都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「endless 山田正亮の絵画」 東京国立近代美術館
東京国立近代美術館
「endless 山田正亮の絵画」
2016/12/6~2017/2/12

東京国立近代美術館で開催中の「endless 山田正亮の絵画」を見て来ました。
「ストライプの画面で知られる」(公式サイトより)画家、山田正亮(1919〜2010)の初めての大規模な回顧展です。
出展は油彩200点。さらに紙作品が30点ほど加わります。膨大です。時間に沿って画業を丁寧に辿っていました。
さてそのストライプ、チラシ表紙を見ても明らかですが、何もキャリア初期からストライプばかりを描いていたわけではありません。

「Still Life A no.6」 1948年
冒頭は静物画でした。最初期の「Still Life A no.6」(1948)はどうでしょうか。花瓶に飾られた大きな花束を正面から描いています。赤や黄色の花は生気に満ちています。塗りもかなり濃い。分厚い画肌の感触が伝わってきました。

「Still Life no.51」 1952年
目立つのは瓶や果物です。テーブル上に並んだ様子を繰り返し捉えています。とはいえ山田は実際の写生ではなく、「記憶から描いた」と語っているそうです。しかし実在感は強い。にわかには信じられません。

「Still Life no.95」 1954-55年
セザンヌやキュビズムの影響があったかもしれません。画面はいつしか解体、次第に線や面に還元されていきます。モチーフと空間との融合です。例えば「Still Life no.95」(1954-55)ではガラス瓶の形こそ確認できるものの、ほぼ全て幾何学的な面で構成されています。抽象度が増したと言えるかもしれません。結果的に山田はこの後、1960年頃からストライプを描くようになりました。

「Work B.134」 1956年
ただしストライプは突然現れたわけではありません。プロセスはいささか複雑です。まず50年代の「Work B」のシリーズです。山田は1956年から1990年までの作品にWorkという名を与え、いずれも機械的に番号を振り分けました。「Work B.134」(1956)では矩形、ないし鍵形とも呼べる面が無数に点在。モザイクのようにひしめき合っています。
と思えば「Work B.154」(1957-58)では大きな四角形が登場。一転してシンプルな画面です。さらに「Work B.192」(1959)では縦に引かれた線が現れます。今度は長方形です。横に回転さればストライプのようにも見えなくありません。
そしてストライプです。展示室にも怒涛のようにストライプの絵画が並びます。何故に山田はこれほどストライプを熱心に取り組んだのでしょうか。

「Work C.86」 1961年
但し一口にストライプといえども、その表情は思いの外に多様です。まず線はフリーハンドです。時に歪んでいます。もちろん太さもまちまちです。配色も一見、規則性があるようで、ないようにも見えます。絵具も時に垂れています。また単に色で線を引くのではなく、色同士が重なっていました。つまり塗り重ねているわけです。

「Work C.111」 1962年
右も左もストライプです。一瞬、目がくらくらしました。この一点を挙げるのはもはや困難でしょう。但し純然たる抽象ながらも、細かな筆触などは、やや趣深い。細部のざわざわとした感覚が奇妙に心地良く感じられました。

「Work D.231」 1976年
ストライプを制作した期間は約5年です。1965年頃から大きく変化します。格子状に区切った画面が現れました。筆触もほぼ消えます。色も総じて薄く、均一でムラがありません。また線の部分の色を微妙に変化させているからか、独特の凹凸感が出ています。例えればタイルのようでした。

「Work F.116」 1992年
ラストに驚くべき展開が待ち受けていました。一転しての大画面です。「Work E」、ないし「Work F」のシリーズです。それにしても激しい。動きのあるストロークです。垂直線や水平線が交差します。十字形のモチーフが浮かび上がっていました。さも光の輝きのようです。解説に「樹木や人間に見立てる」とありましたが、私には何らかの巨大な工場、ないし機械設備を見ているようにも思えました。
静物からストライプ、さらにグリッドを経て辿り着いたエネルギッシュな絵画平面。変化に変化を遂げています。まさにendlessです。山田は2010年に世を去りますが、これらの一連のシリーズも到達点ではなかったかもしれません。

アトリエの再現展示のみ撮影が可能です。ほか照明にも工夫がありました。率直なところ、惹かれるとはまではいきませんでしたが、また一人、記憶に残る画家に出会うことができました。
2月12日まで開催されています。
「endless 山田正亮の絵画」 東京国立近代美術館(@MOMAT60th)
会期:2016年12月6日(火)~2017年2月12日(日)
休館:月曜日。但し1/2、1/9は開館。年末年始(12/28~1/1)。1/10(火)。
時間:10:00~17:00
*毎週金曜日は20時まで。
*入館は閉館30分前まで
料金:一般1000(800)円、大学生500(400)円、高校生以下無料。
*( )内は20名以上の団体料金。
*当日に限り「MOMATコレクション」、「瑛九1935-1937 闇の中で『レアル』をさがす」も観覧可。
住所:千代田区北の丸公園3-1
交通:東京メトロ東西線竹橋駅1b出口徒歩3分。
「endless 山田正亮の絵画」
2016/12/6~2017/2/12

