都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「ふたしかなその日展」 東京藝術大学大学美術館・陳列館
東京藝術大学大学美術館・陳列館
「Seize the Uncertain Dayーふたしかなその日」
3/18〜4/5

幅広い世代の現代美術家を交えた展覧会が、東京藝術大学大学美術館の陳列館にて開催されています。

はじまりは「夜」。一面の暗室です。正面に掲げられたのが森山大道の「新宿」でした。お馴染みの新宿の雑踏の光や闇を捉えた一枚です。そして側面を見れば荒木経惟の「センチメンタルな旅」も控えていました。

より視点はプライベートです。同じモノクロームながらも両者の個性は全く異なります。その邂逅です。かつてオペラシティーで行われた「森山・新宿・荒木」展を思い起こさせました。

白い台の上に「畳」と思しき板がのっています。弓削真由子です。タイトルは「畳図」。初めは本物の畳だと見間違えてしまいました。

実は鉛筆画でした。細かな畳の目地までをリアルに写し取っています。しかも目をこらすと、所々に髪の毛や埃らしき汚れも見えました。モチーフの畳は作家の弓削が実際に使用したものだそうです。よってゴミも生活の痕跡なのでしょう。それを残さず描き取っています。
展覧会の概要に「極私的ドキュメンタリー」との言葉がありました。これぞまさしく極私的ではないでしょうか。日常に集積した欠片を包み隠さずに提示していました。

さらに米田知子の写真や中平卓馬のスライドも展示。篠田太郎は自作の望遠鏡で月を追っています。いずれもテイストの異なる作家を「夜」という空間へ巧みに落とし込んでいました。
1階の「夜」に対するのが2階です。「朝ー昼」でした。今度は光の満ちた空間が広がっています。

東日本大震災の被災地に向き合ったのが小森はるかと瀬尾夏美でした。単にテキストで記録するだけに留まらず、ドローイングや写真、そして絵画に起こして表現しています。陸前高田市の造成地の下に埋もれた声を紡いだ映像も興味深い。「被災と復興」(解説より)の様々な問題について触れています。

同じく震災に関するのが川久保ジョイでした。黄、緑、紫の3色からなるプリントの作品です。美しいグラデーションを描いています。舞台は福島第一原子力発電所から800メートルの地中です。そこに一時的にフィルムを埋め込み、焼きついた色を取り出しました。

水面から陸上を捉えます。楢橋朝子です。水面とはいえ、画面の何割かは水中です。波打つ水そのものも写されています。船の動きによるのでしょうか。景色が歪んで見えます。まるで水が地上を飲み込もうとしているかのようでした。
一際目立っていたのが、城戸みゆきの「忘れたことさえ覚えていない」でした。屋根を模したインスタレーションです。2010年に韓国の滞在時に作られた作品の再制作。会津の芸術祭に出品されました。

一体、何面の屋根があるのでしょうか。その全てが腰の高さほどの位置に吊られています。青、黄色、緑、そして茶色と様々です。素材は紙でした。僅かな振動、ないし館内の風を受けているのでしょうか。微妙に揺れていました。家屋の連なる町の光景のようにも見えます。ただし屋根の下は何もありません。
本企画は同大の教授である長谷川祐子氏による「アートプロデュース演習」授業の一環。キュレーションを東京藝術大学大学大学院のアートプロデュース選考の修士1年生が担当しています。
会場は芸大美術館入口左手の陳列館です。入場は無料でした。

4月5日まで開催されています。
「Seize the Uncertain Dayーふたしかなその日」 東京藝術大学大学美術館・陳列館
会期:3月18日(土) 〜4月5日(水)
休館:月曜日。但し3月20日(月・祝)は開館し、翌21日(火)は休館。
時間:10:00~18:00 *入館は17時半まで。
料金:無料。
住所:台東区上野公園12-8
交通:JR線上野駅公園口より徒歩10分。東京メトロ千代田線根津駅より徒歩10分。京成上野駅、東京メトロ日比谷線・銀座線上野駅より徒歩15分。
「Seize the Uncertain Dayーふたしかなその日」
3/18〜4/5

