日日是好日

退職後の日々を写真で記録

野口英世はなぜ間違ったのか(24)

2013-09-29 13:31:45 | 野口英世
野口は「黄熱病の病因学」のタイトルでシリーズの論文を発表してきたが、今回はその最後の論文「黄熱病の病因学 第14報 動物への皮下接種後の抗icteroides免疫血清の防御効果の持続(1922年3月11日受付)」である。



論文の要約

ワクチン接種したのにもかかわらず黄熱病に罹った非免疫の人の症例記録を分析すると、ワクチン接種後まもなくにその病気の発症が起きている。その最も長い期間は
13日であった。黄熱病の平均潜伏期は6日であるので、いくつかの症例で防御が進みつつある間にその感染が起きたのであろう。
これらの症例は抗icteroides 血清の方法による即効の防御の可能性の研究に導いた。免疫血清は実験的icteroides感染において、直ちに防ぐことは既に示した。しかし、その防御はどれくらい長く続くかは分かっていない。
モルモットに免疫血清の種々の量を投与し、続いてLeptospira icteroides の有毒株で種々の間隔で感染させた。
5日間持続する完全な防御は、体重1000g当たり血清0.002ccの少量で得られた。
しかし、5日後、免疫物質は急速に減少した。
そして、動物を10日間防御するには100倍の量、すなわち0.2ccを投与する必要があった。
80kgの人のためには0.16cc(0.002×80)が理論上少なくとも5日間防御するのに必要になる。7日間では1.6cc、10日間では16ccである。
ワクチンの最終効果は少なくとも9~10日過ぎるまで期待できないので、この一時的な防御はワクチンが供給されるまでの有用な先行方法である。(以上)


これまで野口のワイル病レプトスピラと黄熱病に関する論文を見てきた。
黄熱病の論文の中で、野口はその原因はレプトスピラであるとし、それにLeptospira
icteroides
と命名する大きな間違いを犯してしまった。
そのため結果的には彼の黄熱病に関する論文の殆どがワイル病に関するものになってしまっている。
それではなぜそのような間違いを犯したのか少し考察してみたい。
1.黄熱病とワイル病の症状が似ている。両疾病とも黄疸と出血を主症状とすることから、診断が十分になされない患者を研究対象にしてしまった。
野口はワイル病及び黄熱病の両方の臨床経験がなく、その区別が出来なかったと思われる。研究対象の黄熱病患者を選別したのは野口ではなく共同研究者の臨床医たちであったであろうが、彼らはワイル病の臨床経験がなく、黄疸と出血があれば黄熱病と診断した可能性がある。また当時、現地では環境状態も悪く二つ三つの病気を持っている人も多く、ワイル病と黄熱病の両方に感染していた可能性もある。
2.黄熱病のシマ蚊による媒介の証明実験が不十分であった。ワイル病と黄熱病の違いの一つは、黄熱病は蚊によって媒介されることである。ワイル病の病原体を発見した稲田らも言っているようにワイル病は蚊によって媒介されることはない。従って蚊によって媒介されることを証明することは非常に重要である。
しかし、以前にも記したように、野口の蚊を用いた実験は非常に雑な実験である。本当かを思われる記述もある。Leptospira icteroides を接種したモルモットを刺した蚊の体内にレプトスピラが暗視野顕微鏡で観察されたとかその蚊が刺した別のモルモットの腎臓中にレプトスピラが観察されたとあるが、なせそれを培養しなかったのであろうか。培養してそれが接種したLeptospira icteroides と同じものであることを免疫血清を用いて証明すべきであったにもかかわらず、それを行っていない。敢えて行わなかったのではないだろうか。微生物の狩人として当然コッホの原則は知っていただろうに。
3.黄熱病の病因は濾過性であることが当時知られていた。現在ではそれはウイルスであることを我々は知っている。従ってそれは当然濾過器を通過する。
一方、ワイル病の病原体であるレプトスピラも悪いことに濾過性なのである。レプトスピラは一般の細菌の大きさの5倍以上であるのにもかかわらずラセン状であるためか濾過器を通過するのである。レプトスピラの濾過性を確認した野口はこれが黄熱病の病原体であるとの確信を強くしたに違いない。

