呉明憲コンサルタントの中国ビジネス日記

中国の最新情報を上海・東京・神戸を拠点に活動する株式会社TNCリサーチ&コンサルティングの呉明憲が紹介します。

中国における倒産とは

2010年08月23日 | 日記

 中国における企業の倒産の定義が良くわからないという話を聞く。日本の場合、会社の実体がなくならない形での倒産がある。破産や生産の場合始めて会社の実体がなくなるが、手形の二次不渡り、民事再生法、会社更生法、和議申請のような場合は会社自体がなくなってしまうわけではない。

中国で言うところの倒産は直訳すると「倒閉」という単語がある。どこまでの状態が倒産といえるのだろうか。中国で手形の不渡りは日本ほどのマイナスイメージはない。そのため、手形の不渡りを二回出した場合、信用状況としてのイメージが悪くなるだけで、日本で言うところの倒産とまでは言われない。こうなると、中国の場合倒産する会社は極めて少なくなってしまう。だから、中国の会社はなかなか倒産しないというようにも感じられる。中国の場合は実際に企業登記を抹消する場合や営業許可証の取消(吊銷)のようなケースを倒産ということができるだろう。2007年6月以来2010年8月20日の記事までの記事掲載ベースでこれが約80万件ある。ということは、この期間における倒産件数が約80万件と理解すればいいだろう。約3年間で約80万件、年間平均で約27万件の計算になる。2009年の日本の倒産件数は1万5480件、中国の人口は日本の10倍あるので単純にこれを10倍にしても15万件強、約27万件という数字はちょっと大きいように思えるが、日本で言うところの倒産状態に至っていない休眠状態にある会社も含まれるであろうからこんなものかもしれない。


 中国で企業が破産申請の受理された件数は2007年6月の破産法施行以来約3000件で、先ほどの約80万件の0.375%に過ぎない。非常に少ないが、その理由として破産に対するイメージが悪いため、すすんで破産申請を行わない、また破産案件事態が面倒であることから、人民法院(裁判所)が面倒くさがったり、マンパワーが足りなかったりして受理したがらないというのもあるようだ。


 現在最高人民法院が積極的に企業破産案件受理の関連司法解釈を制定している以外に、企業破産法に対して総合的、系統的司法解釈の制定を研究しており、その内容には破産原因の認定標準、法院の破産案件受理の審査フローの手順等が含まれている。この草案は300条近くあるようで、現在関係方面の意見募集を行っているという。中国の破産法には単純な破産以外に、更生、和解に関しても含まれているが、破産法の中に組み入れられていることから、会社自体が消滅してしまう破産の一種と思い込み、これを申請したがらないケースがあるというが、草案が実現した場合、企業の破産法に対する理解が深まり、破産法に対する意識が変わり、ちゃんと申請するケースも増加してくるかもしれない。現在制定中の司法解釈の狙いはここにある。