呉明憲コンサルタントの中国ビジネス日記

中国の最新情報を上海・東京・神戸を拠点に活動する株式会社TNCリサーチ&コンサルティングの呉明憲が紹介します。

《労働契約法》について思うこと

2007年10月30日 | 未分類
労働契約法》花盛りである。今年の6月29日に施行され、施行まであと二ヶ月となった。既に手を打っている企業、これから手をうとうとしている企業、手を打とうとしているが具体的にどうしていけばいいかよくわからない企業、というように企業ごとに様々な状況にあると思う。《労働契約法》は条文の内容からして企業側の負担が増加することばかりが着目されている。無固定期間労働契約、経済補償負担、労務派遣の使い勝手が悪くなる、といったところがそうであり、特に無固定危険労働契約に対してかなりセンシティブになっている。確かにこれらの部分だけをみるとマイナス思考にならざるを得ない。新聞報道によると華為という会社が8年以上勤務した従業員に対して年内に自主退職させ再雇用するという動きを行おうとしているそうだ。無固定期間労働契約を回避するためだろう。思い切ったことをするものだ。しかしながら、労働契約法の趣旨を改めて考えてみると、《労働契約法》はその内容からして労働者保護、労働者の安定的雇用を主旨としているといえる。従って、このような動きは《労働契約法》を作り出した側からすると受入られない事態であろう。繰り返しになるが《労働契約法》に対してあまりにもセンシティブになりすぎている。我々コンサルティング会社も含めて《労働契約法》の企業側にとってのマイナス面を伝えすぎたことも原因であろう。しかし、ここで発想を切り替える必要があるのではないか。いまさら何を言ってもあと二ヶ月も知ればいやおうなしに《労働契約法》は施行されるのである。従って、企業としては「《労働契約法》の内容は企業にとって厳しい、どのように対応すればいいのだろうか」と思い悩むよりも本質的な解決方法を考えるべきでないか。そしてその本質的解決方法とは労働者にとっていかに魅力のある企業を作り上げるということではないだろうか。企業側から見た場合、優秀な社員は長くとどまってもらって会社に貢献してもらいたい、従業員側から見た場合、自分の力をより発揮できるところで安定的に働き続けたい、というのは至極当然のことであるといえる。このためには企業が従業員にとって魅力ある職場であることが必要であり、魅力ある職場であればモチベーションを高く維持することができ、その結果モラールの低い無固定期限労働契約社員の数を抑えることができ、また長く働くということは人材の流動化が激しいと悩んでいる企業にとってはもっともありがたい話のはずであり、従業員から見ても《労働契約法》本来の狙いである安定的雇用につながるといえる。要は《労働契約法》をきっかけに企業と従業員の総合がwin-winの関係になるように状況を改善していくほうが優先されるべきであるはずだ。もちろん言うは安く行うは難しであり、目先すぐに会社を従業員にとって一段と魅力のあるものにするのは難しいだろうが、《労働契約法》を恐れて小手先のテクニックを使って無固定期限労働契約の回避や経済補償金負担の極小化を考えるばかりではなく、企業自身の魅力を高めることのほうが大事ではないだろうか。そういう意味では《労働契約法》をいかに活用するかという方向に目を向けるべきであろう。とはいうものの経営者の立場に立てば確かに無固定機関労働契約を恐れるのはわからなくもない。国有企業しかなかったような時代は固定期間労働という概念もなく、その影響か生産性も低く、それを改善するために固定期間労働という概念を取り入れて従業員にプレッシャーを与えることで生産性を引き上げ現在の発展に結びついたといえなくもない。そういう意味では中国にとっても《労働契約法》は大きな挑戦であるといえるだろう。

 以上は企業内部の話であり、もう一つ考えるべき問題としては経営面の話である。どういうことかというと、《労働契約法》はもちろん外資系企業だけでなく中国国内の全企業を対象としたものである。従来労働関係法令を遵守せずに最低賃金も守らない、あるいは残業代もまともに支払わなかったような企業も《労働契約法》を遵守しなければならないのである。このような企業が《労働契約法》を遵守し始めると当然生産コストが上昇するであろう。そしてそれが製品の販売価格に転嫁されるはずである。直接このような企業から仕入を行っていない企業であっても、間接的に関係していることは十分に考えられる。つまり直接の仕入れ相手が労働関係法令を遵守している企業であっても、その前の段階にある企業が労働関係法令を遵守せずに生産コストをおさえているような場合であれば、結局回りまわって自社が仕入れる際に当然のことながらコストアップが生じるだろう。今年に入ってから輸出税額還付率が引き下げられたり、加工貿易に対する締め付けが厳しくなってきている。むしろこちらの方に目を移して考えていく必要があるのではないだろうか。



世知辛い世の中?

2007年10月27日 | 未分類
昨日お客様から問い合わせがあり、上海税関職員の給与が40%もカットされ、モチベーションが下がり、実務面で影響が出ているという話を聞いた。それから人に聞いたりネットで調べてみたりしたのだが、どうやら本当のことのようで、一部ストライキまがいの行動に出る者もいるというような話まであり、上海出入国検験検疫局でも同様の話があるようである。また、次は税務部門が対象になるという話まで載っていた。これが本当だと税務局で行う手続きにも支障が出てくるかもしれない。これに対して、本物かどうかわからないが、税関の公式発表(?)かもしれない次の様なコメントを見つけた。


最近、ネットの一部経貿類論壇で税関の給与カットにより大量の良くない輿論が出てきている。例えば、「上海税関が大幅に給与カットしたことにより集団「ストライキ」現象をもたらした」等だが、これが社会において税関に劣悪な影響をもたらしている。ここに、上海税関は関連状況を以下の通り明らかにする。

