呉明憲コンサルタントの中国ビジネス日記

中国の最新情報を上海・東京・神戸を拠点に活動する株式会社TNCリサーチ&コンサルティングの呉明憲が紹介します。

労働契約法実施細則の意見募集稿

2007年12月28日 | 未分類
  労働契約法の実施細則が出る出るといわれながらいまだに発表されていない。しかしながら、メディア報道等を見ていると細則の意見募集稿の内容がある程度漏れ伝わってきている。色々と出ているが、ここで気になったものについて紹介することにする。

1.連続二回固定期限労働契約締結後に、従業員が「無固定期限労働契約」を申し出た場合
連続二回固定期限労働契約締結後に、従業員が「無固定期限労働契約」を申し出た場合、会社は無固定期限労働契約を締結しなければならないという考え方と、会社は無固定期限労働契約を締結するかまたはそもそも契約を締結しないという考え方があったようである。私は前者の考え方を取っていたので、後者の考え方を聞いて驚いたりしたが、前者で落ち着くのではないだろうか。

2.労務派遣の基準
労務派遣の基準として「臨時的、補助的、代替的」という基準が一応あるものの、そもそも何を以って「臨時的、補助的、代替的」とするべきかは、恣意的に判断できなくもなかったといえる。意見募集稿では「臨時的」とは業務期間が1年未満のポストのことを指し、「補助的」とは警備、清掃等の非主営業務ポストを指し、「代替的」とは元々のポストにある従業員が休暇を取得し、この期間の間出勤できない場合に他の人員が臨時的に代わりを勤めるようなことを指す、ということになる模様である。そして、これら以外のポストで労務派遣を使用した場合、全て直接雇用とみなされ、会社としては労働契約を締結しなければならないとされている。また、全国人大法工委は労務派遣期間は6ヶ月以内とし、6ヶ月を超える場合は正社員としなければならないという意見を出しているようである。以前に派遣会社の場合は連続二回固定期限労働契約締結場合の「無固定期限労働契約」の対象外になるらしいと書いたが、派遣期間が6ヶ月以内となると派遣会社としてはやはり難しくなってしまう。

  いずれにせよ、1月1日から施行されることもあり、細則の公布が待たれる。


JETRO主催セミナー所感

2007年12月17日 | 未分類
今日はJETROの岩田副所長のおはらかいもあり、JETRO主催のセミナーに講師という立場で参加させていただいた。話題は保税監管区域外貨管理弁法である。申し込みは受付ベースで約100名程度で、通常は歩留まりが80%程度のところ、今日はあいにくの雨のため歩留まりがぐっと下がると思いきや、会場はほぼ満席で、あらためて皆さんの関心の高い問題であることを思い知らされた。多めに用意していたつもりの会社案内も全て配ることができて、これをきっかけに当社のことを知っていただいた方も多いのではないかと思う。先月末に東京でも同じようなセミナーを開催したのだが、後出しじゃんけんのほうがいい内容になるになるのは当然で、やはり上海で開催した内容のほうが質疑応答も含めてよい内容に仕上がったのではないかと思う。

実は毎週日曜日に空手の練習をしているのだが、どうも昨日は頭部を打たれすぎたのかもしれないが、練習後から頭痛がし始め、家に戻ってからも頭痛が癒えることがなく、9時半には就寝したのだが、まさかこのまま倒れてしまうのではないか、倒れてしまったらセミナーはどうなるのかという大げさな心配をしたのだが、結局当日は頭痛も治まり無事セミナーを開催することができた。

セミナー自体は話し始めるとついつい早口になってしまうせいで、用意していたレジメの説明は予定時間よりも早く終わってしまい、事前に受けていた質問に対する説明も終わったところでまだ結構な時間が残ってしまった。普通のペースで話せばもう少し引き伸ばせたと思うのだが、早口で話してしまうのは性分なので仕方がない。しかしながら、質疑応答の時間では意外と活発に質問がでてきたこともあり、結局はほぼ予定通りの時間に終了することができた。自分自身がセミナーにリスナーとして参加する場合、講義内容そのものももちろん大事だが、実は最後の質疑応答が楽しみだったりする。質疑応答は現場の方ならではの疑問点が聞けることがあるからだ。逆に講師を務める立場からは質問された場合に答えられなかったりすると格好悪かったりするので、これが緊張感にもつながったりする。次回どのようなセミナーを開催するかはまたこれから考えていくことにするが、これからも皆さんの関心の高い問題を取り上げることでお役に立てるようにしていきたいと思う。



積極的な無固定期限労働契約の活用の動き

2007年12月14日 | 未分類
企業所得税法実施条令が公布されて、多くの方がそちらに関心が向かっているかもしれないが、労働契約法関連で面白い記事を見つけたのでそれを紹介することにする。

台湾系企業の富士康科技集団が労働契約法を積極的に活用するべく8年以上連続して勤務している数万人の従業員と無固定期限労働契約を締結し、それ以外の従業員とも主として長期労働契約を締結するというものだ。

同社は設立以来20年近くになり、勤務期間が10年以上になる従業員も数万人に達しているそうだ。そして従業員の安定を図るために今後全ての従業員に対して主として長期契約を締結し、勤務期間8年未満の従業員とは無固定期限労働契約の締結を可能とし、新たに入社した社員に対しては初回の契約で2年契約、二回目の契約で3年契約、三回目の契約で無固定期限労働契約を締結することとし、技術者と管理者については初回3年、二回目5年、3回目で無固定期限の契約を締結するとのことである。

この動きに対して、国家労働社会保障部労働工資副司長の董平氏は非常に喜ばしい動きであるとコメントしております。多くの企業が無固定期限労働契約を以下に回避すればいいのかという動きととる中で、富士康科技集団の動きは非常に斬新に映る。

富士康科技集団のこのような動きは長年勤めてきた従業員は会社の宝であり、どのようにして引き止めればいいのかという行動からきたのであろうという見方があり、まさにその通りだと思う。

今後このような動きがどこまで増えてくるかに注目したい。



派遣会社の巻き返し?

