「en[縁]:アート・オブ・ネクサスー第15回ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展日本館帰国展」 TOTOギャラリー・間

TOTOギャラリー・間
「en[縁]:アート・オブ・ネクサスー第15回ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展日本館帰国展」 
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2016年の第15回「ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展」の日本館を再構成した展示が、乃木坂のTOTOギャラリー・間で開催されています。

同ビエンナーレの日本館では、「モダニズムを通して失ってきた社会の様々な結びつき」(解説より)を、いわば日本的な「縁」という概念で再検討し、価値観を捉え直す試みが行われました。そして「人の縁」、「モノの縁」、「地域の縁」といった3つのテーマの元、12名の建築家が紹介されました。結果的に、現代の空き家や高齢化といった課題に対しての解答を提示したことが評価され、特別表彰を受賞しました。

帰国展に際しては、日本館で表現された日本の都市の「散らかった状況」や「密度感」(ともに解説より)のある展示物を残しながら、各建築家が、ビエンナーレを経験し、今後、いかに活動へ結びつけていくかについても見ていく工夫がなされたそうです。

「散らかった状況」は、実際に足を踏み入れた際に感じられるかもしれません。会場内へ所狭しと並ぶのは、主に住宅建築の模型で、中には多くの家具が並び、本も積まれ、たくさんの衣服や日用品が雑然と置かれる姿を再現しているなど、生活感の滲み出したものも少なくありませんでした。



「専用住宅は個人の生活を分割し、プライバシーを偏重した」(キャプションより)とする仲建築設計スタジオは、「食堂付きアパート」において、5つの住宅、食堂、それにシェアオフィスを立体路地でつなげることで、人々に内発的な関わりが生まれるように志向しました。住まいと働くことが繋がることを意識したそうです。



成瀬・猪熊建築設計事務所による「LT城西」は、新築によるシェアハウスで、2間のグリッドに13の個室を配し、建物自体の高さも2.5層にすることで、凹凸のある立体的な空間を作り出しました。



大人数で集まるのに適した部分と、一人でも過ごすことの出来るスペースが混在し、住人たちは、気軽に共用部を利用出来るように工夫されています。人同士の距離感にも一定の配慮がなされているかもしれません。



西田司+中川エリカの「ヨコハマアパートメント」は、地上階をリビング、ないし共用空間とした共同住宅でした。1階部分に広い共用空間があり、2階には4つのワンルームが繋がっていて、全て別々の階段でつながっていました。共用部分は外にも開けた半ラウンジ広場と化していて、近所の人々が遊びに来たり、イベントを開催することもあるそうです。



オープンスペースを住宅へ取り込んだ形に近いのでしょうか。確かに通常の住宅ではあり得ない、新たな「縁」を生み出す建築と言えるかもしれません。



常山未央の「不動前ハウス」は、核家族用の住宅と倉庫を、7人の共同生活のためにリノベーションしたシェアハウスでした。倉庫だった1階をリビングにし、扉を開放した上で、路地と地続きにしました。さらに個室のある2階は、周囲の廊下が縁側のようになっていることから、採光が確保出来る上、生活が外へと滲み出す効果をもたらしているそうです。こうした内と外との曖昧な関係も、人の「縁」を築く上において、重要な要素かもしれません。



素材を変えては、既存の建築に新たな感覚をもたらそうとする試みも見られました。その1つが増田信吾+大坪克亘による「躯体の窓」で、元々あった企業の研究所を、週末住宅兼ハウススタジオにコンバージョンした建物でした。その際、躯体だけを残し、ファサードと壁もバルコニーも撤去し、代わりに巨大なサッシを建物にはめ込みました。いわば全面が窓と化していました。



「マテリアルの流動」を建築に位置付けようとするのが、403architecture [dajiba]でした。一例が「渥美の床」で、天井の野縁、すなわち天井板を張るために、小屋梁などからつるした細長い横木を、カットして床に敷き詰めました。また「富塚の天井」では、農業用ネットを天井材に転用しました。素材の本来的な用途にとらわれない試みが目を引くのではないでしょうか。これぞモノと建築の新たな「縁」と言えるのかもしれません。



ほか瀬戸内海の小豆島を舞台に、地域の人々と交流するためのハードとソフトを同時に提案した、ドットアーキテクツの取り組みも興味深いものがありました。人、モノを超えて、「縁」は地域へと広がっていました。


ビエンナーレでキュレーターを務めた東京理科大学の山名善之氏は、上記リンク先のインタビューにて「壁と壁の間に住むという、コルビュジエによる集合住宅の代表作『ユニテ・ダビタシオン』のような生活は、そろそろ止めたほうがいいのだと思います。」と語っています。



色々と議論はあるかもしれませんが、建築の試みを通して、日常の生活を見直す一つの契機となり得る展覧会と言えるかもしれません。

3月18日まで開催されています。

「en[縁]:アート・オブ・ネクサスー第15回ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展日本館帰国展」 TOTOギャラリー・間
会期:1月24日(水)~ 3月18日(日)
休館:月曜日。祝日 ただし2月11日(日・祝)は開館。
時間:11:00~18:00
料金:無料。
住所:港区南青山1-24-3 TOTO乃木坂ビル3F
交通:東京メトロ千代田線乃木坂駅3番出口徒歩1分。都営大江戸線・東京メトロ日比谷線六本木駅7番出口徒歩6分。
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