中国において資金貸出は金融業のみが認められている行為なのですが、民間企業同士の資金貸借を銀行が仲介する方法として委託貸付という制度があります。日系企業の場合は関連企業間で資金貸借を行っているケースが多いと思います。2014年の中国国内の委託貸付規模は2.51兆元で、前年比ほぼ倍増しています。委託貸付の増加幅は商業銀行の人民元貸出規模の30%にも達しており、シャドーバンキング規模の26%に上るとも言われています。そして、このコントロールが利かなくなりつつあるといわれています。最近の委託貸付の約20%は不動産業に流れているといわれており、しかも増加傾向にあります。不動産業向け貸金について、銀行はリスト制を実行するようになり、リスト外の企業は委託貸付を通じてしか借り入れができなくなってきています。
上場会社は銀行の委託貸付業務をそこそこの収益のあがる業務とみています。理財商品の収益は年利で5-6.5%程度なのに対して、委託貸付の利率は15%以上にもなり、これは民間金融より少し低い程度です。
銀行の委託貸付は主に二種類あります。
指定性委託貸付 |
資金の出し手と借りてが利率を協議し、銀行の役割は仲介のみで、貸出リスクは負わず、零点数パーセントの手数料を徴収する。 |
不指定性委託貸付 |
資金の出し手を銀行が確定し、銀行が業務に対して担保義務を負うが、受け取る費用は一般的に3%を超える |
指定性業務における資金の出し手の収益は一般的に非常に高く、20%に達することもあるり、銀行はこの貸し出しに対するリスクは負いません。一方で、不指定性業務は銀行の信用担保が関係してくることもあり、資金の出し手の収益も7-10%程度となってしまいます。収益の高い低いはあるにせよ、委託貸付には一般的な資金運用以上の収益という妙味があるといえます。
冒頭に書きましたように、委託貸付に対することロールがきかなくなりつつあることから、管理を強化すべく《商業銀行委託貸付管理弁法》の意見募集稿が発表されています。この中で委託貸付の資金の出所、貸付先及び銀行の職責につい次のように明確に規定されています。
① 商業銀行は国家が規定する特殊用途のある各種専用基金、銀行与信資金、債券発行のために集めた資金、集めた他人資金及び出所を証明できない資金等を委託貸付に用いることを厳格に禁止する。 ② 商業銀行が受託して行う委託貸付に明確な用途がありべきであり、「国家が禁止する製品とプロジェクトの生産・経営または投資」、「債権、先物、デリバティブ、理財商品、出資者利益等の投資に従事」、「登録資本金、験資登録または増資による持分拡大」、及び「国家が明確に規定するその他禁止用途」に対しては行ってはならない。 |
考え方としては鞘取りの抜け道をふさぎ、資金の出所と用途を同時に管理し、そして銀行が信用担保を行えないようにするものであります。この規定が実際に施行されれば、委託業務に対する影響は少なくないでしょう。民間企業の資金多様立つ手法が減ってしまうと同時に、銀行にとっても中間業務による収益減につながってしまいます。銀行は信用担保も行ってはならないですし、不指定性委託貸付の資金の出し手を探すことは難しくなってしまいます。
以前ほどシャドーバンキングという単語を聞かなくなってきましたが、だからといって問題がなくなったわけでもありません。委託貸付は行ってみれば転貸のようなもので、関連企業宛ならともかく、非関連企業に対するものがあまりにもたくさんある方がおかしいのです。委託貸付がシャドーバンキングの26%も占めており、この中のどれだけが非関連企業宛のものなのかわかりませんが、少なくとも非関連企業向けのものについては。書くまで個人的なイメージですがあまり健全な貸金でなさそうなので締め付けいくべきではないかと思います。