2007年12月09日 | 未分類
先日人材紹介会社の方と会食したところ、労働契約法の話になったが面白い話を聞いた。派遣会社は被派遣者と2年以上の固定期間労働契約を締結しなければならないのは既にご存知かと思う。そして、一般的に2回連続して固定期限労働契約を締結し、さらに労働契約を継続する場合は無固定期限労働契約を締結することになり、派遣会社も例外ではないと思われていたのだが、派遣会社にはこれが適用されないことになりそうだというのだ。草案第一稿の段階では被派遣者は1年以上勤務した場合で、派遣受入会社が引き続き同じ被派遣者に勤務してもらう場合は直接雇用に切り替えなければならないとなっていたが、これからすると派遣会社も本当に大きく巻き返したものだ。今まで私は派遣会社の無固定期間労働契約締結リスクがあると考えていたので、そのリスクを押し付けられる派遣受入側である企業としては派遣会社を使うメリットがあまりないと考えていたが、このリスクがなくなるのであれば派遣会社も結構使えると思う。11月か12月に公布するといわれていた関連規定で早くこの部分を確認したいと思う。


最近の融資規制について

2007年12月06日 | 未分類
前回書いた日記が11月19日であり、2週間以上も間隔が開いてしまった。仕事が一時的に集中したことと体調を崩したために間隔があいてしまったが、この間にも色々なことが起こったようである。特に融資規制については頭の痛い問題だろう。聞いたところによると今のところは人民元が対象となっており、外貨については対象となっていないようだ。現在の経済の加熱振り、特に不動産の過熱ぶりからしておそらくこの動きを抑えることを狙いとしているのだろう。新聞報道等で見る不動産の加熱ぶりを紹介する記事を見る限りでは対象の中心は不動産の加熱抑制を目的としていると思われるが、今回の融資規制は業種が特定されているわけではない。そのため、それ以外の業種で真面目に活動している企業にとっては困った話である。

 今の状態が続くと親子ローンへのシフトが考えられるだろう。中国国内で調達した外貨は人民元転できないが、国外より調達した外債であれば手続きを踏めば人民元転することが可能だからだ。

 また、融資規制が外貨にまで及びことは当面ないように思う。中国国内で調達した外貨は人民元転できず、基本的には海外との間の決済資金として使用されるため、不動産業への影響は及ばないと考えられるからだ。

 中国の決算は12月なので、12月末さえ過ぎればこのような動きが収まるというのであればよいのだが。

 上とは関係ない話だが、12月17日にJETRO上海主催の保税監管区域外貨管理弁法に関するセミナーで講師を務めることになった。興味のある方には是非ご出席いただきたい。

【同セミナーの詳細について、下記のアドレスよりご覧ください】
http://www.jetro.go.jp/biz/world/asia/events/20071205814-event


全人代常務委員会法制工作委員会の責任者の労働契約法についてのコメント

2007年12月06日 | 未分類
今回は、全人代常務委員会法制工作委員会の責任者が労働契約法についてコメントしたので、その主な点について紹介していくことにする。なお、⇒の後は私のコメントである。

(1)勤務年数のゼロクリアは違法
  一部の企業で見られた労働契約法施行前、つまり今年中に労働契約を解除し再雇用することで勤務年数をいったんゼロクリアする方法は違法だとの見解が示された。形式上「自主退職」したとしても労働関係が連続しているという事実を変えることはできないとの見解が示された。

⇒あまりに露骨な場合このようにみなされてもしょうがないだろう。

(2)無固定期限労働契約は「鉄飯碗」ではない
「鉄飯碗」とはいったん就職すれば真面目に働かなくても解雇される心配がない現象をさすが、無固定期限労働契約は決してこれに該当しないとしている。無固定期限労働契約であっても、①会社と労働者が協議一致した場合、②労働者が法律や規定違反をした場合または病気、ケガ等で職務に耐えられない場合、③経済性人員削減、の場合は契約を解除できるとしている。これは固定期間労働契約と同じであり、従って無固定期限労働契約は決して「鉄飯碗」ではないとしている。

⇒しかしながら、労使間で争議が発生し、仲裁等が行われた場合の企業側が勝つ確率が極めて低いことから、企業としては「鉄飯碗」を恐れるのは致し方ないことだろう。


(3)労働契約法実施細則お呼びし法解釈は制定作業中
11月下旬から12月上旬にかけて労働契約法の実施催促が公布されるといわれていたが、国務院及びその関連部門はまさに実施細則を制定作業中であり、最高人民法院も司法解釈を出すとのことである。

⇒公布され次第取りまとめる予定にしている。私としても公布されるのが待ち遠しい状態だ。