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Podium

news commentary

れいわ

2019-04-02 21:32:38 | Weblog

新聞の1面にでかい活字で「令和」とあった。新しく日本で使われる年号だという。「初春令月気淑風和」という大伴旅人の言葉が典拠となった。

優雅な言葉であるが、「令」と「和」を組み合わせた「令和」という熟語は見たことが無い。年号はめでたい言葉を2つ拾い出して組み合わせたものだから、その組み合わせがめでたいか、そうでないか、一概には言えない。

「令」は「令嬢」「令名」の「れい」だが、一方で、「命令」「律令」「軍令」「戒厳令」などの「れい」でもある。杜甫の「後出塞」という詩には、

 

   朝に東門の営に進み 暮に河陽の橋に上る
     落日大旗を照らし 馬鳴いて 風蕭蕭たり
    平沙万幕を列ね、部伍各々招かる
    中天に明月懸かり 令厳にして夜寂寥たり
    悲笳数声動き、壮士惨として驕らず
    借問す 大将は誰ぞ 恐らくは是れ 霍嫖姚ならん

  とある。「令厳にして夜寂寞たり」の「れい」でもある

 

「和」はやわらぐの意。めでたい言葉で老子も仏教も「和光同塵」を言う。「やはす」(和す)は、「やわらげる」と言う意味と「帰服させる」という意味もある。帰服は古くは「きぶく」と読んだ。降伏させて支配下に置くことである。大伴家持の歌に、

 

   久かたの天あまの門開き高千穂の岳に天降し
   天孫の神の御代より梔弓を手握り持たし
   真鹿児矢を手挟み添へて大久米のますら健男を
   先に立て靫取り負ほせ山川を岩根さくみて
   踏み通り国覓ぎしつつちはやぶる神を言向け
   まつろはぬ人をも和し掃き清め仕へまつりて
   蜻蛉島大和の国の橿原の畝傍の宮に
   宮柱太知り立てて天あめの下知らしめしける

とあり、「まつろはぬひとをも和し」とあるは、服従しない人を降伏させて支配下に置く、と言う意味である。英語の pacify に「鎮圧する」という意味があるのと同じである。かつてベトナム戦争で米国が “pacification” という言葉を使った。解放軍が根拠地にしていた農村地帯を制圧しようとするプログラムだった。

語義には多面性がある。年号に「言霊」があるかのような「敷島の大和の国は言霊のたすくる国そまさきくありこそ」など根っから信じない人にとっては、年号など無用の「符牒」にすぎない。

筆者は「れいわ」と言う音を聞いて「零和」の字を思い浮かべた。「零和」とは英語「ゼロ・サム(zero sum)」の日本語訳である。

(2019.4.2 花崎泰雄)

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ヘッドスカーフ

2019-03-18 09:22:35 | Weblog

クライストチャーチの2つのモスクで、白人による反移民・反イスラム主義者による銃撃で大勢のイスラム教徒の移民が殺された。人種間,宗教間の憎しみが平和なニュージーランドにまで及んだことに驚く。

アーダーン・ニュージーランド首相が黒いヘッドスカーフ、つまりイスラムのヘジャブを被り、黒の喪服姿で、被害者の家族やイスラム教徒のコミュニティーのメンバーを弔問に訪れた。日本のテレビもこの映像を流した。

アーダーン首相の黒いヘジャブには2つの意味がある。1つはイスラム教徒のコミュニティーに対する弔問である。ローター通信によると、被害者の親族が首相のヘジャブに大きな慰めを感じたと語った。

と同時に、白人至上主義者や反イスラム主義者によるテロリズムを、ニュージーランドでは2度と起こさせないという決意表明である。

トランプ米大統領がエルサレムの嘆きの壁で被ったユダヤの小さな帽子・ヤムルカや、安倍・日本首相がリオデジャネイロで着て見せたスーパーマリオのぬいぐるみなどとは全く違う真摯な政治的演出なのである。

 (2019.3.18 花崎泰雄)

 

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あらげる・あららげる・あらぶる

2019-03-11 00:58:21 | Weblog

昔々、全面講和か単独講和かをめぐって、日本国内の意見が分かれたとき、時の吉田茂首相が、全面講和を唱えた南原繁・東京大学総長を、、曲学阿世の徒と激しく非難したことがある。

憲法9条の下で日本が武力行使できるのは①我が国に対する急迫不正の侵害がある②これを排除するために他の適当な手段がない③必要最小限度の実力行使にとどまるべきこと――の3要件がみたされた時である、というのが最近まで内閣法制局の見解だった。

それが、安倍政権の新方針で①日本に対する武力攻撃が発生したこと、また日本と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより日本の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険があること②これを排除し、日本の存立を全うし、国民を守るために他に適当な手段がないこと③必要最小限度の実力行使にとどまるべきこと――の新3要件を合憲としたのが、横畠祐介長官率いる内閣法制局だった。

日本を取り巻く安全保障環境が変わったので、日本だけでなく日本と密接な関係にある他国への武力攻撃も、日本が憲法9条の下で武力攻撃に踏み切ることができる条件の1つに加えた。

その大転換の立役者である横畠内閣法制局長官が、さきの参院予算韻会で国会には内閣を監督する機能もあるが、「このような場で声を荒らげて発言するようなことまで含むとは考えておりません」と発言した。

その前段で質問者である小西洋之議員が、「安倍総理のように時間稼ぎをするような総理は、戦後1人もいませんでしたよ。国民と国会に対する冒とくですよ。聞かれたことだけを堂々と答えなさい。我々、国会議員は国民の代表として、議院内閣制のもとで質問しますので、私の質問は、安倍総理に対する監督行為なんですよ」と言ったことと対になっている。

国会は一強他弱で、運営は自民党が思うがまま。野党は首相べったりの法制局長官にまで侮られたと感じた。自民党内の1強である安倍首相の忠臣までもが首相気取りで野党議員を侮った。

そもそも憲法は国会の内閣に対する監督権を認めているが、「声を荒げてそれを行うことまでは含まれていない」と内閣法制局長官が参院予算委員会で公言したのである。発言を撤回し陳謝したので、「声を荒げてそれを行うことまでは含まれていない」という法制局長官の論理展開や判断の法的根拠については明らかにならないままにおわった。

このニュースをテレビは「横畠長官が、声を『あららげて』……」と伝えたが、参議院予算委の審議中継を見ると、“あらぶる”横畠長官は「あらげて」と発音している。「あららげて」が正調日本語、「あらげて」は流通はしているが、堅いことを言えば変調日本語。

 (2019.3.10 花崎泰雄)

 

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さびしい風景

2019-02-26 01:41:12 | Weblog

沖縄の米軍普天間飛行場移設のため名護市辺野古沿岸部を埋め立てていることに関して2月24日に行われた県民投票で反対票が圧倒的多数を占めた。

25日付朝日新聞によると玉城沖縄県知事は政府に対して「辺野古の埋め立てを決して認めないという断固たる民意を真正面から受け止め、『辺野古が唯一』という方針を見直し、工事を中止するとともに、普天間飛行場の一日も早い閉鎖・返還に向け、県との対話に応じるよう、強く求める」と記者団に述べた。

一方、日本国政府は投票の結果は真摯に受け止めるが、移設は先送りできない、という態度である。

安全保障を最優先に掲げる政府とその支持者、沖縄を踏み付けにするなと叫ぶ沖縄の人とその支持者のにらみ合いが続く。沖縄の米軍基地が日本の安全保障に、過去ソ連の脅威が声高に叫ばれた時代においてどれだけ有用であったか。もっぱら北朝鮮の軍事的脅威が叫ばれるいま、沖縄の米軍の存在がどの程度北朝鮮の脅威を払拭してくれているのか。これから議論が展開するといいのだが、いまの日本ではこんな議論は好まれないだろう。

同じ25日の朝日新聞朝刊の天声人語がドナルド・キーン氏の死を悼んだ。その中でこんなふうに書かれた部分がある。「親交の深かった作家の安部公房は『新大陸発見』のコロンブスにキーンさんを讃えてこう書いた。あいにく大陸ではなかったが、日本文学という未知の群島に辿り着いてしまった冒険家なのである」。「群島で見つけた魅力の数々を世界へ発信してくれた」。

10月の「コロンブス・デー」は合衆国の祝日だが、コロンブス以前からアメリカには先住民が住んでいたし、スカンジナビアからバイキングが渡って来ていた可能性がある。コロンブスがアメリカを発見したわけではないが、コロンブスの到来を機に、ヨーロッパ人が南北アメリカにやって来て植民地を築いた。その過程で南北アメリカ大陸に住んでいた1000万人の先住民が暮らしを奪われ、文化を破壊され、部族が絶滅寸前においこまれた。、アメリカン・センター・ジャパンのサイトの記事にあった。

その記事によると、アメリカでは、アメリカ先住民をはじめとする各団体が、コロンブスがアメリカ大陸を発見したという主張に異議を唱えたことで、「全米各地の学校では、コロンブス・デーのカリキュラムにアメリカ先住民に関する知識と、ヨーロッパ人との接触がアメリカ先住民に及ぼした影響についての知識が加えられるようになった。州によっては、この祝日に両方の名前を付けて、「コロンブス・デー/アメリカ先住民の日」と呼んでいるところもある。また、アメリカ先住民の日を別に設けている州もある。サウスダコタ州では、先住民を称えて、正式にコロンブス・デーの代わりにアメリカ先住民の日を祝うようになっている」。

安倍公房存命のころは、アメリカはコロンブスによって発見されたと多くの人が思い込んでいたのだろう。それにしても日本の文芸がドナルド・キーン氏によって発見されたとはさびしい話である。草津温泉はベルツによって発見され、アンコールワットは仏人アンリ・ムーオによって発見され、マチュピチュは米人ハイラム・ビンガムによって発見された、という言説と同じである。遅れた国は白人国家という太陽に照らされて輝く月のような存在であるというある種のオリエンタリズムを感じさせる。

 (2019.2.26  花崎泰雄)

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そうまでしないと……

2019-02-19 23:27:05 | Weblog

日本の安倍首相が私のためにノーベル平和賞の推薦文を書いてくれた、とトランプ米大統領が記者会見でしゃべった時のニュースを伝える日本の新聞に、次のようなコメントが紹介された。

「もし本当ならひどい話だ。でも、お世辞を受け入れることが証明されている人には、とても巧みなやり方だ」(元米国務省当局者)。

このコメントは含蓄に富んでいる。①トランプ氏のような人物をノーベル平和賞に推薦するとは、ひどい話だ②トランプ氏のようなお世辞を受け入れることが証明されている人には、とても巧みなやり方だ(が、これまたひどい話だ)。

世の中には実利第一主義者がいて、トランプがノーベル平和賞に値しないのは誰しもが感じるところだが、彼が値するかしないかよりも、彼のために推薦状を書くことによって、安倍氏がトランプ氏に貸を作り、米国との貿易協定にあたって手加減求める手がかりをつくったという効果はある、と評価する。

上記のような実利論は、まことに短期的なもので、次の選挙でトランプ氏が2期目を失うことになれば、アメリカ大統領への貸しはゼロとなり、日本の指導者はトランプ氏並に下品で、その言動には注意しなくてはならない、というマイナスの印象だけが次の大統領に引きつがれることになる。ブッシュ(父)は2期目の大統領選挙で、民主党のクリントンに敗北している。トランプ大統領に2期目があるとは限らないのだ。

最近の衆院予算委員会の質疑で、野党の議員が、最近の官庁の若手には上だけを見て見て仕事をする者が増えている、と嘆いてみせた。役人だけではなく、日本の会社でも平社員は係長・課長を、係長を課長を、課長は部長を、部長は重役を、とそれぞれが上司のご機嫌をうかがいながら仕事をしている。

民間会社では、無資格者が自動車の完成検査をし、アルミや銅などの品質データ改ざんをやった。

官庁では、森友学園問題、加計学園問題、厚生労働省の統計問題など、怪しげな事柄が国会で追及され、「記憶にございません」という言葉が何度も繰り返された。

文書の隠蔽、改竄、廃棄。役人の劣化から垣間見えるのが、下から上へ、人事権を持つ者への忖度、おべっか、追従である。

日本の政府の役所の頂点に座っているのが内閣総理大臣だから、彼はあらゆる忖度・おべっか・追従を一身に受けている。その日本国首相自らが、あからさまに追従を届ける先が米国大統領である。

そうまでしないと日本の首相は務まりませんか、と予算委で野党議員が嘆くような、いやみな発言をした。

そうまでしないと務まらないのではなく、ついつい発作的にそうなってしまうのである。日米戦争とその敗戦、戦後のGHQとマッカーサー、これらの記憶は世代を越えて、日本の権力の中核とその周辺にいる人たちに受け継がれ、いまや心的外傷後ストレス障害(PTSD)に似た日本支配層の持病になっているのである。

(2019.2.20  花崎泰雄)

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いい気なトウサン毛が3本

2019-02-07 01:28:23 | Weblog

すったもんだの末、やっと現地時間2月5日に行われたトランプ米大統領の2019年一般教書演説をホワイトハウスのサイトで読んだ。そのテキストの一節にこんなことが書いてあった。

「思い切った新外交の一環として、朝鮮半島で歴史的な平和攻勢を進めた。人質になっていた米国人は帰国し、核実験は停止となり、15か月間ミサイルの発射が無かった。もし私が合衆国大統領に選出されていなかったとしたら、私見では、我々はもっか北朝鮮と大戦争を行い、何百万人もの人々が死ぬ恐れがあっただろう(If I had not been elected President of the United States, we would right now, in my opinion, be in a major war with North Korea with potentially millions of people killed.)。なすべき仕事はなお多く残っているが、私とキム・ジョンウンの関係は良好だ。キム主席と私は2月27日と28日にベトナムで会うことになっている」

英語の仮定法の解釈は難しいが、多分、上記の発言は「私が大統領でよかった。北朝鮮と戦争しないですんだ」と言うのが本筋の意味なのだろう。逐語訳して「わたしが大統領に選出されていなかったら」とすると、先の大統領選の相手はヒラリー・クリントン氏だったので、「ヒラリー・クリントンが大統領になっていたら……」と同じ意味になる。

「もしヒラリー・クリントンが合衆国大統領に選ばれていたら、北朝鮮と戦争をはじめていただろう」という言説は、「もし」という仮定法で歴史フィクションを楽しむエンターテインメントに過ぎない。このことは皆さん、よくおわかりだと思う。つまり、ドナルド・トランプが大統領だっからこそ、北朝鮮との戦争が回避できた、という話もエンターテインメントに過ぎない。

