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「日産アートアワード2017」 BankArt Studio NYK

BankArt Studio NYK
「日産アートアワード2017:ファイナリスト5名による新作展」
9/16~11/5



BankArt Studio NYKで開催中の「日産アートアワード2017:ファイナリスト5名による新作展」を見てきました。

2013年から隔年で開催中の「日産アートアワード」も、今年で3回目を迎えました。事前に推薦委員によって25名のアーティストが選考され、この5月に最終選考へと進む、5名のファイナリストが選ばれました。

そのファイナリストによる展覧会です。題府基之、藤井光、石川竜一、田村友一郎、横山奈美の各作家が、個展の形式にて作品を発表しています。


石川竜一「home work」 2017年

故郷、沖縄の暮らしや風景を写真に収めたのが、2015年に木村伊兵衛賞を受賞した石川竜一でした。自室でしょう。テレビやパソコンなども置かれ、やや荷物で散乱した室内空間を写し撮っています。また本で溢れた書棚、食料の詰め込まれた冷蔵庫の写真もありました。さらに玄関や寝室、風呂と続きます。プライベートな空間が余すことなく切り取られていました。


石川竜一「home work」 2017年

そこからふと目を上げると、窓から眺めた戸外の風景が広がっていました。そして鳥とともに、空に行き交う軍用ヘリ、オスプレイの姿なども見えます。基地と隣り合わせの沖縄の現実が垣間見えました。


藤井光「日本人を演じる」 2017年

ドキュメンタリー映画や、演劇の演出でも幅広く活動する藤井光は、「日本人を演じる」というパフォーマンス映像を展示しています。舞台はワークショップで、数名の男女の参加者が、日本人を演じ、日本について語りながら、歴史観や多様性のあり方などについての意見を表明しています。


藤井光「日本人を演じる」 2017年

と同時に、1903年の内国勧業博覧会で、アイヌや沖縄のほか、各地の民族の人々を展示品とした「人類館事件」を題材とし、かつての植民地主義や人種主義についても掘り下げていました。


横山奈美「Crucifix」 2017年 ほか

十字架や男女の姿をネオンサインに象ったのが、画家の横山奈美でした。いずれも油彩で、ネオンの鮮烈な色彩と光が表現されています。遠目からでは、さもネオンが実際に組み込まれていると錯覚してしまうかもしれません。


横山奈美「Window」 2017年

横山は一度、ネオンサインをデザインしたのち、実物のネオンを製造した上で、油絵具で絵画に描いているそうです。つまり対象自体も自作です。しかも、ネオンを支える構造帯や配線なども、細かに描きこんでいます。ネオンの光と背後の闇が対比的に示されていました。


田村友一郎「栄光と終焉、もしくはその終演」 2017年

田村友一郎は、栄光と終焉をテーマにしたインスタレーションを制作しました。栄光、すなわちグロリアと、終焉を連想させるモチーフや情報など交差させ、映像で展開し、立体作品として空間全体へ落とし込んでいます。アートアワードを意識したのでしょうか。グロリアでは日産のセダンのエンブレムまでありました。


田村友一郎「栄光と終焉、もしくはその終演」 2017年

ポップやクラシック音楽、そして建築物やベケットの戯曲までと、実に多様な素材を用いています。時代も文化も一見、関連性が見られません。栄光と終焉、さらに再生の物語は緩やかに紡がれていました。


題府基之「STILL LIFE」 2013年」〜2016年

身の回りの日用品や食料品を捉えたのが、写真家の題府基之でした。食卓の上には見切れ品の弁当や惣菜、そしてナック菓子やお茶漬けなどが散乱しています。いずれも雑然と並び、まるで整っていません。強いフラッシュで撮影しているからか、色が際立ち、奥行き感が喪失しています。全てが日常のありふれた品にも関わらず、どことなく非日常的な雰囲気も感じられました。


会期中、審査員による選定を得て、藤井光がグランプリを獲得しました。また、一般来場者による投票により、オーディエンス賞として、横山奈美が選ばれました。(オーディエンス賞の投票は終了。)

なおアートアワードの会場は、BankArt Studio NYKの2階部分です。1階と3階では、別の企画展、「BankART LifeⅤ〜観光」(有料)が行われています。そちらは別のエントリにまとめます。

入場は無料です。11月5日まで開催されています。

「日産アートアワード2017:ファイナリスト5名による新作展」@nissanartaward) BankArt Studio NYK(2階)
会期:9月16日(土)~11月5日(日)
休館:第2・4木曜日。
時間:10:00~19:00
料金:無料。
住所:横浜市中区海岸通3-9
交通:横浜みなとみらい線馬車道駅6出口(赤レンガ倉庫口)より徒歩5分。
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