでは、鉄の「霧と山」や石鹸を用いた「立山」のほか、メゾチントによる平面の作品なども展示されていて、青木の近年の制作を追うことができました。
なお過去の府中での展示同様、恒久的に設置される場合を除くと、会期終了後に作品は解体されます。その意味では「Mesocyclone」も、ANOMALYでは最初で最後の展示となります。
予約は不要です。当初の会期が延長されました。6月5日まで開催されています。
「青木野枝 Mesocyclone」 ANOMALY(@ANOMALYtokyo)
会期:2021年4月17日 (土) ~6月5日 (土)
休廊:日、月、祝祭日
時間:11:00~18:00。
料金:無料
住所:品川区東品川1-33-10 Terrada Art Complex 4F
交通:東京臨海高速鉄道りんかい線天王洲アイル駅B出口より徒歩約8分。東京モノレール羽田空港線天王洲アイル駅中央口より徒歩約11分。京浜急行線新馬場駅より徒歩12分。
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )