「セーヌの流れに沿って - 印象派と日本人画家たちの旅」 ブリヂストン美術館

ブリヂストン美術館中央区京橋1-10-1
「セーヌの流れに沿って - 印象派と日本人画家たちの旅」
10/30-12/23



セーヌ川の景色を主に印象派と同時代の日本人画家の作品で辿ります。ブリヂストン美術館で開催中の「セーヌの流れに沿って 印象派と日本人画家たちへの旅」へ行ってきました。

先だって府中市美術館で開催された「バルビゾン派」展と同様、ほぼ同じ時代の日本人と西洋人画家をあわせて見る展覧会です。ずばりテーマは印象派、セーヌ川ということで、19世紀末より20世紀中盤まで、彼の地を描いた印象派画家やエコール・ド・パリ、さらには日本人画家などの作品、約120点ほどが展示されていました。

展覧会の構成は以下の通りです。

第1章 セーヌ上流とロワン河畔
第2章 セーヌと都市風景
第3章 印象派揺籃の地を巡って
第4章 ジヴェルニーと芸術家村
第5章 セーヌ河口とノルマンディー海岸

上流からパリを挟んで下流、河口へと、セーヌ川の5つの地域別に作品が並んでいます。順に沿って見て行くと、絵画を通しての「セーヌ川下り」を楽しむことができました。


アルフレッド・シスレー「サン=マメス」 1885年 ひろしま美術館

全てはシスレーに始まります。冒頭には彼が上流のサンマメスを描いた3点の作品が豪華揃い踏みです。うっすらとサーモンピンクがかった空の下に寒木とセーヌがあわせ描かれた「サン・マメスの平原、2月」(1881年)や、同じく長閑な田園地帯を鳥瞰的に見据えた「サン=マメス」(1885年)など、いつものシスレーならではの温和な風景画(それでいて細部のタッチが神経質なほど丁寧に塗り込まれているのも興味いところですが。)が見る人をセーヌの川岸へと誘っていました。


石井柏亭「サン・ミシェル橋」 1923年 東京国立近代美術館

パリへ入ると風景も俄然華やぎます。ポン=ヌフの夜景と昼景を描いたマルケの2点をはじめ、端正なタッチでパリの都市を安定感のある構図で描いた石井柏亭の「サン・ミシェル橋」(1923年)などは印象に深い作品ではないでしょうか。ともかくマルケは川の水面の色合いがいつも絶品だけに、この展覧会でも強い魅力を放っていました。

ところでこの石井柏亭はじめ、お馴染み佐伯祐三や荻須高徳、さらには少し遡って浅井忠など、展示の主役の半分は日本人画家にありますが、その中でも私が特に気になった画家がいました。それが蕗谷虹児(ふきやこうじ)です。

「蕗谷虹児/河出書房新社」

彼は主に挿絵画家として活躍していたそうですが、「セエヌの別れ」(1934年)や「巴里哀唱」(1928年)などの雑誌挿絵には、どこか同時代の小林かいちの甘美な画風に通じるような良さが感じられます。今回の私の最大の収穫は他ならぬ彼の作品でした。


クロード・モネ「セーヌ河の朝 (ジヴェルニーのセーヌ河支流)」 1897年 ひろしま美術館

さてパリを離れ、下流のヴェトゥイユやジヴェルニーへ進むと半ばモネの独擅場です。展示では計12点なモネが紹介されていましたが、ともかく感心したのはその多様な画風における繊細なタッチと光や陰の移ろいでした。

睡蓮の2点の他、「セーヌ河の朝」(1897年)、そして海岸の崖の上を風に煽られながら歩く人を描く「サン=タドレス」(1867年)など惹かれた作品を挙げるとキリがありません。また西美でお馴染みの「雪のアルジャントゥイユ」(1875年)もここ八重洲に出張中です。湿り気を帯びた雪のどっしりとした質感を改めて味わいました。

最後の香月泰男の「エトルタ」(1974年)が一際異彩を放っています。べったりとした白い絵具で岸壁を洗う波が描かれ、どこか近寄り難い自然の荒々しさを感じさせていました。

ドンゲンの「シャンゼリゼ大通り」(1924-25年)の犬の可愛らしさといったら他にありません。この一枚にはぞっこんでした。

なお言うまでもなく今回はブリヂストン美術館の館蔵品展ではありません。共催のひろしま美術館(2011/1/3~2/27に巡回)の他、大阪のサントリーミュージアム、また大原美術館や村内美術館などより優品が集まっています。館内スペースの8割方を使っての大規模な展観となっていました。

12月23日まで開催されています。
コメント ( 2 ) | Trackback ( 0 )