呉明憲コンサルタントの中国ビジネス日記

中国の最新情報を上海・東京・神戸を拠点に活動する株式会社TNCリサーチ&コンサルティングの呉明憲が紹介します。

薬局での非薬品の取扱いが増加

2010年08月31日 | 日記

 中国薬品小売発展研究中心(MDC)が発表したところによると、2009年の中国薬品末端市場の規模は5818億元に達し、前年比20%近くの伸び率となっている。このうち、74%にあたる4300億元余りが病院を通じてのもので、純粋な小売市場は全体の26%の規模に過ぎないという。2009年の薬局の総数は38万、チェーンストア企業は1994ある。そしてトップ100にランクインしているチェーンストア企業の販売総額は40%程度を占めており、前年比5ポイント増加している。

 

 


 20093月に発表された新医改(医薬衛生体制改革の深化に関する意見)では、「住民の医者にかかる費用負担を有効に軽減、医者にかかるのが難しい、医者にかかるのは高いという状況を適切に緩和する」というのを短期間で実現することを目標とし、そして、「都市住民を健全にカバーする基本医療制度を構築し、一般大衆に安全、有効、便利、廉価な医療衛生サービスを提供する」ことを長期目標としている。そして、新医改実施後の薬品小売業に変化が生じた。新医改により、医療保険範囲が拡大され、消費者にとっては病院に行くことで国家の補助が受けられることから、自ずと業院を選好することになった。そのため、小売薬局の市場シェアが減少し、病院の販売比率が上昇したのである。また、薬局の取扱い品も保健品や化粧品にシフトして行っている。一般的な薬品は利益率が低く、そのため保健品や化粧品にシフトして行っているのだ。「マツモトキヨシ化」していってるといえる。

 

 41都市での小売市場データでも小売薬局は非薬品に重点がシフトしているという結果が出ている。2009年の非薬品販売は薬品販売を大きく上回っている。そして、非薬品の中でも保健品とその他日用品及び食品類商品市場シェアが2008年比増加しており、この二大類別は小売薬局の多角化経営がはじめに選択する品種で、また保健品の販売はその4割程度を占めている。

 

 保健品、化粧品といえば日本企業は得意分野といえよう。どちらも許認可がうっとうしい品目だが、実際にWatsonsも上海だけ工商登記ベースで約80店舗あり、ビジネスとしてのチャンスはあるといえるだろう。


基本に立ち返ろう

2010年08月31日 | 日記

 マッキンゼーが発表したところによると、2009年の中国の年間消費額は3.4兆元(約42.5兆円)に達している。とにかく膨大な数字だ。そりゃあ中国国内での販売を考えたくもなるわけだ。さて、さらにその発表の中身を見ていこう。

 

1.中国消費者の新たな特徴


 中国の消費者の新たな特徴というものが見え始めてきている。

(1)これまで中国の消費者の収入水準は低く、大部分の消費は生活必需品(主に食品及び衣服)に向けられ、食品だけでも家庭消費支出の30%を占めていた。その後所得が増加するにつれ、消費者の消費構成における非生活必需品及び半生活必需品の比率がどんどん大きくなって来ている。


(2)中国の消費者は消費の頻度が下がってきている代わりに一回あたりの消費金額が増加してきている。欧米では一回あたりにどっと買い物する人が多く、中国でも買い物の傾向としては欧米化しつつあるといえる。


(3)中国の消費者が買い物する主たる要因は商品の成熟度と機能性がトップ、次に感覚、つまり自分に合うかどうか、自分の家庭に価値があるかどうか等だ。中でも、家庭の要素がどんどん大きくなってきており、他国の消費者よりもここのポイントが大きい。


(4)中国の消費者は往々にして価格の高い商品の品質が良いと考える傾向にある。

 

2.都市群マーケティング


 都市群、報告の中では地理的位置という言い方もしているが、これが消費と生活態度の重要な要素となっている。例えば、深圳では
85%の外来人口がおり、多くが商品購入を決める要因としてテレビ広告を挙げている。一方、広州では現地人が75%を占め、口コミが重要なマーケティングの手段となっている。これは深圳と広州が二つの異なる都市群であることの証明といえる。

 

 そして、報告の中で都市群マーケティングにおける三つの主な順序というものが紹介されているので、ここで紹介しよう。

 

(1)   製品品種と製品組み合わせの調整を行うこと。

 都市によって好みは異なるので、そのあたりを読み違えないこと。

(2)   どのようにブランドを作り上げるかを考えて市場マーケティングを行うこと。

 現地でもっとも有効な伝達方法は何か、これによりコストパフォーマンスの最も良いマーケティングを行うことができる。

(3)   どのようなチャネルと方式を通じて販売を行うかをはっきり考えること。

 都市によって消費者のスタイルが異なる。そのため販売のスタイルを使い分ける必要がある。例えば、北京の消費者はデパートで買い物するのを好むが、上海は専門店で買うのを好むというのがひとつの例だ。

 

 

 要するに中国での販売は中国消費者の消費性向がどうなっているかを把握する必要があり、しかしながらそれを闇雲にやってもしょうがない。なぜならば、中国は場所が広大であり、地域によっても特徴が異なることから、都市によってどのように進めていくべきかを見極めていく必要があるということだ。まあ、当たり前のことといえば当たり前だ。ものすごく当たり前だ。ただ、調査を行った結果あらためてその当たり前のことが明らかになったわけで、この当たり前の結果に対して売り手側としてはピンとはずれな動きをしないようにしないといけない。しかしながら現実にはピンとはずれな動きを見せてしまう企業もいる。中国消費者の好みを真剣に考えることなく、自社の自慢の商品を売ってしまうのが典型的な例だ。また、中国で知名度がないにもかかわらず、それをカバーするような動き、例えば広告であったり、プロモーション活動であったりだが、こういったものに力を入れない例も見られる。お金をかけられないのならそれを知恵でカバーしないといけない。その知恵をひねり出すことができなければ後は運に頼るしかなくなる。さすがに運だけに頼るわけには行かない。特に上海なんて世界中のありとあらゆるタイプの企業が進出してきているので競争が厳しい。やはり基本に立ち返ってどのような商品が受け入れられやすく、どのようなチャネルが効果的で、どのように消費者に知ってもらうか、これらを研究することに集中して知恵を絞っていくことが必要だといえよう。