「オバケとパンツとお星さま」 東京都現代美術館

東京都現代美術館
「オバケとパンツとお星さま」
6/29-9/8



東京都現代美術館で開催中の「オバケとパンツとお星さま」へ行ってきました。

主に夏休みの子どもたちを対象とした展覧会です。通常の美術館での走らない、触らない、騒がないという約束事も解放し、他に迷惑をかけることがなければ、はしゃいだり触るのもOK。体験型の作品をメインに、子どもたちの想像力を喚起させるような仕掛けが随所にとられています。

それにしてもタイトルからして意味深。「オバケ」は見えないものを見る想像力や勇気を、また「パンツ」はおむつからパンツへ至るという成長の過程を、さらに「お星さま」はファンタジーや光、希望、未来を意味するとか。これら子どもを象徴するキーワードが作品と巧みに関係し合います。その鑑賞体験は意外なほど新鮮でした。

[出展作家]
変身コーナー担当:ゼロゼロエスエス
オバケ担当:松本力
パンツ担当:はまぐちさくらこ
お星さま担当:デタラメ星座協会(代表:村井啓哲/system:筒井真佐人)
オバケ屋敷担当:トラフ建築設計事務所(鈴野浩一、禿真哉)


館内は写真撮影が可能です。というわけで、会場の風景と一緒にいくつかの展示をご紹介。まずはファッションデザイナーの伊藤弘子とアーティストの松岡武によるゼロゼロエスエスから。変身コーナーです。


「変身コーナー」ゼロゼロエスエス

ここではひげやらカツラやら、いわゆる装身具的なアイテムが壁一面にずらり。その一つを手にとって文字通り変身することが出来ます。残念ながら私が出向いた時は既にアイテムが殆ど無くなっていましたが、ともかくはまずは仮装してスタート。展覧会への冒険が始まります。


「オバケはどこにいるか」松本力

すると出てくるのがオバケ。アニメーション作家の松本力の展示、映像と箱を用いたインスタレーションです。暗がりで動くアニメーションを追いかけながら、オバケを探す体験をしていく。また一つ、会場で工夫されていると感心したのはキャプションです。


「オバケはどこにいるか」展示キャプション

ご覧のように各作品には子ども用と大人用の二つの解説が付いています。そしてこの子ども向けが意外と読ませるのです。


「デタラメ星座協会」代表:村井啓哲/system:筒井真佐人

オバケに遭遇した後は夜空のお星さまへと向かいましょう。人の手で星座を作成出来るというプロジェクト「デタラメ星座協会」。ぼんやり出来上がった星座を見ているのも楽しいかもしれませんが、この星座の作り方がかなり凝っています。


「デタラメ星座協会」代表:村井啓哲/system:筒井真佐人

人と人ならぬ、星と星を繋げる技はまさに神の技。ここはチャレンジしたいところです。


「はだかちゃんとぱんつのくに」はまぐちさくらこ

さて暗がりから一転、床に巨大な「はだかちゃん」のぬいぐるみが転がるのは「パンツ」の国。はまぐちさくらこの「はだかちゃんとぱんつのくに」です。激しい色遣いの巨大ドローイングを背に「はだかちゃん」と遊ぶ瞬間。もちろん「はだかちゃん」とは直に触れ合うことも出来ます。子どもたちはジャンプしてまた寝そべって、思い思いに楽しんでいました。

すると次には再びオバケが。トラフ建築設計事務所のお化け屋敷。入口からは中に入ることも可能です。そして外側には美術館らしく何やら絵画が何枚も『展示』されている。一見、お化け屋敷らしからぬ作りですが、これが非常に良く出来ています。


「トラフのオバケ屋敷は化かし屋敷」トラフ建築設計事務所

というのもその一つ一つの絵画に仕掛けがいくつもあるのです。例えば肖像画の顔が入れ替わったり、突然中から人の目がこちらを覗いて来たりする。つまり見ているはずの絵画が別のものになることに気づいたり、見ていたと思っていた絵画から逆に見られていた、というようなことが体験出来るのです。しかもいずれも子どもたち自身が主体的に動く、ようは絵などに触ることで、初めて仕掛けが生きてきます。

あくまでもこのボックスは子どもたちの想像力を喚起させる装置に過ぎません。主役は絵ではなく鑑賞者、子どもたち、というわけでした。

美術を見ること。確かに一般的な鑑賞とは違う面はあるのかもしれません。しかしながら常日頃、作品なりに向き合う際、どこか受動的になり過ぎてはいないだろうか。そうしたことも考えさせられる展示でした。


「変身コーナー」ゼロゼロエスエス

ラストは再び変身コーナー。そしてこれがまた凝っています。たくさんの糸や布地やらがご覧の通り。思い思いのオリジナル衣装を作ることが出来ます。


「変身コーナー」ゼロゼロエスエス

会期中にフォーマンスや音楽会などのイベントもあります。いずれもチケットのみ、当日先着順での受付です。(11時30分より整理券配布)

「オバケとパンツとお星さま」関連イベント@東京都現代美術館

ただひたすら目線を下げ、分かりやすく美術を紹介することだけに留まらない意欲的な展示。単純に「子ども向け」の一言では片付けられません。楽しめました。

9月8日まで開催されています。

「オバケとパンツとお星さまーこどもが、こどもで、いられる場所」 東京都現代美術館@MOT_art_museum
会期:6月29日(土)~9月8日(日)
休館:月曜日。但し7月15日は開館。7月16日は休館。
時間:10:00~18:00 ただし、7月19日、26日、8月2日、9日、16日、23日、30日、9月6日(いずれも金曜日)は21時まで開館。
料金:一般1000(800)円 、大学生・65歳以上800(640)円、中高生500(400)円、小学生以下無料。
 *( )内は20名以上の団体料金。
 *「フランシス・アリス展」「手塚治虫×石ノ森章太郎 マンガのちから」との共通券あり。
住所:江東区三好4-1-1
交通:東京メトロ半蔵門線清澄白河駅B2出口より徒歩9分、都営地下鉄大江戸線清澄白河駅A3出口より徒歩13分。
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