呉明憲コンサルタントの中国ビジネス日記

中国の最新情報を上海・東京・神戸を拠点に活動する株式会社TNCリサーチ&コンサルティングの呉明憲が紹介します。

GAPが中国にやってくる

2010年06月30日 | 日記
 中国では既にZARAやH&M、その他にもユニクロやC&Aといったアパレル小売業が進出しているが、いずれも店内は大変な賑わいだ。そんな中、遅ればせながらGAPが中国に進出することになった。北京では王府井と朝陽大悦城に、上海では南京西路と淮海路で店舗の開設準備中である。他社と比べると時期が遅かったことは否めないが、GAPグレーターチャイナの楊総裁は既に2年の時間をかけて中国市場を考察しており、十分に自信を感じた上での進出という。GAPはあわてて中国の二線都市に進出するようなことはせず、二線都市へは最初に開店する四店舗が安定して2-3年後に進出することにしている。

 開店準備に当たりGAPは店長を中国で募集している。そして、その店長をアメリカへ派遣して研修し、アメリカの店長との関係を構築させる。その後アメリカの店長ともども一緒に中国に戻り、一緒に中国で6-12ヶ月ほど一緒に働いたうえで、中国の店長が十分やっていけるとなった時点でアメリカの店長は引き上げる。中国人店長はアメリカでの堅守でノウハウを習得することができるのはもちろんだが、アメリカの店長もまた中国での交流経験をアメリカに持ち帰ることができる。よく欧米系企業は最初の仕組みづくりというミッションを終えれば駐在員は帰国するという話を聞くが、これなんかまさにそのとおりだろう。

 GAPはEコマースの活用もあわせて開始を予定しており、既に上海奕尚網絡信息有限公司と提携を行うとしている。同社のウェブサイトは奕尚網(sasacity.com)で、このサイトでネットショッピングを行っていくことになる。

 
(左上の方を見るとさりげなくハニーズの商品がラインナップされていることがわかる)

 GAPの中国店舗は開店手続きを終えており、内装の進捗状況に応じて開店時期が決まるそうだ。プロモーションは既に開始している。アパレル小売業の役者がどんどん進出しており、競争はますます激化していく一方だ。

外商独資企業の破産申請

2010年06月29日 | 日記
 無錫で外商独資企業の破産申請が相次いでいるという。江蘇省無錫市濱湖区の法院(裁判所)によると、今年の5月あたりから3社の外商独資企業の破産申請があったという。新破産法が2007年6月から施行されているとはいえ、外商独資企業が破産申請するケースはあまり聞かれず、しかも3件も立て続けに申請が出されたのは異常値といえる。

 それもあり、裁判所は調査を行ったのだが、それによると、これらの企業は資産が少なく、土地は賃借で、そして破産後の従業員や資産の処理についてなんらないまま破産申請を提出しており、基本的には司法手順を利用して債務逃れを図ろうとしているものといえる。濱湖区裁判所では今のところこの3件の破産申請を受理していない。

 この3社の外商独資企業は、その債務が小さいところで500万元、大きいところで3000万元あり、共通点としては土地、工場建物が賃借で、基本的には資産が少なく、せいぜい一部の生産設備やラインを持っているだけで、しかもその多くが抵当に入っている。また、破産後の従業員の取り扱いに関する計画についてもほうったらかし、外商独資企業であるがゆえに、法人代表が国外にいたりして、裁判所も本人と会うことができず困っているという。

 裁判所が破産申請を受理しないことに対抗してか、企業側はその責任を政府側に押しつけようとしており、具体的には債権者や従業員をあおって政府に対して騒がせたりしているという。報道では外商独資企業とだけあり、どこの国の企業かわからないが、現象面から見るとかなり意図的な感じがする。

 わずか3社に過ぎないが、外資系でもこのような不義理をする企業もあることから、外資系だからといってその債権管理を甘く見てはならないといえるだろう。

新疆に対する投資促進政策

2010年06月28日 | 日記
 国家工商行政管理局より《新疆の飛躍的発展及び長期安定のサービスを支持することの若干意見》というものが公布された。要するに新疆への投資を促すような内容になっており、ここでは外資向けの部分を抜き出して紹介する。

