「ウィーン美術アカデミー名品展」 損保ジャパン東郷青児美術館

損保ジャパン東郷青児美術館新宿区西新宿1-26-1 損保ジャパン本社ビル42階)
「ヨーロッパ絵画の400年 - ウィーン美術アカデミー名品展 - 」
9/16-11/12



ウィーン美術アカデミーから、約400年にわたるヨーロッパ絵画の充実したコレクションがやってきました。クラナハ、ルーベンス、ファン・ダイクからレンブラント、そして何とクールベまでが展示されています。(全部で80点ほどです。)これぞ名品展のお手本とでも言えるような展覧会でした。



「初期板絵」として展示されていたクラナハも見応え十分ですが、私の好みはもう少し時代の下った「バロック」近辺にあるのかもしれません。ルーベンスでは、遠目から見るとまるでルノワールのタッチを思わせるような豊潤な裸体が美しい「三美神」(1620-24)が圧倒的です。その他、地球儀や磁器、それにタペストリーなどが驚くほど美しく描き分けられているブールの「地球儀とオウムのいる静物」(1658)や、二人の子どもが生き生きと目を合わすムリーリョの「サイコロ遊びをする少年たち」(1670-75)なども魅力的でした。サイコロ遊びからすぐに喧嘩にでも発展しそうな、子どもたちの真剣な眼差しが印象的です。遊びよりも博打を連想させます。



「オランダとイタリアの風景画」では、ホイエンの「帆船と閉経にラメケンス砦」(1655)や、ロイスダールの「川と小橋のある森の風景」(1670)が優れていました。ぷかぷかと海に浮かぶ帆船は冒険へのロマンを感じさせ、こじんまりとした里山の景色には郷愁を思わせる。透き通った川面で水と戯れた白鳥が一際輝いています。淡い光が大地を優しく照らしていました。



作品の収集にも力を入れていたというハプスブルク家の女帝、マリア・テレジアを描いた肖像画も忘れられません。(メイテンスの「女帝マリア・テレジアの肖像」。)胸を張り、顎を引いて、威厳に満ちた表情にて構えるマリア・テレジア。手前に差し出した左手は、ハプスブルク家最後の栄光を必至につなぎ止めようとしているかのようです。ちなみに、これが描かれた3年後の1762年、彼女は当時神童として売り出し中だった6歳のモーツァルトに謁見し、演奏を娘マリア(後のマリー・アントワネット)とともに聴きました。そしてその時モーツァルトは、大胆にも7歳のマリアに求婚をしてしまいます。有名なエピソードです。

総じて近代絵画以前の作品に見応えがありましたが、それ以降でも、ニーベルングの指環を題材とした天井画の下絵や、ファウストを捉えた作品なども印象的でした。ロマン派好きには見逃せない作品です。

ジュニア版ブックレット(300円)が充実していました。11月12日までの開催です。(10/15鑑賞)

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「ウィーン美術アカデミー名品展」 鑑賞会メモ
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