都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「伊藤晴雨 幽霊画展」 江戸東京博物館
江戸東京博物館
「伊藤晴雨 幽霊画展」
8/11~9/25
江戸東京博物館で開催中の「伊藤晴雨 幽霊画展」を見てきました。
大正から昭和にかけて活動した画家、伊藤晴雨。つとに幽霊画を得意としていました。
さて晴雨、何も幽霊画だけで生計を立てていたわけではありません。と言うのも、幼少期には琳派の系譜を継ぐ絵師に手習いを受け、後はほぼ独学で新聞挿絵などを学んでいたのです。
20代で芝居小屋の看板絵描きとしてデビュー。さらに新聞社で連載小説の挿絵を担当します。
「演藝畫報」第六年第九号・第八年第九号 大正元年(1912)年8月・大正3年(1914)年9月
よってはじまりは演芸雑誌の挿絵でした。時は大正元年。晴雨はこの年から大正6年まで挿絵や絵入りの演出記録を描きます。その表現は実に細かい。特に人物の動きや表情を巧みに表しています。早くも劇画として完成しています。
伊藤晴雨「明治時代の寄席」 昭和33(1958)年 江戸東京博物館
落語家の真打昇進を祝って配られたという扇子絵も美しい。舞台は寄席。木版です。寄席の建物の前にシルエット状の人々が集います。明治時代の様子を再現して描きました。
そもそも晴雨は江戸時代の風俗や文化に深い関心を寄せていました。持ち前の高い観察眼もあったことでしょう。かの時代への考証にも抜かりはありません。
その一つの結実した形が「いろは引 江戸と東京風俗野史」です。全6巻。江戸時代の伝説、信仰、生活用品、建具、娯楽など、ありとあらゆる文化や文物を描いています。
伊藤晴雨「いろは引 江戸と東京風俗野史」巻の三 昭和5(1930)年
これが大変に実証的で面白い。例えば巻の三です。描かれたのは無数の提灯や灯篭。つまり当時の照明器具です。御用と記された提灯などもあります。用途や使い方についても触れているのでしょうか。いずれの図解も解説付きでした。
伊藤晴雨「いろは引 江戸と東京風俗野史」巻の四 昭和8(1931)年
巻の四は商人がテーマです。行商人や屋台、さらに売り物などをコマ割りで描いています。中には掛け声も記されています。臨場感もあるのではないでしょうか。
伊藤晴雨「いろは引 江戸と東京風俗野史」巻の一 昭和4(1929)年
巻の一は風景でした。名所や見世物、それに障子などの建具もあります。また晴雨は演芸に詳しかったことから、舞台美術にも携わったそうです。よってここでも材質や構造について言及。舞台の関係者が見ても参考になるように工夫されています。
「いろは引」パネル展示
なお「ひろは引」は冊子の形態です。全ての面を開くことは叶いません。そのため一部はパネルで参照されていました。
さてメインはもちろん幽霊画です。全19点。いずれもかつて落語家の柳家小が収集し、後に谷中の全生庵に寄贈されたコレクションでした。
晴雨の幽霊画は時に凄みがありますが、それも先の時代考証や高い画力を見れば納得し得るというもの。晴雨自身も詳しかった落語や怪談に登場する幽霊も少なくありません。
特設コーナー「幽霊が美しいースタジオジブリ鈴木敏夫の眼」
特設コーナーとしてスタジオジブリの鈴木敏夫がピックアップした幽霊画の展示もありました。晴雨に対する評価をひっくり返したいとの熱いコメントも寄せています。
伊藤晴雨「維新前四季往来之図屏風」 昭和32(1957)年
さらに晴雨が原画を描いた手ぬぐいや晩年の風俗図こと「維新前四季往来之図屏風」なども目を引きます。ともすると現代、晴雨は幽霊画家としてだけ認知されていないかもしれませんが、風俗画家としての幅広い業績も追うことも出来ました。
「伊藤晴雨 幽霊画展」会場風景
会場は常設展示室内5階の企画展示室。小さなスペースです。特別展ではありません。とは言え、これまで散発的にしか接してこなかった晴雨の幽霊画をまとめて見られたのは収穫でした。
会場内、一部作品の撮影が出来ました。9月25日まで開催されています。
「伊藤晴雨 幽霊画展」 江戸東京博物館(@edohakugibochan)
会期:8月11日(木・祝)~9月25日(日)
時間:9:30~17:30
*土曜は19:30まで開館。
*7月29日から9月10日までの金曜、土曜は21時まで開館。但し9月2日、9月3日を除く。
*入館は閉館の30分前まで。
休館:8月22日(月)、8月29日(月)、9月5日(月)。
料金:一般600(480)円、大学生・専門学生480(380)円、中学生(都外)・高校生・65歳以上300(240)円。中学生(都内)・小学生以下無料。
*( )は20名以上の団体料金。
*特別展開催中は共通観覧券あり・
*毎月第3水曜日(シルバーデー)は65歳以上が無料。
住所:墨田区横網1-4-1
交通:JR総武線両国駅西口徒歩3分、都営地下鉄大江戸線両国駅A4出口徒歩1分。