1.登記認可権
 外商投資企業の登記認可権を新疆ウイグル自治区の条件に符合する地(市、州)の工商局及び国家級経済技術開発区の工商分局に授権する。

2.名称認可
 新疆ウイグル自治区工商局が“国家工商総局総合業務システム”を通じて、名称に“(中国)”を使用する及び行政区画を冠しない外商投資企業名称变更の受理権を行使することを支持する。

3.投資誘致
 積極的に外資が様々な形式で新疆で工場を投資設立し、業務を開拓展開することを支持し、絶えず外資が新疆の農業、ハイテク産業、サービス業の発展建設に参与することを支持する。

4.広告業
(1)設立且つ運営して3年以上の、広告業務の経営を主とする外国企業が、法に依って外商独資広告企業を設立することができる。
(2)設立且つ運営して2年以上の、広告業務を経営しそして広告業績を有する外国企業は、法に依って中外合弁広告企業を設立することができる。
(3)外国投資者は国内広告企業の一部の出資持分を購入して中外合弁広告企業を興すことができ、国内広告企業の全持分を購入して外資広告企業を興すことができる。

というように、新疆への投資を目的としたものとなっている。ただ、政治的にやや不安定な地域である点が悩ましいところだ。

 新疆といえば、弊社社員が昨年年末から今年年始にかけて視察に行っている。今回の通達では投資対象が色んな業種に及んでいるようだが、そのときの視察対象は農業に集中している。この視察レポートもあわせて読んでいただいて参考にしていただきたい。

新疆ウイグル自治区農業・産業視察 ~その1~

新疆ウイグル自治区農業・産業視察 ~その2~

新疆ウイグル自治区農業・産業視察 ~その3~

新疆ウイグル自治区農業・産業視察 ~その4~

新疆ウイグル自治区農業・産業視察 ~最終編~

Viva!東方航空!

2010年06月27日 | 日記
 先週全く更新をしなかったが、その間日本に出張していた。あれやこれやとやることがあり、なかなか更新できなかったのだ。

 さて、今回の出張では東方航空に搭乗した。前回搭乗したときは予定時刻より大幅に遅れるといういやな思いをしたのだが、出発時刻の関係上やむを得ず東方航空に搭乗することにした。そして、お約束どおりディレイとなり、1時間ほど送れて飛行機に乗ることになった。ところがなかなか出発しない。「管制塔の指示を待っている」とのことだが、成田空港で管制塔の許可なしで着陸したのは中国国際航空だが(その後話題になっていないようだが)、同じ国の飛行機なんだからそれくらいやってみろなんて思っているうちに、今度は機内食が出てきた。機内食が出た時点でこれは長丁場になると思った。たいしたボリュームでもないので早々に食べ終わり、することもないので持っていた本を読み始めた。4分の1くらいの人がまだ食べ終わっていなかっただろうか、そんな状態の中、「離陸します。いすとテーブルを元の位置に戻してください」って、えええええええええ???機内食食べ終わってないので片付けられるわけがないではないかあああ!。そうして、テーブルの上に機内食がのっかったまま飛行機は離陸したのであった。隣の人のテーブルにまだ機内食があり、こぼれてこないかひやひやした。しかし、テーブルの上に機内食がのっかったまま離陸するとは、さすがに初めての体験であった。ちなみに予定より1時間40分遅れの出発でした。

【日綜セミナー3】開催のお知らせ(外貨管理の基礎)

2010年06月17日 | 日記
【内  容】
中国に駐在されて日常業務を行う中で中国の外貨管理に戸惑いを感じたことのない方はおそらくいないでしょう。日本の外貨管理が比較的自由であるのに対し、中国の外貨管理は細かなルールや、送金に対して要求される書類も多く、全てにおいて日本と比較して煩雑といえます。

理解がおぼろげなままで日常業務を流していると不安に感じてしまう場面もあるでしょう。管理者としてあまりよくわかっていないまま担当者に任せっきりしていると、行われている実務がブラックボックス化してしまい、しかしそのブラックボックスで問題が生じていると思いつつも知識が不足しているために問題を指摘することができなくなってしまい、それが積み重なると後から取り返しのつかないことが生じかねません。そのようなことを防ぐことができるだけの基本的な知識を習得していただくべく、本セミナーは、外貨管理の基礎について広く理解してもらうことを目的とする内容としております。本セミナーは外貨管理全般を広く浅くを主旨としているため、保税エリアに関する外貨管理については別途開催することを予定しております。

【対  象】
外貨管理の基礎を習得したいとお考えの方

【開催日時】
7月1日(木)14:00~17:00(13:30開場)

【開催場所】
グランクリュ上海静安 会議室
上海市南京西路1601号越洋広場38楼

【参加費用】
200RMB/人
(参加費用は当日受付にて集金いたします)

【定  員】20名
(定員になり次第、締め切らせていただきます)

【講  師】私

▼お問い合わせ先
日綜(上海)投資コンサルティング有限公司  
担当者:呉  info@jris.com.cn

▼お申込
下記の項目を 件名:「日綜セミナー3」 として info@jris.com.cnまでお送りください。
1.貴社名
2.参加者名
3.部署/役職
4.TEL(会社及び携帯)
5.E-mail
(弊社と同業及び金融機関の方のお申し込みはご遠慮ください)

中国のコピーDVD市場は400億元

2010年06月16日 | 日記
 中国映画週間の映画円卓論壇という場において発表されたのだが、中国の昨年の映画興行収入は60億元(約810億円)を突破し、今年は100億元(1350億円)を突破すると見られている。一方で、コピーDVD市場は400億元(5400億元)と言われている。圧倒的にコピーDVD市場のほうが上回っている。ちなみに昨年の日本の映画興行収入は2060億円だ。米国では映画のチケット収入の4倍をDVD及びその他関連製品で売り上げているといわれている。日本の場合は2005年の数値によると興行収入1981億円に対して映像ソフトの売り上げだけで3709億円と約2倍だ。中国ではコピーDVDだけで興行収入の7倍近くもあり、この部分がすっからかんともいえる。今ではDVDを購入しなくてもネット動画で見ることができるので、実害はこれどころではないだろう。一生懸命がんばってもコピー品に持っていかれてしまうため、クリエイターのモチベーションが上がらず、良い作品が作られないという悪循環がある。いまでこそ中国でもアニメ産業基地なるものがあちらこちらでできているが、クリエイターが育ちにくい環境にあり、これを促進していく上での本質的な問題はここにあるといえる。

 コピーDVD市場がどの程度のものか一時ずっと調べていたのだが、なにせ表にできない部分の多い分野でもあり、なかなか調べがつかなかった。今回のこの400億元という数字がどこまで正しいのかわからないが、目安として参考にはできるだろう。


中国大学生就職人気ランキング

2010年06月15日 | 日記
 中国大学生就職人気ランキングを見つけたので紹介しよう。トップ100まで紹介されていたが、それだとボリュームが多いのでトップ20まで紹介する。まずは文系から。


 
 金融とグローバルなコンサル会社、会計事務所が人気だ。イメージ的に給料の高そうな業種が集中している。なぜか中国を撤退するgoogleが入っている。あれだけ騒がれてまさか撤退することを知らないことはないかと思うのだが。。。

 次に理系だ。



 ネット関連、モバイル関連、電力関連が人気だ。石油関連も2社ランクインしている。

 日本ではある時期から理系学生が金融機関に就職が増え始めた時期があった。金融商品の開発をやってもらいたかったのだろう。中国は今のところ金融商品も少ないため、理系学生の活躍する場は文系学生とほぼ変わらないのだろうが、金融分野がどんどん開放され、商品開発のニーズが増えてくると、理系学生の金融機関への就職も増えてくるのだろう。日本で理系学生の金融機関への就職が増加したときは、理系学生はものづくりをすべきだということで批判する人もいた。中国の場合は理系の就職ランキングを見る限り中国系企業は華為(Huawei)聨想(lenovo)くらいなので、当分そんなことはないだろう。写真では写ってないが、21位以下も外資系ばかりが並んでいる。ハイアールでやっと27位だ。中国地場系のメーカーの人気が出るまでまだ時間がかかりそうだ。

 それと、日系メーカーがこの中に入っていないのが残念だ。文系でソニーが62位、トヨタが77位、理系でトヨタが31位、ソニーが46位だ。日系メーカーの認知度、プレゼンスからしてもっと多くに企業がランクインしていてもいいように思う。

国内企業による海外での外貨留保

2010年06月14日 | 日記
国内企業が輸出により回収する外貨の海外での留保が検討されている。対象となる外貨はもちろん真実、合法取引で得られるべきものだ。

国内企業が国外で口座を開設し、貨物貿易輸出代金を留保し、これらの国外で留保する資金を使用して貨物貿易対外支払いまたは批准を経た資本項目対外支払いに使用することができるようになる。国外留保資金は国内に戻す必要がなく、これにより企業の外貨送金費用及び両替コストを節減できるようになる。また、資金調整や運営計画を弾力的に行うことができるようになるとも言われている。もちろん、国外留保外貨対して報告制度が実行され、非現場モニタリング管理も実施されるが、以前では考えられなかったことである。

