「ラヴズ・ボディ - 生と性を巡る表現」 東京都写真美術館

東京都写真美術館目黒区三田1-13-3 恵比寿ガーデンプレイス内)
「ラヴズ・ボディ - 生と性を巡る表現」
10/2-12/5



エイズをめぐる社会的諸相を主に写真表現で問いただします。東京都写真美術館で開催中の「ラヴズ・ボディ - 生と性を巡る表現」へ行ってきました。

出品アーティストは以下の8名です。

AAブロンソン (1946- )/ハスラー・アキラ(張由紀夫 1969- )/フェリックス・ゴンザレス=トレス(1957-1996)/エルヴェ・ギベール(1955-1991)/スニル・グプタ (1953- )/ピーター・フジャー (1934-1987)/デヴィッド・ヴォイナロヴィッチ (1954-1992)/ウィリアム・ヤン (1943- )


ウィリアム・ヤン「独白劇(悲しみ)よりアラン」(1988-1990)

「エイズに向き合い、それを自身の問題として捉えていく」(ちらしより一部引用)ことはなかなか簡単ではありませんが、この展示に接してエイズに対する認識や思いがどこか変化したのは私だけではないかもしれません。そうした意味でダイレクトに心を揺さぶってきたのはオーストラリアの作家、ウィリアム・ヤンによる「独白劇(悲しみ)よりアラン」(1988-1990)でした。

これはエイズの病に冒されていく彼のゲイのパートナーを追った写真の連作ですが、そこには作家自身のテキストとともに、次第に症状を悪化させていくアランの姿がモノクロームで写し出されています。アランに対して作家が記した、「まるで老人のように見える。」という言葉が胸に突き刺さりました。

結局、エイズはアランに死をもたらし、ヤンもそれに眼を背けることなく向き合っていましたが、痩せ細りまた口を開けて永遠に眠るアランを見ていると思わずぐっとこみ上げるものがありました。


AAブロンソン「アンナとマーク、2001年2月3日」(2001-2002)

AAブロンソンの「アンナとマーク、2001年2月3日」(2001-2002)も、ゲイやレズビアンのカップルをテーマにした作品です。一見するところ、単なる赤ん坊を写したものにも思えますが、これはゲイカップルとレズビアンカップルの間に生まれた子どもです。

AA自身、エイズに関する様々な問題提起を行うグループに属していたそうですが、その仲間がエイズによって亡くなっていくという悲しい事態にも見舞われています。親子で受け継がれていく生の軌跡をフレームに収めた彼は、死を見つめたヤンとは言わば表裏一体との形で人の生きざまを表していました。

作品は必ずしもエイズを直接的に捉えたものだけにとどまりません。ちらし表紙を飾るデヴィッド・ヴォイナロヴィッチの「転げ落ちるバッファロー」(1988-1989)について述べた、出品作家のハスラー・アキラのインタビューはとても印象深いものがありました。これは必読です。

作家インタビュー ハスラー・アキラ/張由紀夫@東京都写真美術館


フェリックス・ゴンザレス=トレス「無題(自然史)」(1990)

12月5日まで開催されています。
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