今後は野口の関連論文、書簡などを調べて行きたい。
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野口英世はなぜ間違ったのか(23)

2013-09-27 13:07:25 | 野口英世
当時、、黄熱病患者の心臓の速さが遅くなる傾向があることが知られていた。
今回示す論文「黄熱病の病因学 第13報 Leptospira icteroidesLeptospira icterohaemorrhagiae でのモルモット及びサルの実験的感染における心臓の動き(1921年3月9日受付)」ではレプトスピラで感染させた動物で心臓の脈拍や行動について観察した。



記録は電気的心音描写器でとられた。

論文の結論

1.Leptospira icteroides による実験的感染の高熱期中にサルとモルモットに心臓の脈拍低下が起きた。似た反応が Leptospira icterohaemorrhagiae を接種した動物に起きた。
2.低下のメカニズムは通常全心臓の低下によるものであった。
3.一度不完全なハートブロックが見られた。心電図の心室の収縮を示す波における変化が4回起きた。(以上)


野口は黄熱病の病原体としてLeptospira icteroidesを報告し、それを用いて動物実験を繰り返しているが、これらはワイル病の実験に置き換えることで、彼の論文の意義は出てくるかもしれない。
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彼岸花

2013-09-25 15:12:36 | 日記

平成25年9月23日(月・祝)晴れ

 お彼岸の墓参りに出かけた。私の父の墓は網走にあるので、出かけたのは家内の両親のお墓である。そのお墓は仁箇の万福寺の芭蕉ケ丘霊園にある。

 

お墓は小高い丘の上にあり、そこからは弥彦山が見える。お参りを済ませて丘を下ってくると赤い彼岸花が道の傍らに咲いていた。

お寺の山門を出るとコスモスも咲いていた。

「暑さ寒さも彼岸まで」とは言うが、この日も暑い一日だった。

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野口英世はなぜ間違ったのか(22)

2013-09-23 21:10:00 | 野口英世
野口は黄熱病の治療に血清療法だけではなく化学療法についても研究している。しかし、これらは全て黄熱病ではなくワイル病に対するものである。
今回の論文「黄熱病の病因学 12報 Leptospira icteroides による実験的感染における化学療法対血清療法(1920年4月3日受付)」は主に化学療法について実験したものである。