今後は広範に意見を募集し、それを踏まえて一部の地域で試行を開始することになるようだ。そう遠くないうちに銀行あたりからこれを利用した面白い提案が聞けるようになるでしょう。

《加工貿易モデルチェンジ方案》が起草中

2010年06月13日 | 日記
 商務部が現在《加工貿易モデルチェンジ・レベルアップの方案》(原文:加工貿易転型昇級的方案)を起草している。低付加価値または「両高一資」(高汚染、高エネルギー消費、資源性消費)の加工貿易の管理を強化しようとするものだ。

 方案には加工貿易モデルチェンジを促進する内容が多く含まれている。

①《加工貿易制限類目録》に組み入れられている商品を《加工貿易禁止類目録》に組み入れるように調整
②全国範囲で加工貿易モデルチェンジ・レベルアップの模範都市を選び、相応の支持政策を与える。
③加工貿易モデルチェンジ・レベルアップの専門基金を設立

 加工貿易の目録については過去にも何度か調整されている。そのたびにがっかりした企業の方も多いだろう。基本的に加工貿易はやりにくくなっていく方向といえるだろう。今に始まった話ではないが。

 この新政策は7・8月あたりに発表され、模範都市は9月当たりに選ばれることが見込まれている。

 また、模範都市については監督州が加工貿易のメッカであることから、東莞がひとつのサンプルになるといわれている。広東省は東莞の3つの「1000」のモデルチェンジというものを商務部に報告しており、一つ目が、1000社の来料加工企業を「非法人企業」から「法人企業」へ転換、二つ目が1000社の加工貿易企業の国内販売市場の開拓、3つ目が1000社の加工貿易企業の生産力水準の引き上げだ。

 非法人企業から法人企業への乗換えというのは華南ならではの話だが、国内販売市場の開拓、加工貿易企業の生産力水準の引き上げというのは、どの地域であっても必要とされることだ。とはいうものの、従来型の加工貿易を必要とするところもまだまだ多いはずだ。それがここ最近にストライキやら賃上げやらで気力が萎えてしまったところも多いだろう。飛び降り自殺騒動、そして園あとの大幅な賃上げで話題になった富士康なんかも労働コスト上昇がかなりの利益を引き下げることになると伝えられている。いちおう富士康の場合は、賃上げには同意したものの、3ヶ月の考査期間を経て初めて新聞で報道されているような大幅な賃上げが実現するという。ということは、実現しないワーカーも出てくるだろうから、そのときにまたひと悶着起こるかもしれない。今回はとりあえず大幅な賃上げで決着させたが、3ヵ月後はどのように決着させるかが楽しみだ。

外国人の上海生活に対する満足度

2010年06月12日 | 日記
 外国籍ビジネスマンの上海での生活満足度の調査報告なるものが発表された。サービス業に対する満足度が高く、項目としては文化娯楽・体育・レジャー、交通、社会環境及び教育があげられ、反対に満足度の低いものとしてはインターネットの速度、政府ウェブサイトの更新速度・バイリンガル化及び空気の質があげられている。

 満足度は5点満点で、サービス業が最高で3.32点、その次がレジャーで3.30点、交通が3.21点、社会環境が3.14点、そして教育が3.04点と続いている。ショッピングについては外国語レベルが高くないのと笑顔が少ないことがマイナスポイントとして指摘されている。この他には、タクシーのサービス水準は航空機よりも上回っていること、街中にゴミが多く、車内からごみを捨てる光景が普遍的に見られるといった意見も見られている。新聞記事ではサービス業に対しての満足度が高いとなっているが、5点満点で3.32点が最高というのが果たして自慢できる数字なのだろうかと思う。また、以前からこの手のアンケートが果たしてどこまで正しいのかと思っていた。満足度の高さのレベルが人に依って一定していないのではないかと思うからだ。このアンケート調査が具体的にどんな回答形式なのかは知らないが、おそらく①とても満足、②満足、③普通、④やや不満、⑤不満、という内容だろう。これに対して、「①とても満足」と回答する場合、「本当にとても満足している」のか、「中国でこのレベルならとても満足といえる」という回答なのか、おそらく人によって回答基準がバラバラなのではないかと思う。自分自身が同じアンケートを受けた場合でもそのときの気分によって回答内容がバラバラになってしまうような気がする。果たしてこのサービス業の満足度3.32点という点数はどういう基準で回答されたのだろうか。でも3.32点というレベルはパーセンテージで言うと70%にも満たないので決して自慢できる水準とはいえませんよね。