この手の話は日曜日のゴルフコースで交わす与太話ならまだしも、連邦議会議事堂で披露すると、物語った当事者の知性を疑わせることになる。

アメリカのメディアはトランプ大統領の発言に関していまや「ファクトチェック」を行うのがならいになっている。『ニューヨーク・タイムズ』を見ると、いつものトランプ発言同様、一般教書演説についても「ウソ」「ミスリーディング」などの指摘が多かったが、「北朝鮮との戦争」のくだりについては「根拠なし」と判定している。その採点評。

「2016年のオバマ政権の終わりごろ、アメリカが北朝鮮と戦争を始めるような兆候はなかった。北朝鮮は核実験を続け、オバマ大統領は経済制裁を続行していた。トランプ氏は就任1年目に北朝鮮との緊張を増加させた。キム・ジョンウン氏をツイッターで攻撃した。北朝鮮の行為は激しい「怒りと炎」を招くことになろうと書いた。また、金氏を「ちびのロケットマン」と嘲った。当時、アナリストたちは米朝の戦争のリスクが高まったと見なした」

トランプ氏は北朝鮮を相手に、いわゆる危機の「マッチ・ポンプ」劇を人気浮揚のために自演し、そのことを連邦議会で自慢した。知恵の無い話である。その寸劇の決着を2月末、ベトナムで、どのようにつけるのだろう。

      (2019.2.7  花崎泰雄)

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訊いてない? じゃ、とばします

2019-02-01 21:38:43 | Weblog

前回のコラムで、1月30日の衆院本会議での代表質問風景を話題にした。質問者と答弁者がそれぞれ用意されたシナリオを読みあう緊張感の無さが本会議をかったるいものにしているという話だった。

そのシナリオ読み合いの緊張感の無さがもろに現れたのが、2月1日の参院本会議の代表質問のシーン。山本太郎議員(国民民主・新緑風)の質問演説への答弁に立った麻生太郎財務大臣が答弁書を読み上げた。

対外有償軍事援助について答弁書を読み上げ始めたが、しばらくして、「ん? 訊いてない、じゃ、とばします」と演壇の麻生財務大臣が議場の山本議員と問答。

時間の都合で山本議員がその項目を省略したらしいのだが、麻生財務大臣はそのことに気づかず用意されたシナリオの文言をそのまま読み上げようとした。

それにしても、ちょっと寛ぎ過ぎではあるまいか。そういえば麻生氏は山本氏の質問中、人を小馬鹿にしたような例の「麻生笑い」でニタニタしていた。人を笑わば穴二つ。

(2019.2.1  花崎泰雄)

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瞑想・瞑目・居眠り

2019-01-31 00:56:20 | Weblog

国会には睡魔が巣くっているのだろうか。

議事進行中に国会議員が居眠りをする姿はたびたび中継で映し出されてきた。議場での論戦より、場外交渉が得意なセンセイたちはつい睡眠不足になりがちだ。自動車や列車や航空機の運転手・運転士・操縦士の業務中の居眠りには目を三角にする国民も、国会でだらしなく居眠る議員たちを嘲笑しつつも許してきた。国の針路を決める重要な会議中のことなのだがね。

通常国会が始まった。1月30日午後、衆議院本会議場での代表質問のNHKの中継を見ていたら、玉木雄一郎・国民民主党代表の質問中、玉木氏を映していたNHKのカメラが切り替えられ、安倍晋三首相を映しだした。

瞑想していたのか、居眠りしていたのか、目を瞑っていた理由は本人に聞かなければわからないが、なんだかボンヤリとした安倍首相の表情だった。しかし、なんとなく殺気のようなものを感じたのか、彼は閉じていた目を開いた。するとNHKは映像を切り替えて玉木氏に戻した。

昼食後の時間帯は睡魔に襲われやすい。大学の講義でも午後の講義では居眠りする学生が多い。本会議場での代表質問と答弁はいってみれば芝居の脚本を読み合っているようなものだ。答弁する側は質問の内容と答弁の内容をあらかじめ知っているわけだから、逐一質問演説の声を追う必要はない。そういう安心感もあって、質問演説が子守唄のように聞こえるのかもしれない。メディアだけでなく世の中の多くの人も、そういう前提で国会中継を行い、また見ているのであるから、政治家たる者、間違っても議事進行中に瞑想したり、瞑目したりして、報道のカメラに焦点をあわせられるような事態は避けなければない。

筆者の記憶に間違いがなければ、2015年3月の、シンガポール元首相リー・クアンユー氏の国葬に参列した安倍晋三首相が式場で、黙祷だったのか瞑想だったのか、瞑目している姿をカメラで捉えられ、日本の安倍首相がリー・クアンユー氏の国葬で居眠った写真として世界に出回った。

日本人は地下鉄車内で瞑想や居眠りすることで有名だが、最近はスマホ操作に忙しく、居眠る姿が減ったような感じがする。瞑目したらスマホのディスプレーが読めない。

 

           (2019.1.31 花崎泰雄)