「伊藤晴雨 幽霊画展」
8/11~9/25
江戸東京博物館で開催中の「伊藤晴雨 幽霊画展」を見てきました。
大正から昭和にかけて活動した画家、伊藤晴雨。つとに幽霊画を得意としていました。
さて晴雨、何も幽霊画だけで生計を立てていたわけではありません。と言うのも、幼少期には琳派の系譜を継ぐ絵師に手習いを受け、後はほぼ独学で新聞挿絵などを学んでいたのです。
20代で芝居小屋の看板絵描きとしてデビュー。さらに新聞社で連載小説の挿絵を担当します。
「演藝畫報」第六年第九号・第八年第九号 大正元年(1912)年8月・大正3年(1914)年9月
よってはじまりは演芸雑誌の挿絵でした。時は大正元年。晴雨はこの年から大正6年まで挿絵や絵入りの演出記録を描きます。その表現は実に細かい。特に人物の動きや表情を巧みに表しています。早くも劇画として完成しています。
伊藤晴雨「明治時代の寄席」 昭和33(1958)年 江戸東京博物館
落語家の真打昇進を祝って配られたという扇子絵も美しい。舞台は寄席。木版です。寄席の建物の前にシルエット状の人々が集います。明治時代の様子を再現して描きました。
そもそも晴雨は江戸時代の風俗や文化に深い関心を寄せていました。持ち前の高い観察眼もあったことでしょう。かの時代への考証にも抜かりはありません。
その一つの結実した形が「いろは引 江戸と東京風俗野史」です。全6巻。江戸時代の伝説、信仰、生活用品、建具、娯楽など、ありとあらゆる文化や文物を描いています。
伊藤晴雨「いろは引 江戸と東京風俗野史」巻の三 昭和5(1930)年
これが大変に実証的で面白い。例えば巻の三です。描かれたのは無数の提灯や灯篭。つまり当時の照明器具です。御用と記された提灯などもあります。用途や使い方についても触れているのでしょうか。いずれの図解も解説付きでした。
伊藤晴雨「いろは引 江戸と東京風俗野史」巻の四 昭和8(1931)年
巻の四は商人がテーマです。行商人や屋台、さらに売り物などをコマ割りで描いています。中には掛け声も記されています。臨場感もあるのではないでしょうか。
伊藤晴雨「いろは引 江戸と東京風俗野史」巻の一 昭和4(1929)年
巻の一は風景でした。名所や見世物、それに障子などの建具もあります。また晴雨は演芸に詳しかったことから、舞台美術にも携わったそうです。よってここでも材質や構造について言及。舞台の関係者が見ても参考になるように工夫されています。
「いろは引」パネル展示
なお「ひろは引」は冊子の形態です。全ての面を開くことは叶いません。そのため一部はパネルで参照されていました。
さてメインはもちろん幽霊画です。全19点。いずれもかつて落語家の柳家小が収集し、後に谷中の全生庵に寄贈されたコレクションでした。
晴雨の幽霊画は時に凄みがありますが、それも先の時代考証や高い画力を見れば納得し得るというもの。晴雨自身も詳しかった落語や怪談に登場する幽霊も少なくありません。
特設コーナー「幽霊が美しいースタジオジブリ鈴木敏夫の眼」
特設コーナーとしてスタジオジブリの鈴木敏夫がピックアップした幽霊画の展示もありました。晴雨に対する評価をひっくり返したいとの熱いコメントも寄せています。
伊藤晴雨「維新前四季往来之図屏風」 昭和32(1957)年
さらに晴雨が原画を描いた手ぬぐいや晩年の風俗図こと「維新前四季往来之図屏風」なども目を引きます。ともすると現代、晴雨は幽霊画家としてだけ認知されていないかもしれませんが、風俗画家としての幅広い業績も追うことも出来ました。
「伊藤晴雨 幽霊画展」会場風景
会場は常設展示室内5階の企画展示室。小さなスペースです。特別展ではありません。とは言え、これまで散発的にしか接してこなかった晴雨の幽霊画をまとめて見られたのは収穫でした。
会場内、一部作品の撮影が出来ました。9月25日まで開催されています。
「伊藤晴雨 幽霊画展」 江戸東京博物館(@edohakugibochan)
会期:8月11日(木・祝)~9月25日(日)
時間:9:30~17:30
*土曜は19:30まで開館。
*7月29日から9月10日までの金曜、土曜は21時まで開館。但し9月2日、9月3日を除く。
*入館は閉館の30分前まで。
休館:8月22日(月)、8月29日(月)、9月5日(月)。
料金:一般600(480)円、大学生・専門学生480(380)円、中学生(都外)・高校生・65歳以上300(240)円。中学生(都内)・小学生以下無料。
*( )は20名以上の団体料金。
*特別展開催中は共通観覧券あり・
*毎月第3水曜日(シルバーデー)は65歳以上が無料。
住所:墨田区横網1-4-1
交通:JR総武線両国駅西口徒歩3分、都営地下鉄大江戸線両国駅A4出口徒歩1分。
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