1840年1月17日から11月6日までの僅か10ヶ月足らずの間だけ、今の米国テキサス州とその南側に隣接するメキシコとの間に本当に実在していた幻の国家、リオ・グランデ共和国(スペイン語名=Republica del Rio Grande, 英語名=Republic of the Rio Grande)の存在をご存じの方はおそらく少ないと思う。
しかし、ABBAのヒットソング、FERNANDO(邦題:悲しきフェルナンド)ならば聞かれたことのある方々は多いと思う。
真偽の程は定かではないが、そのリオグランデ共和国の独立戦争で闘った若き兵士フェルナンド(Fernando)の友人(女性だとの説もあるが・・・)が、年老いてから回想している詩であると、その昔メキシコの友人から聞いた事がある。
どの曲でもそうなのだが、詩は簡単なようで分かりにくい。
「輝く星達は、君のため、僕のため、そして自由のために輝いていたんだよ、フェルナンド。負ける事なんて考えたこともなかったし、後悔もしないさ。もし、またそうなったら僕はやるさ!我が友フェルナンド」
「僕たちは年をとり、白髪頭になっちまったな、フェルナンド。もう何年も、君がライフルを手にしたことを見た事が無いな。小太鼓の音が聞こえるかい、フェルナンド? まだ、あの恐ろしかった、リオ・グランデ河を渡った時の夜の事を覚えているかい?君の瞳の中には、この土地の自由の為に闘ったというプライドが僕には見えるよ!」
なんてフレーズが出てくるのであるから、少なくとも的外れとは言えないようだ。イントロで使われている小太鼓の音は、確かに騎兵隊が行進する時の鼓笛隊のリズムのようにも聞こえる。
巷間、メキシコ革命か、或いは、南北戦争が舞台ではないかとも言われてはいるが、壮絶な革命や凄惨な戦争シーンを思い浮かべてこのABBAの”フェルナンド”を聴くよりも、僅か10ヶ月足らずしか存続できなかった幻の小さな独立国、リオ・グランデ共和国の為に命を賭けた少年兵士達の突撃前の不安な一夜を思い浮かべながら、この曲の持つ優しさを聴いた方が、私には遙かなる歴史ロマンを感じることができるのである。
全米トップ40というラジオ番組で訳詞を聞いてその歌詞にとても興味を持ち、学校で使っているショボい英語辞書でラジオの訳詞を思い出しつつ自分なりに訳詞をして、英語の先生に見てもらったのを記憶しています。
こんなに詳しくこの歌の事を紹介しているものを読んだことがなかったので、「あぁそうだったんだ。」と半世紀近く(笑)の胸の痞えがスッキリ落ちて、生きててよかった~という気分です。この記事を書いて下さってありがとうございました。