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あとがない職業

2019-01-16 16:06:11 | Weblog

日本の大相撲ではいったん横綱になってしまえば、あとは引退するしかない。成績不良なら大関や関脇に番付をさげて捲土重来、というわけにはいかない。相撲の番付も横綱以外はプロテニスの世界ランキングのように上がったり下がったりするが、横綱になると、降格したくてもそれはできない相談なのだ。

アメリカの大統領も憲法によって一生に2期8年しか務めることができない。バラク・オバマ前大統領はトランプ現大統領より若くまだ50代だが、若くして米国大統領を2期8年務めたので、もはや大統領になる機会はない。

日本の安倍首相はかつて首相在任中に参院選での大敗と体調不良を理由に政権を投げ出したことがあるが、再チャレンジを合言葉にまた首相に返り咲いた。

ロシアのプーチン大統領は大統領の任期が一杯になると大統領をやめて首相になり、憲法を変えてまた大統領になった。

中国では国家主席の任期を「2期10年」と決めていたが、2018年の全人代が憲法からこの条文を削除したことで、理論上、習主席の終身国家主席の道が開けた。

一般庶民の再チャレンジはOKだが、権力のヒエラルキーの頂上付近にたむろする人々の再チャレンジにはうんざりする。政治権力については「長きを以て貴し」としない。安倍政権下の森友問題、加計問題、官僚の忖度・へつらいなど、弊害が多い。

ソロンはアテナイの政治改革を終えると、さっさと10年間の旅に出て、アテナイを留守にした、とヘロドトスは『歴史』に書いている。

         (2019.1.16 花崎泰雄)

 

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レーダー照射

2019-01-01 00:36:03 | Weblog

日本の海上自衛隊のP-1哨戒機が2018年12月20日の午後、能登半島沖の海上で韓国海軍の駆逐艦から火器管制(FC)レーダーを照射された。日本の防衛相がこのことを公表したことで、日韓関係はさらに気まずくなっている。

FCレーダーの照射事件はときどき起きている。2013年には東シナ海で中国海軍のフリゲート艦が海上自衛隊の護衛艦にレーダーを照射したと、日本が中国に抗議したことがある。

2016年には、日本の自衛隊機が中国軍機にFCレーダーを照射したと、中国が日本を非難した。

レーダー照射ではないが、2014年5月に東シナ海で中国の戦闘機が日本の自衛隊戦闘機に30-50メートルの距離まで異常接近したという事件があった。古くは1988年のことだが、米軍の駆逐艦タワーズが海上保安庁の巡視船を標的に見立てて砲撃演習をした事件もあった。2018年9月には、南シナ海のスプラトリー諸島付近で中国軍の艦船が米軍艦に40メートルほどの近くまで異常接近していた、と米軍当局者が明らかにした。

軍と軍の荒っぽい火遊びは日常茶飯の事であるが、多くは隠密裏に処理され、メディアにのって表沙汰になることはめったにない、と考えられる。表沙汰になるのは、事件の公表が何らかの政治的効果をもたらすというヨミがある場合だ。

韓国の『東亜日報』は社説で、「強制徴用賠償判決などをめぐって韓日関係が深刻に冷え込んでいる状況で、日本側が韓国側の行動に『他意』があったように追及することは、安倍政府が韓日関係の悪化を国内の支持勢力の結集など政治的に利用しようとする他意があるという批判を招くことになる」と主張した。

同じく韓国の『朝鮮日報』も「水面下ですぐに事実を明らかにし、再発を防ぐことができる問題が、このように大ごとになっていること自体が、今回の問題の本質なのかもしれない。今、日本では韓国を友好国と見なさないという世論が高まっているそうだ。韓国政府の反日性向は周知の事実だ」と指摘した。

安倍政権は12月18日の閣議で、新しい「防衛計画の大綱」と中期防衛力整備計画を決定した。総額27兆円をかけて、防衛の範囲を宇宙やサイバー空間にまで広げる。さらに、中国の軍拡に対応して護衛艦「いずも」を事実上の空母に改装、艦載機にもなる最新鋭ステルス戦闘機F-35Bの導入も決めた。

F-35戦闘機については1兆円をかけて100機を米国から購入する予定である。これはトランプ米大統領におもねり、今後の日米通商交渉のさいはお手柔らかにという趣旨の買物、というのが大方の見方だ。

大風が吹けば桶屋がもうかる。アメリカを喜ばすF-35の大量購入には、さしあたって日本の国民や国会に対してその必要性と緊急性についてそれなりの説明が必要になる。中国・北朝鮮の脅威に加えて、竹島から遠く離れた地点で韓国艦が自衛隊機にレーダーを照射した事件は、日本海における脅威の高まりに韓国までもが加わったと国民に訴える格好の材料である。中国・北朝鮮・韓国の3ヵ国からの軍事脅威を利用すればF-35の導入がスムーズに進められる――アメリカ一辺倒の軍事マニアック・安倍政権がそう判断して、レーダー照射事件を国防上の重大問題として演出した可能性は否定できない。その代償は『朝鮮日報』のコラムがいう「日本では韓国を友好国と見なさないという世論が高まっているそうだ。韓国政府の反日性向は周知の事実だ」という現状のさらなる深刻化である。