東京国立近代美術館で開催中の「endless 山田正亮の絵画」を見て来ました。
「ストライプの画面で知られる」(公式サイトより)画家、山田正亮(1919〜2010)の初めての大規模な回顧展です。
出展は油彩200点。さらに紙作品が30点ほど加わります。膨大です。時間に沿って画業を丁寧に辿っていました。
さてそのストライプ、チラシ表紙を見ても明らかですが、何もキャリア初期からストライプばかりを描いていたわけではありません。

「Still Life A no.6」 1948年
冒頭は静物画でした。最初期の「Still Life A no.6」(1948)はどうでしょうか。花瓶に飾られた大きな花束を正面から描いています。赤や黄色の花は生気に満ちています。塗りもかなり濃い。分厚い画肌の感触が伝わってきました。

「Still Life no.51」 1952年
目立つのは瓶や果物です。テーブル上に並んだ様子を繰り返し捉えています。とはいえ山田は実際の写生ではなく、「記憶から描いた」と語っているそうです。しかし実在感は強い。にわかには信じられません。

「Still Life no.95」 1954-55年
セザンヌやキュビズムの影響があったかもしれません。画面はいつしか解体、次第に線や面に還元されていきます。モチーフと空間との融合です。例えば「Still Life no.95」(1954-55)ではガラス瓶の形こそ確認できるものの、ほぼ全て幾何学的な面で構成されています。抽象度が増したと言えるかもしれません。結果的に山田はこの後、1960年頃からストライプを描くようになりました。

「Work B.134」 1956年
ただしストライプは突然現れたわけではありません。プロセスはいささか複雑です。まず50年代の「Work B」のシリーズです。山田は1956年から1990年までの作品にWorkという名を与え、いずれも機械的に番号を振り分けました。「Work B.134」(1956)では矩形、ないし鍵形とも呼べる面が無数に点在。モザイクのようにひしめき合っています。
と思えば「Work B.154」(1957-58)では大きな四角形が登場。一転してシンプルな画面です。さらに「Work B.192」(1959)では縦に引かれた線が現れます。今度は長方形です。横に回転さればストライプのようにも見えなくありません。
そしてストライプです。展示室にも怒涛のようにストライプの絵画が並びます。何故に山田はこれほどストライプを熱心に取り組んだのでしょうか。

「Work C.86」 1961年
但し一口にストライプといえども、その表情は思いの外に多様です。まず線はフリーハンドです。時に歪んでいます。もちろん太さもまちまちです。配色も一見、規則性があるようで、ないようにも見えます。絵具も時に垂れています。また単に色で線を引くのではなく、色同士が重なっていました。つまり塗り重ねているわけです。

「Work C.111」 1962年
右も左もストライプです。一瞬、目がくらくらしました。この一点を挙げるのはもはや困難でしょう。但し純然たる抽象ながらも、細かな筆触などは、やや趣深い。細部のざわざわとした感覚が奇妙に心地良く感じられました。

「Work D.231」 1976年
ストライプを制作した期間は約5年です。1965年頃から大きく変化します。格子状に区切った画面が現れました。筆触もほぼ消えます。色も総じて薄く、均一でムラがありません。また線の部分の色を微妙に変化させているからか、独特の凹凸感が出ています。例えればタイルのようでした。

「Work F.116」 1992年
ラストに驚くべき展開が待ち受けていました。一転しての大画面です。「Work E」、ないし「Work F」のシリーズです。それにしても激しい。動きのあるストロークです。垂直線や水平線が交差します。十字形のモチーフが浮かび上がっていました。さも光の輝きのようです。解説に「樹木や人間に見立てる」とありましたが、私には何らかの巨大な工場、ないし機械設備を見ているようにも思えました。
静物からストライプ、さらにグリッドを経て辿り着いたエネルギッシュな絵画平面。変化に変化を遂げています。まさにendlessです。山田は2010年に世を去りますが、これらの一連のシリーズも到達点ではなかったかもしれません。

アトリエの再現展示のみ撮影が可能です。ほか照明にも工夫がありました。率直なところ、惹かれるとはまではいきませんでしたが、また一人、記憶に残る画家に出会うことができました。
【美術館】山田制作ノートの言葉より5「色彩のくりかえしのことは本質あるいは生である」1960年、ストライプの画面を描き出した頃の言葉。色彩とは私たちの感覚をただかざっているものではなく、ひとが世界に連なって生きるための本質的な経路なのではないでしょうか。 #山田正亮展 pic.twitter.com/ioQUrUxKhd
— 【公式】東京国立近代美術館 広報 (@MOMAT60th) 2017年1月5日
2月12日まで開催されています。
「endless 山田正亮の絵画」 東京国立近代美術館(@MOMAT60th)
会期:2016年12月6日(火)~2017年2月12日(日)
休館:月曜日。但し1/2、1/9は開館。年末年始(12/28~1/1)。1/10(火)。
時間:10:00~17:00
*毎週金曜日は20時まで。
*入館は閉館30分前まで
料金:一般1000(800)円、大学生500(400)円、高校生以下無料。
*( )内は20名以上の団体料金。
*当日に限り「MOMATコレクション」、「瑛九1935-1937 闇の中で『レアル』をさがす」も観覧可。
住所:千代田区北の丸公園3-1
交通:東京メトロ東西線竹橋駅1b出口徒歩3分。
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )