呉明憲コンサルタントの中国ビジネス日記

中国の最新情報を上海・東京・神戸を拠点に活動する株式会社TNCリサーチ&コンサルティングの呉明憲が紹介します。

下準備の重要性

2011年05月03日 | 日記

 2004年の年商が500万元だったのが、2010年には10億元になった企業があります。韓国系のLOCK&LOCKです。食品を入れる容器でこのブランドを見た人が多いのではないでしょうか。

 

 

 今では100店舗以上の直営店も持っております。2009年の時点で中国での売り上げは本国の韓国における売り上げを上回っており、中国業務に関して香港市場での上昇を検討しているそうです。

 

 2004年に中国市場に参入したときにまず行ったことがブランドイメージを新たにポジショニングすることでした。そもそも当時はこのような密封容器に対する認知度は高くなく、価格も高かったのですが、価格を半分以下にすることで消費者が買い求め安い価格にしました。これと同時に広告を大量に放ち、テレビショッピングでも販売することで知名度を上げ、たまたまといえなくもないのですが、当時中国で放送されていた韓国の人気ドラマ《大長今》に出演していた女優を起用したプロモーションがこれまたうまく当たりました。テレビショッピングに関しては既に30以上のチャネルで取り扱われています。クレジットカードやスポーツジムの会員向けに贈答品として提供したのも知名度アップに一役買ったようです。

 

 次に同社の鍋市場の展開についても紹介します。同社が調査したところでは中国の鍋市場は二極化しており、高級品は欧米ブランド、低級品は中国ブランドが占めていました。この間を狙えば勝機があるのではないかと考え、2009年末にはCookplusというブランドを投入し、元々持っていたテレビショッピング、代理店、直営店の3つのチャネルを活用して販売を開始し、2010年4月には全国的に広告を行いました。

 

 

 

 

 

 上海では料理厨房を設けて主婦を招待して使用方法を教える等の啓蒙活動を行った結果、昨年第4四半期には第3四半期の5-6倍にまで増加しました。このほかにも新ブランドをどんどん投入しています。ほかにも特客来生活館という店舗を開設し、これは従来の直営店とは違って自社ブランドだけではなく韓国本土で有名なブランドもおいており、家庭用品、乳幼児用品、食品、各種小型家電なんかも取り扱っています。ネット販売も始めており、今のところ売り上げ比率は7-8%ですが、将来的には15%まで引き上げていくことを計画しています。

 

 やることなすことすべてうまくハマっているように見えますが、単に闇雲にやっていたわけではないと思います。実際に価格を下げるのも思い切った方向転換ですし、広告を大量に行うのも費用がかさむことから簡単な意思決定ではありません。これらに加えて中国市場で受け入れられる商品を開発するため、昨年には開発部門を上海に移しています。口で言うのは簡単ですが、これだけのことを全てできている会社はそう多くないでしょう。

 

 今後は二三線都市へ攻めて行きたいとのことですが、中国における今までの成功経験をそのまま持っていくことは考えておらず、やり方にアレンジを加える必要があると考えています。いいですねえ、非常にまともな発想だと思います。新しいことをやるにはそれなりに準備するということです。よくある例ですが、中国に進出したい、うまくいくかどうかわからない、えいっ、会社作っちゃえ、というようなケースがあります。これがたまたま当たると先見性があったということになるのでしょうか、失敗すると中国市場は難しいの一言で済ませてしまうケースが多いように思います。違うのです。新しいことをやるためにはちゃんと準備しないと。いろいろ準備して調べた結果進出しないという結論もありです。進出=成功とは限りませんので。よく調べもせず勢いだけで事業を立ち上げてしまうのはいうならばパチンコと同じでしょう。いや、パチンコでもいわゆるパチプロと呼ばれる人たちは研究に研究を重ねているので、勢いだけでやっているのとは違うはずです。ということで、勢いや気合も大事ですし、ギャンブル的な行動で物事を進めざるを得ない場面もあるかと思いますが、このLOCK&LOCK 社のケースは下準備の重要性を改めて意識させられるケースといえるでしょう。