(2019.1.1  花崎泰雄)

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Untitled Original 11386

2018-12-24 00:33:40 | Weblog

ジョン・コルトレーン(1926-1967)が死んで51年目の今年、彼が1963年にスタジオ録音したアルバムが発売された。おや、と驚き、CDを購入し、コルトレーン最盛期の音を懐かしんだ人が多かったに違いない。

Both Directions at Once: The Lost Album である。 コルトレーン畢生の名作とされる A Love Supreme の2年前の録音だ。1963年3月6日、ジョン・コルトレーン(サキソフォン)、マッコイ・タイナー(ピアノ)、ジミー・ギャリソン(ベース)、エルヴィン・ジョーンズ(ドラム)のカルテットがニュージャージーのルディー・ヴァン・ゲルダー・スタジオで収録した。

収録はしたもののあいにくとアルバムになって発売されることはなく、原盤はレコード会社・インパルスの倉庫に入れられ、やがて廃棄された――したがってザ・ロスト・アルバム。

1960年代の初めコルトレーンはすでに時代の最先端を走るモダン・ジャズの売れっ子プレーヤーだったが、レコード会社は「当面、売れ筋にはならないだろう」と判断したのかもしれない。

スタジオで録音ののち、ステレオ録音の原盤はレコード会社にわたされ、モノラルの録音テープがコルトレーンに手渡された。コルトレーンはそれを自宅に持ち帰った。1996年にコルトレーンは妻のフワニータ・ナイーマ・グラブスと離婚。録音テープは別れた妻が保管していた。

レコード会社のプロモーションもあって、このアルバムのリリースは米国ではニューヨーク・タイムズをはじめとする新聞の記事になった。日本でも朝日新聞が記事にした。その記事を読んで、私も半世紀を経て発見された幻の名盤を買い求めた。

コルトレーンの遺品はナイーマの死後、娘のサイーダが保管していたが、サイーダが遺品の一部をオークションに出そうとしたとき、インパルスを引き継いだヴァーヴの知るところとなった。

因縁話はこの程度にして、さて、アルバムの中身だが、正直なところ私はそれほど楽しめなかった。求道的な姿勢でアメリカのモダン・ジャズを聴いてきた人とちがって、私は気楽にジャズを聴いてきた。だから、基本的には、コルトレーンよりはソニー・ロリンズ、マイルス・デイビスよりはクリフォード・ブラウンのスタイルが好みだ。

とはいうものの、マイルスと組んでいた頃のコルトレーンは嫌いじゃなかった。1957年に発売された ‘Round About Midnight などのコルトレーンは、後年のコルトレーン節のはしりのような難解なフレーズをちらつかせたものの、全体としてメロディアスでのびのびとスィングしていた。

マイルスから離れて自分のコンボを持つようになってからは、常に新しい音を探求する修行僧のような、荒々しさと痛々しさが同居する演奏法を深めていった。コード奏法の束縛を遁れてモード奏法に移り、今度はモード奏法そのものを超える道を探った。その過程で、コルトレーンの音楽は実験的な音をさぐる現代音楽に変わっていった。犠牲になったのはジャズの居心地のよさだった。

半世紀ぶりにこの世に現れたアルバムBoth Directions At Once  を聴いていてすこしばかり楽しめた曲がこの小文のタイトル に使った ‘Untitled Original 11386’ だった。11386はインパルスの録音番号をそのまま曲名に代えたものである。

曲中で繰り返さえる短い旋律は、秋吉敏子のアルバム『ホープ』の中の、盆踊りソングに似た曲「広島節」の気分と共通のユーモアが感じられて面白かった。現代音楽家・ジョン・コルトレーンがアフリカの音に傾倒して作り上げたメロディーが、日本の盆踊り歌のそれと似ていたという偶然が楽しい。

 やあやあ、そしてまあまあ、とあちらこちらではなしにはなが

                   (小野フェラー雅美『とき』 短歌研究社)

 

(2018.12.24  花崎泰雄)

 

 

 

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富者と貧者と

2018-11-22 00:18:22 | Weblog

S&P500とよばれる米国の代表的企業の最高経営責任者と一般従業員の賃金の格差が2017年に361倍に広がった。米労働総同盟産別会議(AFL-CIO)によると1950年代には20倍程度だった。

米国は世界に冠たる強欲資本主義の国である。企業は消費者から金をむしり取り、経営責任者らは企業から金をむしり取る。

かつてのいわゆるリーマン・ショックの時の事を思い起こせばわかる。米国政府は危機にたちいたった大手保険会社AIGを国有化し多額の公的援助を与えた。そのさなか、AIGは幹部社員70人ほどが合計約170億円のボーナスを分け合った。再建のために新しくCEOに就任したエドワード・リディ氏の年収は1ドルだった。

米国では2017年から金融規制改革法で企業のCEOと一般従業員の年収の差を開示することが義務付けられた。イギリスでも従業員数250人以上の企業に役員と一般従業員の報酬額の公表を義務付ける予定だ。

