天福茗茶というお茶屋さんがある。中国在住の方ならまず間違いなく見たことがあるだろう。中国ですでに1078店舗(全部直営)ある。本部の下に華南、華北、華東、華西、華中の5つのエリアに分け、エリア責任者に店舗の管理を任せている。エリア責任者はただの社員ではなく、会社の持分も一部持ってもらっている。これによってモチベーションをあげているのだ。
上海には1994年に進出した。一等地に店舗を設けた。ところがこれが全然だめだった。その次に選んだ場所でもだめで、そしてその次に選んだ場所でも全然だめだった。これだけ続けざまに失敗しているうちに気づいたのが、天福茗茶の店舗のかもし出す雰囲気はまだ当時の上海では早すぎたようだ。自社の持つ雰囲気に合わせるべく次に百貨店内に店舗を出したところ、これがうまくはまり店舗を開けば売れるという状態になった。これは店舗立地・イメージによって左右されるという例である。
うまくいかなかった原因はもうひとつあった。台湾人はウーロン茶を好んで飲むので、上海人もそうに違いないと思ったところ、実はそうではなかったというものだ。店舗にウーロン茶ばかり陳列したところ反応が悪かったのである。場所によって好まれるお茶は違うのである。緑茶が好まれる地域もあれば、プーアル茶が好まれる地域もある。非常に基本的な失敗例かと思うのだが、気づくや否やすぐに上海も含めてエリアごとに並べる商品を変えていったのである。要するに怪我して覚えていったのである。
店舗立地・イメージ、品揃え、ともに傷口の浅いうちに処置したこともあり、今では最大手のお茶屋さんとなった。小売業はやはり店舗の立地、本件のケースでは店舗イメージ、そしてモノ(品揃え)、本ケースでは言及しなかったが価格設定(ポジショニング)。基本的ではあるが、あらためてこの重要さを思い知らされるケースだといえる。