論文の要旨と結論

実験の幾つかのシリーズにおいて、Leptospira icteroides の培養液、感染モルモットの臓器エマルジョンまたは両方の混合したものの各種量でモルモットを感染させた。(略)動物の腹腔内に接種した。そして約30分以内に、サルバルサン又はネオサルバルサンの異なる量を動物の皮下に接種した。接種した量は体重350~450g当たり、0.0005、0.001、0.002、0.005、0.01、0.02、0.03gであった。一つのシリーズでは、この量に加えて0.00005、0.0001、0.0002gも試みた。
サルバルサン又はネオサルバルサンのどちらかで処置されたモルモットは対照のモルモットより回復した。しかし、それらは接種した薬物の量の正確な比率ではなかった。
感染物質の50最小致死量での実験において、0.001、0.002、0.003gを受けたものの中でいくつかは回復した。しかし全てがその全ての症状を伴った典型的な感染を経過した。それでサルバルサン又はネオサルバルサンがその感染の厳しさを軽減したかどうかは非常に疑わしい。実験の同じシリーズにおいて、0.00005と0.0001を受けたモルモットは、6~7日で死亡した対照より早く、1~2日で死亡した事実は注目すべきである。これは、この薬物によって腎臓にレプトスピラをより容易により早く接近させ集中し、この臓器のより早い損傷の可能性を示唆している。
モルモットの実験的icteroides感染において、サルバルサンとネオサルバルサンの無効又は疑わしい治療価値はLeptospira icterohaemorrhagiae で何人かの研究者により既になされた観察に非常に似ている。
サルバルサンの1:10000又はネオサルバルサンの1:1000より低い濃度において少なくとも1時間、レプトスピラは動いていることが分かった。しかし、それらは徐々に動きが鈍くなり、18~24時間後、その薬物の効果に屈した。
培養液に加えたとき、サルバルサンとネオサルバルサンの両方とも培地中の濃度が1:200、000のときicteroidesの生育を抑えた。それで、これらの二つの薬物はLeptospira icteroidesに非常に毒性がある。
採血一時間前に体重kg当たりサルバルサン又はネオサルバルサンの0.05gを受けたウサギ由来の血清はLeptospira icteroides に対する動きが正常ウサギ血清と非常に異なることが分かった。サルバルサン又はネオサルバルサン血清中で、レプトスピラは少なくとも1時間活動的であった。しかし18時間後では少し動きが鈍くなり、48時間後に調べたとき、全てが死んでいた。一方、正常ウサギ血清と混ぜたレプトスピラは良く生きていた。(略)
別の実験でサルバルサンとネオサルバルサン血清は対照としての正常血清と共に最初72時間静置した。その後Leptospira icteroides の良く増殖した培養液を加えた。微生物は全ての血清中で1時間影響を受けないままであった。しかし24時間後、薬物血清中の微生物の多くは死亡した。そして48時間後、生き残ったものはなかった。正常血清中では、微生物は確実に増殖した。そして全てが活動的であった。
ウサギの体に静脈から入れられたサルバルサン又はネオサルバルサンは1時間後に採血した血清中に何らかの形で存在しているのは明らかである。そのような血清中に存在する物質はLeptospira icteroides にゆっくりと働く有害効果を持っている。これらの薬物の作用は動物の体を通過する前より後の方がゆっくりしているように見える。もしこの現象がこれらの薬物を接種された感染体中にも起きるとすると黄熱病のような急速に進む感染症において感染の進展はこの病気のコースにこの薬物に有益な効果を発揮させるであろう。
in vivo と in vitroのサルバルサンとネオサルバルサンの動きの直接な対照として免疫馬血清の0.0001cc又は1:10000希釈液の1ccはicteroides少なくとも5000最小致死量を同時に接種されたとき、感染からモルモットを阻止した。しかし同じ血清は1:2000より弱い濃度においてin vitroで混合されたとき、その微生物に対して有害な効果を発揮するのに失敗した。1:20の濃度で急速に崩壊し、殆ど完全に凝集した。1:200で退化した。
サルバルサンとネオサルバルサンで行われた化学療法と免疫血清で示された血清療法との間の対比は見たところかなりの実用的意義がある。(以上)


先に記したように、これらの化学療法の実験は、結果的には黄熱病ではなくワイル病に対するものである。ワイル病に対する化学療法の実験は稲田らがワイル病の病原体としてレプトスピラを発見した当時に既に行われている。血清療法についても同様であるので、今回の野口の実験は稲田らの追試に他ならない。
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ハマナスの実

2013-09-18 15:53:44 | 日記
ハマナスの実
9月11日 曇り時々小雨今年の初夏にはハマナスが例年になく長期間にわたって多くの花を咲かせた。その後花は終わり、実を付けるかと思われたが、今年も実を付けなかった。そして、...


平成25年9月11日(水)晴れ

昨年はハマナスの花は長期間にわたって咲いたが実を付けなかった。
今年も花は一度終わったかと思ったが、また蕾が出てきて咲くのを繰り返した。そして久しぶりに実を付けた。以前よりも赤が強いようだ。



しかも蕾まで出てきた。



そしてアマガエルが体の色を変えてハマナスの葉の上にいた。



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