日本では証券取引法が上場会社に営業・経理・事業の内容について記載した有価証券報告書を内閣総理大臣に提出することを求めている。報告書の中には役員報酬についての報告も含まれている。

目下話題のゴーン日産会長(11月21日現在)はこの報告書に自分の報酬額を偽って少なめに書いた容疑で逮捕された。

米国ほどあからさまではないが、日本でも役員と一般従業員の会社内給与格差が広がっているといわれる。企業の役員は従業員の賃金を抑制あるいは減額することで企業の利益を生み出し、そのことを自らの報酬を引き上げる理由にする。

トマ・ピケティの『21世紀の資本主義』によると、1950年代の米国の賃金格差はフランスより低い水準だった。トップ10パーセントの労働所得は総労働所得の25パーセントほどだった。それが2010年には35パーセントに上昇した。

2011年のウォール街占拠運動は所得格差やヘッジファンドやデリバティブといった非実体経済分野で荒稼ぎしている、頭は良いが心は貧しいグループのカジノ資本主義に対抗するモラル・エコノミーの側の異議申し立てだった。興味深く見ていたのだが、長続きはしなかった。

ゴーン事件に関して、頭の良い会社経営者の強欲、日産とルノーのせめぎ合い、ゴーン会長に対する西川社長のクーデターといった話題もさることながら、これを機に日本における公正な所得分配のあり方についての議論へ発展すると面白いと思う。銀行系シンクタンクのエコノミストのどうすりゃ儲かる論ではなく、見栄えのしない道学者風の経済論を聴きたいものだ。

 (2018.11.21  花崎泰雄)

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あとは野となれ……

2018-10-31 00:55:48 | Weblog

トランプ米大統領は就任するや否な、TPPからの離脱を宣言した。気候変動枠組パリ協定からも離脱した。古い友人である欧州に背を向ける外交姿勢をとった。北の国境で接するカナダと南の国境で接するメキシコと意味のない摩擦を起こした。北朝鮮のキム・ジョンウン委員長とシンガポールであった。中国と貿易戦争を始めた。これらは中間選挙に間に合うような見栄えのする結果は生まなかった。

それではと、ホンデュラスから数千人の人々がキャラバンを組んで徒歩でメキシコ国内を縦断し、米国国境を目指していると騒ぎ出した。ペンタゴンに5000人ほどの兵隊を国境に送るよう指示した。軍隊の米国内派遣に関しては賛否両論があるらしいが、ここはひとまずおく。

米国内のメディアが面白がって(というか、愚劣の極みとして)報道しているのは、トランプ支持者には、米国を目指すキャラバンは、民主党寄りの投資家ジョージ・ソロス氏が資金を出して組織したものだと信じている人が少なくない点である。ソロス氏やオバマ前大統領にパイプ爆弾が送りつけられた。

トランプ大統領自身もツイッターに「ギャングや、たちの悪い奴らがキャラバンに紛れ込んでいる」と書いた。CIAの情報というよりは、彼の妄想ないし意図的なフェイクだろう。CIA情報ならとっくにメディアにリークされている。

アメリカの中間選挙の投票日(11月6日)まで1週間となった今日、米国の新聞(日本の新聞もそうだが)アメリカ合衆国の国籍出生地主義をやめさせるためトランプ大統領が行政令を準備しているといっせいに報じた。

トランプ大統領はこう語った。

 “We’re the only country in the world where a person comes in and has a baby, and the baby is essentially a citizen of the United States for 85 years, with all of those benefits……It’s ridiculous. It’s ridiculous. And it has to end.”

例によってこれまた大統領のフェイクである。でなければ、大した認識不足である。

北の隣国・カナダも南の隣国・メキシコも国籍については出生地主義を採用している。

くわえて、合衆国憲法修正14条は次のように定めている。

All persons born or naturalized in the United States, and subject to the jurisdiction thereof, are citizens of the United States and of the state wherein they reside.

同じころ、キリスト教民主同盟の党首を辞任すると表明し、首相の職務も2021年を限りと語ったドイツのメルケル首相に対して、ニューヨーク・タイムズ紙の論説委員室が次の言葉を贈った。

Compassionate when hearts grew cold, committed to unity when others abandoned it.

トランプの対極にあったメルケルが眩しかったのであろう。

 

(2018.10.31  花崎泰雄)

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社会主義アメリカ

2018-10-14 23:09:43 | Weblog

 筆者がまだ若かったころ、米国の大学・大学院に留学する日本人学生は胸部レントゲン撮影のフィルムを大学当局に提出するよう求められた。

「アメリカは結核を怖がっているんだ。それと社会主義とね。蔓延すると大変だから」

米国通がそう教えてくれた。

米国にも共産党や社会党があり、中国にも共産党以外の政党があるが、それらは同時に無いに等しい。政党活動の自由を認めているというアリバイのために存在しているだけだ。

先の米国大統領予備選挙で、バーニー・サンダース上院議員が民主党の候補者選び名乗りを上げて、一気に支持者を増やしていったことはまだ記憶に新しい。

サンダース氏は予備選挙中に自らを社会主義者と称することはしなかった。一般のアメリカ人は社会主義という言葉を聞くと、独裁者、強制労働キャンプ、言論の自由の欠如などを連想するからという理由だった。

