行政書士中村和夫の独り言

外国人雇用・採用コンサルティング、渉外戸籍、入管手続等を専門とする25年目の国際派行政書士が好き勝手につぶやいています!

無尽ってご存じですか?

2008-10-29 13:32:16 | 社会・経済

 ”無尽”という金融システムをご存知でしょうか?私自身詳しくは知らないのですが、もう20年以上も前に、私が赴任していたM国で、学生時代からの友人で、現地で歯科医師として開業していたH君から聞いたシステムなのです。

 確か、”たのもし講(頼母子講)”といっていました。初めて、そのシステムを聞いた時、M国に住む日系人達が、現地の銀行から外国人であるが故に融資を受けれられずに、独自に考え出した金融システムと思い込んでいたのでした。それは、そのシステムに参加している人々が、皆日系人(H自身も事実上、日系1世です。)ばかりだった故に、そのように思ったのでしたが・・・。

 さて、当時、彼に聞いた、その頼母子講なる”無尽”のシステムとは、次のようでものでありました。

 限られた、信頼出来る仲間同士で、1口いくらと決めた頼母子を組むのだそうです。例えば、1口10万円、毎月10日開催の頼母子やら、1口3万円、毎月3日開催の頼母子など、金額や開催日などによって、色々な頼母子があるようです。

 その10万円の頼母子の場合ですが、参加者が仮に10人居ると仮定しますと、その都度に100万円が集まることになります。そこで、資金を必要としない者は、入札紙にゼロか何も書かなくても良いのですが、ゼロばかり続くと出資者は何の利息も得られませんので、メリットは全くなくなります。そこで、輪番制にして、当番で回って来た者は、資金の必要の有無にかかわらず何らかのプラスアルファーの金額(例えば101万円とか・・・)を必ず書くことにします。そうすると、少なくとも、その輪番者か、或いは、本当に資金を必要としている者が、その都度集まる資金100万円に、何らかの利息金額加味した金額で落札される事になります。ですから、出資分に対して、必ず何らかの利息が受け取れるシステムとなります。場合によっては、複数の入札者が現れる場合には、かなりの利息額が得られる月もあるようです。

 残念ながら、私は実際での事情を全く知らないので、これ以上の詳しい説明はできないのです。しかし、日系人の多くは個人事業主が多いので、1年間にはそれなりに資金を必要とする時期が何回かあるようで、それなりの落札額、例えば105万円とか110万円とか高額な利息を払ってでも落札する者が結構いるようです。なお、落札者は次回に、その落札した金額を返済するようシステムだったような気がしていますが、詳しくは記憶にありません。

 こうして、金銭的に余裕のある者は、銀行に預けるよりも高額な配当である利息を得られるばかりでなく、仮に自分自身に突発的に資金が必要になった場合でも、銀行での面倒な手続きで頭を悩ませる必要もなく、更には、銀行でさんざん頭を下げたにも関わらず、結局は断られたりする事などは全くありません。そうゆう意味では、確実に利鞘を稼ぐシムテムばかりでなく、資金をも調達できるという、かなり有効な金融システムでもあるようです。

 こう書くと、良いことづくめのようにも思えますが、ところが、そうとばかりは言えないのです。つまり、資金落札者が、この頼母子で調達した資金を返済できなくなった場合、この出資分を出資した他のメンバーにとっては、その額が不良債権となってしまうリスクも確かにあるのです。

 但し、毎月定期的に頼母子は開催されているようですから、仮に同じメンバーが5年間無事故であり、平均落札額が年利換算8%程度の利息で落札したと仮定した場合、実際の損失は、出資金額の半分程度で済んでしまいます。また、平均落札額が年利換算20%程度であり、それこそ5年間無事故であれば、元金額に相当する配当を得ていますから、損害は軽微となります。そして、もし債務不履行者が出れば、その債務不履行者は、即刻メンバーから外されるばかりでなく、日系人のコミュニティー社会での生活や、特に経済活動からは一切排除されるでしょうから、何とかして決められた日に返済をしようとして頑張るのだそうです。ですから、不良債権化するリスクは、案外と少ないようです。

 勿論、具体的には、それぞれのケースで返済期間や最低上乗せ落札額など、色々と細かいルールはあるようです。このM国の友人であるH君には、もう18年程会っていませんから、今現在の状況は全く分かりません。しかし、おそらく、海外の日系人達の間では、今でもこの頼母子講が、プライベート地下金融システムの中心的な存在であるような気がしています。

 ところで、この”無尽”と呼ばれるシステムですが、調べてみましたら、実は鎌倉時代から存在していた歴史あるシステムなのだそうです。そして、昭和初期にはかなり流行した金融システムでもあったらしく、戦後もこのシステムは相互銀行という形で残っていたのでした。尤も、相互銀行は、90年の日本のバブル経済の崩壊を境にして、その他の類似した特殊銀行である長銀、興銀、日債銀などと共に消滅するか、或いは、普通銀行に転換してしまいました。

 現在は、この金銭無尽を行うことは、銀行を除いて禁止されており、事実上違法行為だそうです。ところが、不動産無尽を行っている、日本住宅無尽株式会社なる三菱東京UFJ銀行系の会社(http://www.nihon-jm.co.jp/index.htm)が、今でも日本で唯一現存しているのだそうでちょっと驚きです。また、明治時代の無尽について具体的に書かれてサイト(http://www.tanken.com/tanomosi.html)もあるのようなので、知識として興味のある方は、ご覧になってみては如何でしょうか。

 最近、このブログでも書いたのですが、銀行が貸し渋りや貸し剥がしなどを今後も行うようであれば、自営業者を中心として、こういった非合法な金融システムが、地下で流行するような気がするのです。それが、問題なく機能したとしても、やはり非合法的な金融システムである事には違いありませんから、きっと何らかの詐欺事件や、或いは、何らかの犯罪事件に繋がることは十分に考えられます。こういった新たな不幸な事件の連鎖が起きなければ良いと心より願う次第です。

 その為にも、このような非合法なプロトタイプ的な金融システムが、いまだに世界のどこかで、或いは、日本でも現存(少なくとも、在日日系人のあいだでは、今でも小規模ながら行われていると、仄聞しています。)していることを、是非皆さんに知って頂きたいと思い、”無尽”の存在をお知らせした次第です。

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