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「町田久美 Snow Day」 西村画廊

西村画廊中央区日本橋2-10-8 日本橋日光ビル3階)
「町田久美 Snow Day」
7/1-8/2



幸いにも会期が丸々一ヶ月ほどあるので、毎週の画廊巡りの際にも何度か拝見しています。話題の展覧会、西村画廊での町田久美の個展へ行ってきました。

表題にも掲げられた「雪の日」(2008)が、やはりメインの一点なのでしょうか。やや分厚くも見えるジャケットかコートを着た性別不詳の人間が一人、テールランプのように赤い目を光らせ、あたかも頭皮の一部を剥ぐかの如く、その表面を胸ポケットへ仕舞う様が描かれています。ポケットのゆがみ、衣服のシワ、それに例えば親指の付け根で盛り上がった手の表現などが、線描と最低限の彩色というストイックな世界の中でも対象の肉感を確実に伝え、あたかも背筋の寒くなるような不気味な世界を作り上げていました。また町田本人が飼っていた犬の記憶を元にしたという犬小屋の「2」(2008)など、アイロニカルな近作とはまた異なった新しい世界も展開されています。とは言え、後頭部をにゅっと開いて目を示す「レンズ」(2007)を含めた、基調となるかのシュールな町田の世界は何ら失われることがありません。中でも強烈な印象を与えるのは、編み状の髪の毛を顔とともに真っ逆さまに垂らした「編み込み」でした。後頭部全体が、あたかも雑巾を絞るかのようにうねり出しています。もはや首から下がもげて落ちてしまいそうです。思わず仰け反ってしまいました。

詳細はこちらのブログを参照いただきたいのですが、幸いにも会場にて町田本人と少し話す機会を得ることが出来ました。その際、印象に残った点を二つほど挙げておきます。

・元々前もって頭の中にあるイメージをそのまま絵画に表すのではない。イメージが4次元としたら、絵はあくまでも2次元である。置き換えるのは難しい。
・いわゆる巷で言われるような、絵における『痛み』を意識したことは殆どない。

後者の『痛み』についての話は、率直なところ意外な気もしました。私が彼女の絵を見て、そのモチーフから痛みを感じるのは、ひょっとすると絵より離れた部分にある、単なる錯視的な空想の産物に過ぎないのかもしれません。確かに「ことほぎ」に見る、たまらないほどの温かさは『痛み』とは全く無縁の場所にあります。二人の深い絆がひしひしと伝わってくる作品です。

言うまでもありませんが現在、群馬の高崎市タワー美術館でも町田の個展が開催されています。(8月24日まで。)そちらもそろそろ見に行きたいです。

「アート・トップ 2008年7月号/芸術新聞社」

西村画廊の個展は2日までの開催です。
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