「年に一度の特別公開 横山大観『生々流転』後半」 東京国立近代美術館 12/17

東京国立近代美術館(千代田区北の丸公園)
「年に一度の特別公開 横山大観『生々流転』後半部分」
11/15~12/18(会期終了)

年に一度の、横山大観の「生々流転」の特別公開です。10月に出向いた前半部に引き続き、後半部分の展示を先日拝見してきました。

前半部分では、渓流から川へ至る「水の旅」の原初が、大観の精緻な筆によって巧みに描かれていましたが、今回の後半部分では、河から海へと流れ込んだ雄大なその旅路が、最後に現れる神話的な世界を伴って、実に圧倒的に表現されています。

始まりは一つの大河です。広い大地を濡らすように、大きく伸びやかに進む水のうねり。波は穏やかに表現され、空には一羽の白鷺が美しく舞います。長閑な田園とどっしり構えた河の道。いつしかそれは、波打ち際で一生懸命に漁をする人間に別れを告げて、全てを飲み込む巨大な海へと注ぎ込みました。徐々に暗くなって行く空。雲は黒みを帯びて、少しずつ渦を巻いていきます。もちろん波は高くなって、これまでに決して見せることがなかった、凶暴な姿を露出し始めました。あれ狂う大波と、地上へ襲いかかる空。海と空は激しくぶつかりあい、一つになろうとします。そしてついに龍の登場です。水の果てしない旅はここでひとまず地上から離れ、龍によって天へと駆けて行きました。その後に残ったのは「無」の世界でしょうか。真っ白で平穏な、そしてこれまでに描かれたものを、全て打ち消すかのような白。この描写は、前半部分の一番初めに見られた、山々の白い雲霞と重なってきます。「生々流転」。この作品にやはり終わりはないようです。

自然の美しい様を丹念に捉えた前半部分とは異なって、龍による天昇と言うような、自然と人知を超えた、この作品の主題を思わせる「物語」的描写が特に見所です。雲とも海ともつかない、クライマックスの真っ黒な巨大な渦。その鬼気迫る描写は、思わず背筋が寒くなるほどでした。年の瀬を飾るのに相応しいような大作です。おすすめしたいと思います。

*関連エントリ
「年に一度の特別公開 横山大観『生々流転』前半」 東京国立近代美術館 10/30
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