「ギッター・コレクション展」 千葉市美術館

千葉市美術館千葉市中央区中央3-10-
「帰ってきた江戸絵画 ニューオーリンズ ギッター・コレクション展」
2010/12/14-2011/1/23



日本美術に傾倒したアメリカ人コレクターの江戸絵画コレクション(一部近代絵画あり。)を展観します。千葉市美術館で開催中の「ギッター・コレクション展」へ行ってきました。

ともかく最近の日本美術展というとこうした里帰り企画をよく目にしますが、今回はニューオーリンズ在住でアメリカでも有数の眼科医として知られるというカート・ギッター博士の収集した江戸絵画が約100点ほど展示されています。


酒井抱一/花山院愛徳賛「朝陽に四季草花図」 1821-28年

ギッター博士は1965年頃に来日して以来、日本文化に惹かれ、初めは禅画、そして文人画から琳派へと収集の域を広げてコレクションを形成しました。その内容は作品の価値云々を通り越し、「自分の目を信じて決断する。」というギッター氏の言葉の如く、まさに彼の独自の趣味と審美眼に基づいたものとなっています。

よってここで作品の質を云々するのは野暮なことかもしれません。ギッター邸にお邪魔する貴重な機会を得たと思って楽しみました。

構成は以下の通りです。 (出品リスト

1.若冲と奇想の画家たち
2.琳派の多彩
3.白隠と禅の書画
4.自然との親しみ
5.理想の山水
6.楽しげな人生


6つのテーマのもと、「バラエティ豊か」(千葉市美術館ニュースより引用。)な江戸絵画に親しめるよう工夫されていました。


伊藤若冲「白象図」 紙本墨画 1795年

冒頭に登場するのは、大きな話題となった「アナザーワールド」の記憶も新しい伊藤若冲です。ここで目立つのは水墨表現に勢いのある「白象図」や「達磨図」でした。先にも触れたようにギッター氏は最初に禅に親しんだこともあるのか、全体的に墨画に興味深い作品が多くあります。他にも蘆雪の「牛に童図」など、型にとらわれない自由な表現をとる絵画もコレクションの中核となっていました。

その自由な表現として挙げておきたいのが、ギッター氏のお気に入りの一枚、徴翁文徳の「龍虎図」です。しなるというより歪んだ竹の描写はもはやアニメのようで、名の知られない絵師でも面白ければ購入するという氏ならではの楽しい作品でした。

名の知れない点で私が注目したのはいわゆる作者不詳の作品です。ミニチュアのように連なる社殿が奈良絵本風な「熊野参詣曼荼羅図」の他、松林の力強い表現が桃山の息吹きを伝える「松に桜流水図」、そして上品な浮世絵美人が優雅に佇む「花見遊楽図」などには思わず足がとまってしまいました。魅力的な作品を前にすると名前など問題ではありません。


山本梅逸「四季草花図」 19世紀前半

大家の大作名画ではなく、知られざる絵師の意外な一枚を探すのがこの展覧会を楽しむ大きなポイントかもしれません。


中原南天棒 托鉢僧行列図」 1924年

ハイライトは白隠かもしれませんが、私は中原南天棒に軍配を挙げます。托鉢に行き来する禅僧を『分身の術』で描いた「托鉢僧行列図」にはにやりとさせられました。


谷文晃「山水図」 1828年

ニューオーリンズのギッター邸はハリケーン・カトリーナの被害を受け、日本美術の他に収集していたアフリカのアートが失われてしまいました。なお日本美術品に関してはごく一部を除き、被害を逃れたそうですが、会場ではそうした経緯やギッター氏のインタビューなどが映像で紹介されています。そちらも必見です。

「ニューオーリンズ ギッター・コレクション」展会場風景(千葉市美術館YouTubeチャンネル)

難しいことを抜きにして素直に楽しめる展覧会です。1月23日まで開催されています。
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