高収入者に対する徴税管理の強化

2010年06月11日 | 日記
 《一段と高収入者の個人所得税徴収管理を強化することに関する通知》というものが公布された。ポイントは次の通りだ。

1.財産譲渡所得の徴収管理の強化
・販売制限株式の譲渡所得の徴収管理
・非上場会社の株式譲渡による所得の徴収管理の強化
・不動産譲渡所得の徴収管理の強化
・オークションによる所得の徴収管理の強化

2.利息、配当、配当金所得の徴収管理の強化
・配当。配当所得の徴収管理の強化
・利息所得の徴収管理の強化
・個人の法人企業からの消費性支出及び投資企業からの借入の管理

3.規模が比較的大きい個人独資企業、パートナー企業及び個体工商戸の生産、経営所得の徴収管理の強化
・帳簿作成管理
・非法人企業の抹消登記管理
・個人消費支出と非法人企業生産管理支出管理の強化

4.役務報酬所得の徴収管理及び給与・賃金所得の対比管理の強化

5.外国籍個人が取得する所得の徴収管理の強化

 貧富の差がどんどん激しくなっていってる中、それを是正するため、そして単純に税収を確保することを目的としたものであるといえる。しかし、徴税対象になるのは当然表に出せる収入だけだ。表に出ない収入、いわゆる「灰色収入」は申告しようがないので、当然徴税の対象外となる。先日ある中国人と話していたところ、中国系の銀行員の収入は凄いという話になった。30歳くらいの融資担当者だと2-3百万円くらいもらえると言われた。日本の銀行マンと比べ物にならないくらの収入だ。そんなもらってるわけないでしょうとこちらがいうと、それくらいの灰色収入があるんですというコメントが返ってきた。本当かどうかは知らないが、こういう話が噂されるように、灰色収入に対する妬みも庶民感覚的にはかなりあるようだ。個人所得税の徴収管理をいくらしても灰色収入に影響しないだろう。今まで数え切れないくらいの賄賂を取り締まるような通達が出ているが、新聞報道等を見る限りではあいも変わらず贈収賄は頻繁に行われている。賄賂や灰色収入が認知されてしまうという文化が変わらない限り、こういった妬みは変わらないだろうし、貧富の差も埋まっていかないのではないだろうかと思う。 ジニ係数という所得分配の平等さを測る指数がある。中国では10年前に0.4を超えて以来、年々上昇して現在では0.47にまで達している。これがどれだけの数値であるかは次をご覧いただきたい。

    ~0.1 非常に平均化されているが仕組まれる人為的なものがある。
 0.1~0.2 相当平等だが、発展への努力を阻害する懸念がある。
 0.2~0.3 社会で一般的な分配型である。
 0.3~0.4 少々格差はみられるものの、競争という面からは好ましい。
 0.4~0.5 格差がきつく、社会不安定要素がある。
 0.5~    特段の事情がない限り早急な是正が必要。

 最悪水準の0.5超には至ってないものの、今のペースだとそう遠くないうちに0.5を超過しそうだ。ここ最近中国進出企業の賃上げに関する報道が数多く紹介されているが、ジニ係数の角度から見ると確かに賃上げは必要なのだろう。しかし、賃上げを行いすぎると中国でのものづくりの魅力がなくなってしまう。そのため、単純なものづくりからモデルチェンジすべきだという議論が良くなされるが、既述したように、賄賂や灰色収入が認知される文化を変えていかないと庶民の不平等感も変わらないだろうし、これが変わることによって権力者に対する富の集中が分散し、ジニ係数的に見ても本来あるべき姿になっていくのではないだろうか。 それにしても、社会主義国のジニ係数が一般的な資本主義国を上回っているというのはなんとも皮肉だ。


中国カルフールのベテラン店長が相次いで離職

2010年06月10日 | 日記
 ここ数ヶ月の間の、中国カルフールで店長、エリアマネジャー、購買総監等のポジションの職員が相次いで離職しているという。その背景としてあるのは本部による権限回収だ。