その代り彼は「政治的民主主義」や「平等」という信念があるのなら、「経済的民主主義」もまたあるべきである、という言い方をした。著書の中で「ビル・クリントンは中庸な民主主義者。私は民主社会主義者」と書いた。また、「20年前には社会主義というとソ連やアルバニアを連想した。いまではスカンディナヴィア諸国を連想する」と2006年に新聞のインタビューで語った。「中間層が減り続け、労働者の所得がトップ1パーセントの超富裕層の懐に流れ込んでいる。中間層の富も同じことだ。何兆ドルもの富が過去30年の間に、中間層から富裕層に吸いあげられた。これは正しいことだろうか?」

サンダース氏は民主党の大統領候補者にはなれなかったが、強い印象を残した。

さて、中間選挙を前にトランプ米大統領は最近、「中道的な民主党は死んでしまった。いまの民主党は過激な社会主義者で、アメリカの経済をヴェネズエラのようにしようとしている。若し民主党が11月の中間選挙で議会多数派になったら、アメリカは危険なまでに社会主義に近づくことになろう」とUSA Today紙に書いた。

「社会主義」という言葉で、民主党の足を引っ張ろうという作戦だ。

それにしても、いつもツイッターに書いているような粗雑な思考と文章を、日刊紙にのせる米大統領の頭の中も不思議だ。民主党に社会主義というラベルを張り付ければ共和党支持者増につながると、本気で信じているのだろうか。合衆国市民の頭の中はそれほど空疎なのだろうか。日本に対して戦後民主主義を教えたアメリカと今のアメリカははたして同じ国なのだろうかと、一瞬、めまいがする。

   (2018.10.14  花崎泰雄)

 

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運がいいのか悪いのか

2018-10-03 20:37:07 | Weblog

沖縄県知事選の投開票日の9月30日、本州のメディアは台風24号のニュースにかかりきりだった。沖縄知事選で安倍政権が支援した候補が敗れ、安倍政治のほころびが見えたが、メディアはそのほころびを取り上げて詳しく分析する暇がなかった。あるいは、分析や知事選論評が、沖縄以外では台風ニュースほどには関心を持たれていないと判断したのかもしれない。

すこし待てば沖縄問題の突っ込んだ分析が出るかもしれないと期待していたが、今度は京都大学の本庶佑特別教授のノーベル賞受賞のニュースが飛び込んできた。テレビも新聞も報道は本庶だらけになった。

それにしても、日本の人はノーベル賞が好きだ。ノーベル賞が人の栄誉の最高基準だと勘違いしている。それが証拠にノーベル賞を受賞するとすぐさま文化勲章がでる。本庶氏はすでに文化勲章をもらっているので、再度もらうことはないだろう。ノーベル賞は北欧のどこかの町の選考委員会が選ぶのではなく、全知全能の神様が裁定するかのごとき幸せな誤解をしている。ノーベル賞文学賞が今年出せなくなったのは、選考委員会内部の人間臭に満ちたスキャンダルが原因である。

ついでの感想は、日本のメディアはガラパゴス・メディアであるということだ。今年のノーベル医学生理学賞は本庶氏とともに米国・米テキサス大のジェームズ・アリソン教授が受賞しているが、アリソン教授の業績をきちんと紹介した日本のメディアは少なかった。

日本人にとっては科学的業績の内容よりも、ノーベル賞をとったのが日本人である事のほうが大事で、それだけで十分である、とメディアが考えているからだ。

英国・BBCのサイトでこのニュースを読んだが、本庶・アリソン両氏の業績に関しては公平に業績を紹介していた。イギリス人の受賞者がいないからだ、と反論があるだろう。

ニューヨーク・タイムズ紙の電子版を開くと、そこでもアリソン氏と本庶氏の仕事が公平に紹介されていた。アリソン氏が主で、本庶氏が添え物という感じは全くない。それは、アメリカ人はしょっちゅうノーベル賞を受賞しているからだ、という反論があろう。確かに……。

これでまた、沖縄問題の深層にせまる解説記事にお目にかかる機会が先延ばしになった。

それから今度は、自民党役員人事と内閣改造だ。日本の国会議員の目標は大臣になることである。したがって内閣改造は与党議員の定期異動である。大臣は変わるが役所は変わらない。

あれやこれやで、知事選後の沖縄についての本格的な分析記事はまだ出ていない。

「しょうがないね」と沖縄知事選の敗北の感想を語った安倍晋三首相にとっては、ここ数日のニュースは干天の慈雨だろうが、沖縄の人々にとっては、沖縄の人々の政治選択の意味が沖縄以外の人々にきちんと伝わらいという意味で、運の悪い数日だった。

          (2018.10.3 花崎泰雄)

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