goo blog サービス終了のお知らせ 

Podium

news commentary

決闘ホワイトハウス

2025-03-02 01:22:21 | 国際

イギリスのスターマー首相が米ワシントンのホワイトハウの大統領執務室でトランプ米大統領と会談したのは2月27日。そのとき取材で大統領執務室にいた記者が、今でもゼレンスキー・ウクライナ大統領を「独裁者」だと思うかとトランプ大統領に質問した。翌日の28日にはゼレンスキー大統領がホワイトハウスに来て、トランプ大統領と会談、レアアースの共同開発について合意書に調印する運びになっていた。

記者からの質問に対してトランプ氏は「そんなことを言ったか? わたしがそんなことを言ったなんて信じられない。次の質問をどうぞ」(Did I say that? I can’t believe I said that. Next question.)としらばっくれた。

世界の政治指導者たちは、これほどまでに自分の言葉に重みを認めないアメリカ大統領と外交交渉をしなければならない。気の毒である。

28日のトランプ・ゼレンスキー会談は口論の末に決裂した。会談の冒頭から50分間に限ってホワイトハウスはテレビの実況中継を認めた。50分は長い時間である。今の世界を仕切っているのは米大統領のドナルド・トランプであることを全米の有権者に見せるために50分をかけたのである。トランプ大統領がプーチン大統領と組んで、ウクライナ抜きで急ぎ停戦交渉を始める。そのためにウクライナから委任を取り付ける。プーチン大統領を抱き込むことで、ロシアと中国と関係を希薄化させる。露骨な自己陶酔。そのような見方が世界に広がっている。ゼレンスキー大統領もそのことを気にしている。

ロシアに対する肩入れが強すぎると主張するゼレンスキー大統領への不快感もあって、バンス米副大統領が「平和と安定への道はおそらく外交だ」と横から両首脳の会談に割って入った。ゼレンスキー大統領は、2014年のクリミア侵攻に侵略に始まるロシアの外交に歴代の米国政権はきちんと対処してこなかったと反論した。これに怒ったバンス副大統領が失礼であると非難。けたたましい口論となった。ついにはトランプ大統領がゼレンスキー大統領を「第3次世界大戦をかけてギャンブルしている」(gambling with World War Three)と罵倒した。

上記のような、政治家たちの暗闘と武勇伝は、事件のほとぼりが冷めてから、側近が回顧録で、ジャーナリストがドキュメンタリーで、こもごも語る裏話である。それがいまや、白昼堂々テレビの実況で見られるようになった。よい時代になったのか、政治リーダーの品質がここまで劣化したのかと驚くか、それはあなたのご判断。

さて、トランプ大統領は就任早々、ラテンアメリカからの違法移住者を軍の航空機などを使って送還した。政権は合衆国にいる違法移住者のすべてを送還するような口ぶりだったが、トランプ政権発足後1ヵ月の送還者は、バイデン前大統領の就任後1ヵ月のそれより少なかった、と米のメディアが伝えた。それはさておき、送還する人々に手錠をかけていたニュースは、米国の粗野な文化の宣伝になった。

一方、トランプ政権は米国永住権とその後の市民権獲得に有利なゴールドカード・ビザを富裕層の外国人に販売すると発表した。値段は500万ドル(7億5000万円)。トランプ大統領が「お買い得だよ」(It's going to sell like crazy. It's a bargain.)と言った。
(2025.3.2 花崎泰雄)

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 由良の門を渡る舟人かぢをたえ | トップ | 金券政治家 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

サービス終了に伴い、10月1日にコメント投稿機能を終了させていただく予定です。

国際」カテゴリの最新記事