 具体的には店長の権限の回収、給与問題、考査制度の審査等に関するもので、特に店長の権限回収は今まで永年培ってきた経験に基づくスタイルに基づいて運営できないことから、嫌気を指した店長達が離職して行ってるという。従来のカルフールの店長は店舗の販促権、人員募集権、従業員の昇格・給与改定権、人事異動権、商品の価格決定権等を有しており、きわめて自由なスタイルでの運営を行ってきた。そのため、より顧客に近い距離から、要するに顧客目線でオペレーションを行うことができ、これにより利益率も高く、スピードにも勝るという優位点があった。これに対してその他企業では本部による統一管理のもとで、営業手法が現地化しきれず、価格もニーズに基づいたものになっておらず、そのためカルフールと比べて競争力が劣っていた。しかしながら、現在のカルフールはどんな簡単なことでも全て本部の了解を得なければならず、本部にお伺いを立てると時間を要するだけでなく否決されたり返事すらもらえないこともあるという。販促も以前のように行うことができず、店舗の業績は下落をたどっていっている。今までのような裁量を持って運営できなくなったことに加えて、押し付けられた方針の下でのの業績で評価が行われる。当然評価は低くなる。人員募集も店長の権限では決められず、本部から人員募集を行ってはならないというお達しが出て時期もあった。給与改定も店長判断で行うことができないため、一般店員の離職も避けられない。年商4億元の店舗の場合、400-500人の人員を必要としていたのが、今では180-300人にまで減少している。その代わり、ショップの販売員を導入することでカバーしているという。

 業界では一定の規模に達すると統一集権管理は必要であるという見方もある。ただ、カルフールの場合はあまりにもドラスティックに行ったために人間味に欠ける一方、ウォルマートの行っている統一管理は権利・責任が明確で、店長の権力も大きくないものの、責任とプレッシャーはカルフールほどでもない。同じ統一集権管理であっても全く同じというわけではないのだ。これは6月4日付の記事《「中国内需市場攻略セミナー」 in 上海、無事終了!》の中にある「欧米式に転換して失敗」の例に極めて似ている。まあ、確かにカルフールの中国におけるここ最近の業績は大潤発やウォルマートといった同業他社にどんどん追い上げられているのが現状(大潤発の追い上げについてはこちらをご参考⇒中国からは繫がらない)であり、それを打開しようとしているのだろうが、少なくとも現時点においては裏目に出ている。現状改善はいいのだが、方向転換の度合いがちと急すぎたのだろう。各店舗が裁量を持って運営することで成功してきたのは間違いないので、この方式を維持しつつ、安易に本部統一管理ではなく、時間をかけて他の方策を検討するのが本来行うべきことだったといえる。しかし、出て行ったカルフールの店長に気持ちもわかりますねね、要するに今までどおりのような権限は与えないけど責任だけは負わされるわけですから、そりゃあ嫌気もさしますねえ。

ストライキのエリアが拡大

2010年06月09日 | 日記
 華南の富士康、ホンダ、北京の現代でストライキ騒動が発生したことがメディアで紹介され、中国の新聞でも紹介されているが、産経新聞によると今度は昆山市にある台湾系機械部品工場でストライキが発生し、従業員ら約2千人と警官隊数百人が衝突し、従業員約50人が負傷したという報道が流れた。結構な規模だ。ストライキが発生した企業側が賃上げを飲んだ情報が従業員に入ったこともが影響しているのは間違いないだろう。最初は華南中心の話で華東地域は関係なさそうな感じだったが、華東地域ではどうやら万博期間中に目立った騒動が発覚することを避けるため、ストライキに関して報道が規制されているという噂、大きな騒ぎに発展させないため企業側に賃上げを認めさせているという噂、日系企業でもストライキが発生しているという噂も聞こえている。何が本当なのかは確認できないが、いずれにしろ各地でストライキの動きが活発になってきているのは間違いないようだ。

