「マリー・ローランサンとその時代展」 ニューオータニ美術館

ニューオータニ美術館
「マリー・ローランサンとその時代展 ~巴里に魅せられた画家たち」
7/14-9/30



ニューオータニ美術館で開催中の「マリー・ローランサンとその時代展 ~巴里に魅せられた画家たち」へ行ってきました。

エコール・ド・パリの女性画家の中では最も知名度の高いローランサン、首都圏である程度まとまって展示されたのは、2010年の川村記念での「マリー・ローランサンの扇」展以来のことかもしれません。

川村では「扇」というモチーフに着目していましたが、今回はもっとオーソドックス、ローランサンと同時代の画家にスポットを当てた展覧会となっています。


マリー・ローランサン「三人の若い女」1953年頃 マリー・ローランサン美術館

冒頭はローランサンです。作品数は前後期をあわせると29点(半期では20点弱)でしたが、初期から60歳前後の作品まで、幅広い年代の作品を楽しむことが出来ました。

不穏な気配、そして何とも言い難い閉塞感が画面を支配します。虚ろで定まらない表情の女性と犬を描いたのは「犬を連れた若い女」(1921)です。

実は若い頃のローランサンは、ドイツ人男爵と結婚してドイツへ移住するも、生活は破綻(離婚がまさに1921年。)、第一次大戦後にスペインへ亡命するという、苦難の人生を歩んでいますが、そうした孤独感を反映した作品だと言えるのではないでしょうか。

また初期作では「優雅な舞踏会あるいは田舎での舞踏」(1913)も見逃せません。舞踏のリズムにあわせるように交錯する線の表現は、ローランサンが当初に受けたキュビズムの影響を見ることが出来ます。


マリー・ローランサン「扇を持つ若い女」1950年頃 マリー・ローランサン美術館

とは言えやはり魅惑的なのは、「音楽」(1944)や「扇をもつ若い女」(1950)など、肉感的でボリューム感のある女性に透明感のある色彩美を融合させた作品ではないでしょうか。

ちなみに後者「扇をもつ若い女」は額装にはガラスの破片が散りばめられていました。制作当時のものかは不明ですが、鏡の中で光るローランサン一流の女性美、それこそ眩いばかりに輝いて見えました。

さて展覧会後半はタイトルからして「その時代」、つまり同時代のエコール・ド・パリの画家たちです。


キース・ヴァン・ドンゲン「腰掛ける婦人」1925-30年 ニューオータニ美術館

もちろんここではドンゲン、ルオー、そして私の偏愛のヴラマンクといった画家の作品も登場しますが、何よりも興味深いのは「日本人画家の憧れ」と題し、当時渡仏した日本人画家が紹介されていることではないでしょうか。


佐伯祐三「扉」1928年 田辺市美術館

藤田嗣治に佐伯祐三、そして荻須高徳に小磯良平ら、その数40点弱。全体の出品数からしても、相当に力の入ったセクションと言えるかもしれません。


児島虎次郎「手鏡を持つ婦人」1920年 高梁市成羽美術館

おすすめは徳永仁臣と児島虎次郎の裸婦対決ならぬ、「瞑想」(1912-1913)と「裸婦と椿」(1903)です。

ともに横たわる裸婦のモチーフがとられていますが、前者、つまり徳永の「瞑想」はまるでゴヤ画を思わせるようなエロチックさと気高さを、一方で児島の「裸婦と椿」はコラン風の裸婦の中にも椿を散らし、独特の妖艶さを醸し出しています。


小磯良平「踊り子」1940年 神戸市立小磯記念美術館

また小磯良平の7~8点規模で展示されているのもポイントかもしれません。ドガ風の踊り子からフォーブ、そしてピカソと、画風を大きく変えていく様は興味深いものがありました。

なおローランサンの作品を中心に会期中、一度展示替えがあります。

前期:7月14日(土)~8月19日(日)
後期:8月21日(火)~9月30日(日)


前期展示を有料券で入場した場合、半券の提示で後期は半額になります。ここは嬉しいところでした。

いわゆるローランサンの回顧展ではありませんが、同時代の画家、そして何かと脇に置かれがちな日本人画家にも光を当てた好企画と言えそうです。

9月30日まで開催されています。



*次回展は埼近美の回顧展でも話題を集めた小村雪岱展!(10/6~11/25)

「マリー・ローランサンとその時代展 ~巴里に魅せられた画家たち」 ニューオータニ美術館
会期:7月14日(土)~9月30日(日)
休館:月曜日(但し7/16、9/17は開館、7/17、9/18は休館。)
料金:一般800円、高・大生500円、小・中生300円
 *宿泊者無料、20名以上の団体は各100円割引。後期は前期の有料半券を提示すると半額。
時間:10:00~18:00
住所:千代田区紀尾井町4-1 ホテルニューオータニ ガーデンコート6階
交通:東京メトロ銀座線・丸ノ内線赤坂見附駅D出口より徒歩5分。東京メトロ半蔵門線・有楽町線・南北線永田町駅7番出口より徒歩5分。
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