一、“ストライキ”説は事実ではない。
企業が国慶節長期休暇前に一気に輸入する、及び国際市場の注文書の周期規律等の要素その影響を受け、上海海運、空運等の部門の主要業務の港湾の貨物通関量が全て10%以上増加した。初歩統計によると、9月22日から28日において、上海虹橋空港税関の輸入・輸出書類が各々11.56%、17.42%増加した。9月24日から28日において、外高橋港区税関が処理した輸入・輸出書類は9.87%、12.9%増加した。貨物の速やかな通関を確保するため、上海税関の工作人員は職場をしっかりと守り、慎重に職務を守り、各種業務を正常に行った。浦東国際空港税関、外高橋港区税関、外高橋保税区税関、浦江税関等の各主要業務現場は残業まで行い、“当日書類当日処理”を行い、ネット上で出回っているいわゆる「税関集団ストライキ発生、給与カットにより通関速度が半分になった”等の事例は発生していない。


二、国慶節期間の上海税関は既に各種措置を講じてスムーズな港湾通関を確保。
国慶節長期休暇期間の上海港湾の輸出入貨物のスムーズな通関を確保するため、上海税関は“5+2日”勤務制の関連規定及び上海港湾業務の特徴に基づいて、積極的な措置をとり、通関速度を引き上げ、優れたサービスを提供し、港湾通関のスムーズな通関を確保し、多くの輸出入企業に楽しいゴールデンウイークを過ごしてもらった。

三、広大なネットユーザーは引き続き税関の業務に関心を持ち、支持してもらうことを希望する。
長期にわたり税関の業務に関心を持ち支持していただいている広大なネットユーザー、輸出入企業に対し、我々は心から感謝申し上げる。同時に、我々も広大なネットーユーザーの方々に真実の状況を深く理解していただき、盲目的にデマを信用せず、税関の業務を支持し、共同して上海港湾の良好な通関環境を築き上げ、上海地区経済のスピーディーで健康的な発展が有るべき作用を発揮することを促進することを希望する。



 しかしさすがに本当にこれだけカットされると公務員だろうが一般企業の職員だろうがたまったものではないだろう。私も含め皆さんもいきなり給与が40%もカットもされればふてくされてしまうのではないだろうか。しかもどこの国であれ公務員というのは最も安定した職業であり、これを理由に公務員という職業を選択した人も少なくないだろう。これが本当なら全くもって世知辛い世の中になったものである。


お食事会

2007年10月24日 | 未分類
今週は会食が多い。月曜日がフォワーディング会社の知人と、火曜日が商工倶楽部の懇親会、そして今日は同業者との情報交換会(単なる食事会といえなくもない)であった。当社が2005年に設立されるまでは銀行員の仕事をしていたのだが、当社に来てからはこのようなお付き合いがかなり増えてきている。自ずと交流する人たちの幅が広がり、また色んな情報が入ってくる。コンサルティング会社にとって情報は命でもあり、このようなお付き合いの中で得られる知識、情報というのは非常に役立つ。

 今日の話題は労務と中国共産党大会であった。労務についてはよくありがちなあんな話があった、こんな話があったというものであったが、共産党大会の話題になるとどうしてもついていけない部分があった。具体的には胡錦濤国家主席やその他の主要メンバーの名前は当然知っているのだが、その方々のこれまでのかなり以前からの経歴を中国の方は非常によく知っており、誰々は以前は○○省の党書記をやっていて、その次は何になって、その後も色々と経験して現在に至るというのをすらすらと話すのである。逆に我々が日本の政治家の話をした場合に、果たして同じような話ができるだろうか?国務大臣の名前までは出たとしても過去の経歴まであそこまですらすらと話すことはよほど著名な大臣でもない限り難しいだろう。よく北京人は政治の話が好きだというが、上海人も話し始めると決して負けていないのではないだろうか。

 毎日当地の第一財経という新聞を読んでおり、経済面や社会面の興味のある記事ノートに貼り付けたりしているのだが、これからは政治面の記事も同じようにしようと思う。ただの食事会も結構ためになるものだとあらためて思った。


《保税監管区域外貨管理弁法操作規程》

2007年10月22日 | 未分類
日綜(上海)投資コンサルティング有限公司の呉明憲と申します。弊社が設立されてから3年近くになりますが、まだまだ弊社のことを知らない方もおられると思い、またホームページもリニューアルしましたので、これを機会に不定期でありますが「呉明憲日記」なるものを始めていこうと思います。マジメな話からくだらない話まで混ざってしまうかもしれませんが、どうぞ宜しくお願いいたします。

 さて、ここ最近で一番関心を高く持っているのが《保税監管区域外貨管理弁法操作規程》です。これは8月に公布されました《保税監管区域外貨管理弁法》のいわば実施細則といえるようなものです。本来ならば実施細則というのは大きな枠組みとして出された通達に対して、それをより詳細に説明する意味合いのものといえるのですが、《保税監管区域外貨管理弁法操作規程》は非常に難解です。外高橋保税区管理委員会の方に聞きましたところ、元々はもっと細かく書かれていたそうですが、実際に発表する段階になって細かく分かれていた部分をまとめてしまったようです。そのため、一つの条文の中で複数のスキームを取りまとめてしまっている部分があり、非常に難解なものとなっています。外高橋保税区管理委員会の方と色々とお話しているうちに見えてきた部分があったのですが、その打ち合わせ内容を管理委員会の方にフィードバックしようと作業をしていたところ、あらたな発見もありました。最終的にはスキーム図までを会員向けニュースレターに反映させたのですが、現段階としては一応の内容のものができたのかと思います。

 今回はたまたま保税区の外貨管理について書いてみましたが、今後はこのような話からもう少しくだけたような話まで書いていこうと思います。どうぞ宜しくお願いいたします。