 しかしそれにしても富士康の賃上げはあまりにも目立ちすぎた。半年の間に2回も賃上げし、もともと900元だった賃金が2000元にまで引き上げられたのだ。この水準は就職難にあえぐ大学生からみても悪い水準ではない。労働コストが安いという時代が過ぎ去るのは間近なようだ。このような動きを受けて台湾電器電子工業同業公会理事長の焦佑鈞氏はこのようなコスト上昇の流れは既に見られており、既に中国内陸部への移動は開始しているものの、最近の状況からすると3-5年以内には中国大陸内の台湾系電子工場が大陸を離れるのは不可避だという見方をしている。同公会は今年「南進策略」という方針のもと、台湾系工場をインド、インドネシア、ベトナム等の生産コストが低い国に移動することを推進していくという。同じ台湾人でも異なる見方をしている人はいる。例えばベトナムに移ったからといってストライキリスクがないわけではなく、移転のコストもバカにならないため、移転は必ずしもベストチョイスといえないという考え方だ。しかし、労働コストのあまりにも急速な上昇は、企業がそれに対応するための準備の余裕を与えず、対応が間に合わないとなれば「待ったなし」ということで一気に中国外移転の動きが加速しかねない。工場運営者にとって今年はかなり厳しい舵取りが迫られる。

売り上げとコスト

2010年06月08日 | 日記
 会社を運営し続けるためには利益を計上し続けなければならない。そして、利益を計上するためには売り上げを計上しなければならない。売り上げを計上するためにはコストが必要になる。私と親しくしている同業の叶さん(「カノウ」さんじゃなくて中国人の「ヨウ」さんです)という方が非常に印象深いことを言っていた。「コストというのは売り上げを上げるために必要なものです。削減できるコストというのはそもそもが無駄なコストなのです。逆に無駄でないコストを削減すると売り上げが下がることにつながります」。当たり前のことだが、新鮮に感じた。とかくコストというとネガティブな反応を示す人が多い。しかし、叶さんのこの発言は非常に前向きだ。いや、前向きと感じる時点で私も間違っているのかもしれない。当たり前のことだからだ。

 コスト削減の中で無駄なコストを削減して、それにより他に必要なコストに回そうという考えもあるだろう。しかしコストという単語にネガティブな人だと、この考えすらも否定的にとらえられてしまう。せっかくコスト削減して資金を捻出しても新たな名目で発生するコストは別物として考える。マイナスの螺旋に陥っているかのようだ。しかしながら、日系企業にはこのような考え方の人が少なくないように思う。

 社内で発生しているコスト、果たしてどれが削減すべきコストで、どれが削減すべきではない、むしろ増やすべきコストなのか、一度洗い出してみてはいかがでしょうか?

土地増値税予納税率が引き上げへ

2010年06月07日 | 日記
 5月25日付で《土地増値税徴収管理工作強化に関する通知》が公布された。 そもそも土地増値税とはどんな税かと思う人もいるので、簡単に説明しよう。《土地増値税暫定条例》によると、「国家の土地使用権、地上建築物及びその付属物を譲渡し、収入を得た団体と個人は、土地増値税の納税義務者として本条例に基づき土地増値税を納付しなければならない。」というものである。課税対象は、「納税者が不動産を譲渡して取得した収入から本条例第6条に定める譲渡原価相当額を差し引いた金額を値上がり益とする。」とあり、要するに不動産の売買差額に対して課税するものと考えればいい。

 保障性住宅を除き、東部地区の省では徴収率を最低2%、中部及び東北地区の省では最低1.5%、西部地区では最低1%とする内容となっており、上海でいえば従来1%だったものが2%、つまり倍になる。深圳はもともと0.5%だったものが2008年に1%に引き上げられたところだ。えらく低いと思うかもしれないが今回徴税税管理を強化するのは、あくまで原価の確定またはその他の原因により土地増値税を計算できないときのために予納する場合の税率のことであり、で、不動産ディベロッパーに対して化せられるものであり、通常は販売価格が課税基礎となる。試算によると上海ではこれにより不動産業からの税収が43.3億元増加するといわれている。また、不動産業者の業績に与える影響も大きく、土地増値税が1%から2%になることにより粗利益が5%減少するといわれている。不動産バブル対策であることは言わずもがなだ。既に銀行に対して不動産関連融資の引き締めが行われており、今度は税率引き上げが行われる。融資引き締めにより相場に若干のかげりが見られ始めたものの、まだまだ押さえ切れておらず、その次の一環として今回の税率引き上げが行われると見てもいいだろう。これにより不動産相場がどこまで影響を受けるか注目される。実需があればちょっとした政策により相場は大きく動かないと思われるので、地域によって影響度合いに違いが見られることだろう。