幅広い世代の現代美術家を交えた展覧会が、東京藝術大学大学美術館の陳列館にて開催されています。

はじまりは「夜」。一面の暗室です。正面に掲げられたのが森山大道の「新宿」でした。お馴染みの新宿の雑踏の光や闇を捉えた一枚です。そして側面を見れば荒木経惟の「センチメンタルな旅」も控えていました。

より視点はプライベートです。同じモノクロームながらも両者の個性は全く異なります。その邂逅です。かつてオペラシティーで行われた「森山・新宿・荒木」展を思い起こさせました。

白い台の上に「畳」と思しき板がのっています。弓削真由子です。タイトルは「畳図」。初めは本物の畳だと見間違えてしまいました。

実は鉛筆画でした。細かな畳の目地までをリアルに写し取っています。しかも目をこらすと、所々に髪の毛や埃らしき汚れも見えました。モチーフの畳は作家の弓削が実際に使用したものだそうです。よってゴミも生活の痕跡なのでしょう。それを残さず描き取っています。
展覧会の概要に「極私的ドキュメンタリー」との言葉がありました。これぞまさしく極私的ではないでしょうか。日常に集積した欠片を包み隠さずに提示していました。

さらに米田知子の写真や中平卓馬のスライドも展示。篠田太郎は自作の望遠鏡で月を追っています。いずれもテイストの異なる作家を「夜」という空間へ巧みに落とし込んでいました。
1階の「夜」に対するのが2階です。「朝ー昼」でした。今度は光の満ちた空間が広がっています。

東日本大震災の被災地に向き合ったのが小森はるかと瀬尾夏美でした。単にテキストで記録するだけに留まらず、ドローイングや写真、そして絵画に起こして表現しています。陸前高田市の造成地の下に埋もれた声を紡いだ映像も興味深い。「被災と復興」(解説より)の様々な問題について触れています。

同じく震災に関するのが川久保ジョイでした。黄、緑、紫の3色からなるプリントの作品です。美しいグラデーションを描いています。舞台は福島第一原子力発電所から800メートルの地中です。そこに一時的にフィルムを埋め込み、焼きついた色を取り出しました。

水面から陸上を捉えます。楢橋朝子です。水面とはいえ、画面の何割かは水中です。波打つ水そのものも写されています。船の動きによるのでしょうか。景色が歪んで見えます。まるで水が地上を飲み込もうとしているかのようでした。
一際目立っていたのが、城戸みゆきの「忘れたことさえ覚えていない」でした。屋根を模したインスタレーションです。2010年に韓国の滞在時に作られた作品の再制作。会津の芸術祭に出品されました。

一体、何面の屋根があるのでしょうか。その全てが腰の高さほどの位置に吊られています。青、黄色、緑、そして茶色と様々です。素材は紙でした。僅かな振動、ないし館内の風を受けているのでしょうか。微妙に揺れていました。家屋の連なる町の光景のようにも見えます。ただし屋根の下は何もありません。
本企画は同大の教授である長谷川祐子氏による「アートプロデュース演習」授業の一環。キュレーションを東京藝術大学大学大学院のアートプロデュース選考の修士1年生が担当しています。
GA学生企画展「Seize the Uncertain Day────ふたしかなその日」開催 https://t.co/ykA2Vnu87v
— Global Arts_TUA (@GA_artproduce) 2017年3月3日
会場は芸大美術館入口左手の陳列館です。入場は無料でした。

4月5日まで開催されています。
「Seize the Uncertain Dayーふたしかなその日」 東京藝術大学大学美術館・陳列館
会期:3月18日(土) 〜4月5日(水)
休館:月曜日。但し3月20日(月・祝)は開館し、翌21日(火)は休館。
時間:10:00~18:00 *入館は17時半まで。
料金:無料。
住所:台東区上野公園12-8
交通:JR線上野駅公園口より徒歩10分。東京メトロ千代田線根津駅より徒歩10分。京成上野駅、東京メトロ日比谷線・銀座線上野駅より徒歩15分。
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )