行政書士中村和夫の独り言

外国人雇用・採用コンサルティング、渉外戸籍、入管手続等を専門とする24年目の国際派行政書士が好き勝手につぶやいています!

代償体験と直接体験

2007-09-29 02:16:19 | その他

 もう、30年以上も前に「代償体験」について書かれた本を読んだのですが、題名がはっきしないのです。確か、カリフォルニア大学のハヤカワ先生なる人が書いたものだと記憶しているのですが・・・。しかし、ネットで検索しても出て来ません。私の記憶違いだったのでしょうか?

 ところで、その「代償体験」ですが、「直接体験」の反意語だそうで。つまり、直接体験できない体験を、他の媒体を通して疑似体験する事という意味らしいのです。例えば、小説や随筆を読んだり、映画やTVドラマを見たり、友人からの実体験の話を聞いたり等々、自分自身による直接体験以外の方法による体験を称して、「代償体験」とその本は書いていました。

 そして、仮に平均寿命まで生きた場合、その人間が体験できる経験は物理的には限られている為に、人間は必ず、本を読んだり、映画を見たり、人と話をしたりして、その限られた直接体験の代わりを埋めようとして、代償体験に頼ろうとするのだそうです。

 読んでいて、『なるほど』と、大いに納得した記憶があります。確かに、1日24時間、年間365日という時間は、どうにもならないのです。どんなにお金持ちであろうと、時間を買うことはできません。22歳の青年の、今という時間は、皆に平等にあり、それが楽しい時間なのか、悲しい時間なのか、充実している時間なのか、或いは、無為に過ごしている時間なのかといった事にはまったく関係なく平等に過ぎて行きます。

 代償体験は大変便利です。例えば、1年掛かって他人が体験した事を、僅か1~2日の文章を読むことによって、その概要を体験できてしまうからです。また、大変危険な経験や、とても耐えられないような恐ろしい経験でさえも、何のリスクも無しに、文章や映像や動画、或いは会話などから疑似体験できてしまうのです。

 しかし、その本は、代償体験の危険性もまた指摘していました。つまり、所詮は代償体験であり、直接体験でないから、誇張されたり、デフォルメされた体験もあれば、全くの架空の体験もあるし、本当に見せかけたような全くのデタラメな体験もある。そういった多くの代償体験の中から真実、架空、誇張といった面を見分けなければ、却って代償体験は危険であるとも書いていたのでした。

 とはいえ、結論として、我々人間には限られた時間しかないのだから、やはり代償体験に頼るしかなく、それが文化・文明の源でもある、と書かれていた記憶があります。つまり、『人の話は、半分は嘘と思って聞きましょう!でも、聞かないことには、知識や経験は増えませんよ!だから、どんどん書物を読み、また、人の話を聞きましょう!』と、私は当時このように解釈したのでした。

 それからというもの、年配者の説教じみた話や、友人や先輩の自慢話、酔っぱらいの説教等々を聞くことが苦痛でなくなりました。むしろ、この様な話の中のどこが本当なのだろうか?なんて勝手に推理や想像を巡らせたり、このオヤジは何故こんな説教話を我々にするのか?などと、逆にこういった話を聞くことが楽しくなったのでした。

 そんな私でも、40歳を過ぎた頃、気が付いたら、もう説教してくれる者が本当に少なくなっていました。誠に寂しい限りです。そんな私に、今でも説教をしてくれる数少ない貴重な存在が幾人かの友人とカミさんだけなのです。今後とも宜しくお願いします!

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お待ちしています!

2007-09-24 13:23:06 | 資格・転職・就職

 今年の行政書士試験は、11月11日と1の4並びです。そういえば、私の受験番号は1234番でした。そして、東京都行政書士会の登録番号が、4231号と並び方は違うものの同じ4つの番号です。不思議な話です。

 ちなみに、バラしちゃいますが、模擬試験を含めて本試験が1番良くできました。少なくとも3問ほど(実際は5問かもしれません・・・)、まぐれ当たりしただけの話ですが・・・。

 このブログをご愛読頂いている方々の中には、行政書士を目指している方々もいらっしゃるようで、何かお役に立つ経験は書けないかと思って考えましたが、もう9年も昔の話ですので、何も頭に浮かびません。強いてあげれば、当日は時間的に余裕をもって早めに試験会場に行きました。でも、本などは広げず、ただただボ~としていました。

 そういえば、資格予備校ダイエックスの元講師で、行政書士として同業でもある「酒井滋先生」が書かれている『弱点発見!行政書士問題集(¥1,890)』(https://bookweb.kinokuniya.co.jp/hb/wshosea.cgi?W-NIPS=9981725242&BN=OFF)なる本がありますのでお勧め致します。

 講師として教えて頂いたことはありませんが、同業として大変真面目で、誠実な方ですので、きっと良い本を書かれたに違いないと確信して推薦致します。お互いの事務所は、ごくごく近くです。

 それでは、試験を目指している方々! 最後の一踏ん張り、体調に気を付けながらラストスパートして下さい。 同業としてお待ちしています!

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サプライズな、ビジネスブレックファースト

2007-09-17 12:37:04 | 海外事情

 18年前の9月12日の朝の事です;

「明日の朝、向かいのXXXで、朝8時にミーティングやるからなぁ!直接、集合だから。」

「あ~。あのご当地料理のレストランですね!テーマは、何でしょうか?」

「社長以下、会社の連中が相手だから、気楽なブレックファーストミーティングと考えて貰ってていいから。もう、会社の今後の基本方針も固まった事だし。なぁ!」

「はい。承知しました。では、直行します。」

***

 私は、87年から3年間ほど、M国の大径管製造会社に赴任していました。M国政府と日本政府、それに鉄鋼メーカーであるS金属などが出資していたODA対象のナショナル・プロジェクトでもありました。

 大径管とは、石油産油国などで見かけるパイプラインなどの鋼製の巨大なパイプですが、当時これを製造できる国は、日本、ドイツ、アメリカ、ソ連、フランスなどの数カ国に限られており、先端技術産業でもあったのです。特に、高品質な鋼管を製造できたのは、日本とドイツのメーカーしかない程であったのでした。

 最初の1年半は、M国の僻地ような土地にある工場で行われていた技術移転指導の通訳として、日本から派遣されていました。製造現場に関わるのは、生まれて初めての経験で、製造材料の仕様、調達、搬入からすべて製造の工程、品質管理、製造機械のメンテ、出荷、船積とすべてに関わることができ、大変勉強になりました。

 特に、日本メーカーの技術者達のレベルの高さ、品質管理・失敗を徹底的に究明し、それを生かす姿勢、チームとしての団結力など、先進工業国として世界の産業を席捲できた理由をこの目で直に見て、体験できた貴重な経験でした。そして、後半のMシティー本社勤務の1年半を含めた、この3年間の経験は私の人生にとっては、最も重要な知識が吸収できた時代でありました。

 そんな、ヘルメットと安全靴(靴の先端に鉄板が入っている頑丈な靴)が、やっと似合うようになって来た現場での生活だったのですが・・・。大口受注による生産が一段落した事もあって首都Mシティーにある本社の社長顧問(日本側の代表)のMさんから、本社への出張を命ぜられたのでした。

 Mさんは、M国の大臣、日本のM金属本社の専務などと共に、工場に大名行列のようにおみえになった時、工場の会議室でのミーティングでご挨拶した程度ですから、「専務の隣に座った、態度のでかい恐い顔の人(すみませ~んm(_ _)m。堂々とした方と言うべきですが、当時はそう思っていました(>_<)。)くらいしか思っていませんでした。ですので、本社への出張は、あまり乗り気ではありませんでした。

 Mシティーに到着後、早速M金属の事務所で打ち合わせがあり、私は大事な会議の通訳として参加することを、はじめて聞かされたのでした。勿論、事務所長のOさんや出向している財務部長のIさんにもお手伝い頂けるとの事でしたが・・・。驚いたのは、会議のテーマでした。会社には250億円以上の債務があって、その問題の解消案を話し合うためだというのです。仮に、半分ずつの125億円の債務を両国サイドで引き受けるなんて提案があったとしても、民間会社や日本政府としてとても首を振れる話ではないのです。日本政府に至っては、税金を1円足りとて出す筈が無いとの事で、まだ33歳程度の若造にとっては、とても想像の出来ない世界の話でした。

 翌日、ふかふかな絨毯が敷き詰められた本社重役会議室の重厚な扉にまずびっくりしました。そして、中には巨大な会議用のオーバルデーブルがあって、映画の重役会議室そっくりな光景に唖然としました。時々、通訳として会議には出たことはありましたが、こんなに立派(だから、会社は赤字だったのでしょうねぇ!)な会議室を持った会社だとは全く知りませんでした。そして、そこにはM国の各監督官庁、国営銀行の局長級の方々7~8人が居たのでした。彼らのほとんどは、ハーバード大学やらスタンフォード大学などで、MBAやら博士号などを取得している優秀な官僚達だったようです。

 そんな会議ですから、最初は全くビビッっていた私でしたが、M国経営側の勝手な論理主張に腹が立って、通訳としてではなく、製造現場に居る人間の一人として噛みついていたのした。そんな越権行為を犯した私を、社長顧問のMさんは怒るわけでもなく、よく言ってくれたと、逆に褒めてくれたのでした。そして、財務部長のIさん、事務所長のOさんに、「君たちさぁ、今後は僕と中村君でなんとかやって行けるから、もう日本へ帰んなさい!君達にはまだまだやって貰うことがあるから、こんな所で、無駄に過ごしてはいけない。専務には私から話しておくから!」と、さっさっと決めてしまったのでした。

 そうして、Mさんとの1年以上に渡る、連日の合同会議、個別ミーティング、ランチミーティング、朝食会といった奮闘勤務になるのですが、この時の事は、いずれ機会があればお話したいと思います。Mさんには、僅か1年半程仕えさせて頂いただけではありますが、企業経理、経営管理、コスト計算、販売価格の決定と限界価格といった会社経営知識全般から、交渉術、段取り方法に至るまで、おそらく現在の私の基礎を築いたノウハウの多くをこの短期間で教えて頂きました。

 さて、こういった会議、会議、ミーティング、ミーティング、ランチ、ランチ、朝食会といった毎日でしたから、Mシティーの主なレントランはほとんど制覇した程(当時は若かったので、いくら食べても太らなかったのですねぇ_(._.)_・・・)でした。

***

 前置きが大変長くなりましたが、眠い目を擦りながら会社の向かいにあるレストランXXXのビジネス・ブレックファーストに望むべく直行したのでした。レンストラン・マネージャーに、「さあ、こちらへ、どうぞ」と導かれて、会社の主立ったメンバー一同が全員既に揃って、私を見てニコニコしているのです。「何事なんだろう?どうかしたのかなぁ?」と思ってボウ~と立っていると、お誕生日の歌(M国では、独特なバースデイ・ソングがあります。)を皆が歌い始めるではないですが、唖然として固まったいるのを見て、Mさん

「馬鹿だな、今日あんたの誕生日だろ!」

「ナカムラ!お誕生日オメデトウ!いつもありがとう!」

と、社長から始まって、会社のお偉いさん達や同僚にお祝いを言われて、もうただただビックリというか、感激でした。この年になって、こんな沢山の人々に誕生日を祝って貰うなんて一度もありませんでしたし、きっとこれからも無いと思います。

 彼らは問題を起こした当時の経営陣ではありませんでしたが、前社長解任後に就任した元予算企画省局長だった、天下り人事であった事には何ら変わりはありません。社長自身が連れてきた部下も10人近くいたのでした。日頃は、会議などで通訳とはいえ、M国サイドの経営責任を厳しく追求しており、彼らから憎まれこそすれ、決して祝って貰うなど、到底考えられない仕事ぶりのだったのですが・・・。まあ、日頃は、社長が連れてきた若手の幹部連中と冗談を言い合う程の関係ではあったのですが、それにしても・・・。

 とにかく、かれらM国人は陽気で、人柄は断然良い人が多く人なつっこいのです。最近は縁は無くなりましたが、少なくとも、私はそんな彼らの事を友人として、いまでも大好きです。但し、仕事のパートナーとしては??ですけれどねぇ。

 そんな思い出深いサプライズなビジネス・ブレックファースト?でした。

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士業ビジネスのモラル(シリーズ第7回 その3)

2007-09-11 14:02:41 | 行政書士のお仕事

 そもそも、我々行政書士等の士業に依頼してくる場合、クライアント側には以下の依頼理由があります。

1.調べてみたが、とても難しくて手に負えない。

2.自分(或いは、会社)で手続はできるのだが、要件が微妙であり、許可を受けられるどうかがはっきりしないので、専門家に頼みたい。

3.自分(或いは、会社)で手続はできるし、申請すれば許可は下りると思うのだが、本業が忙しくて、自分でやっている時間がないので専門家にお願いしたい。

4.自分(或いは、会社)で手続はできるし、許可も問題なく下りると思うのだが、時間が勿体ないので安ければ外注したい。

 昨今は、行政手続は簡素化され、要求される要件や立証証拠も大幅に緩和されています。しかし、やはり1.や2.のようなご事情で依頼に来られるクライアントが圧倒的に多いのです。しかしながら、例えば旅券申請のように、誰でもできるが時間が無いとか、安ければ頼みたいという行政手続も決して少なくはありません。

 しかし、概ね以上のような理由でのご依頼が圧倒的多数を占めるのですが、希に上記以外の理由による依頼もあるのです。例えば、:

(ア)1.2.のような状況であっても、3.4.のような気持ちを持っている場合。

(イ)とても許可されないとは思いながら、専門家ならなんとかなるであろうと期待する場合。

(ウ)明らかに隠し事や不正があるために、ワンクッションとして我々専門家を利用しようとする場合。

 基本的には、以上ようなケースから足を踏み外す士業が最も多いのです。(ア)のような場合ですと、軽く考えている事もあって、偽造・虚偽申請について、依頼者側に不正をする、或いは、させるといった意識が希薄であることが多いのす。(イ)は明らかにクロいモノをシロくすることであり、(ウ)の場合は我々が気が付かずに巻き込まれるケースであります。

 以上のような状況に対処する為には、士業としての「不正に決して関与しないという強固な倫理観」や、「簡単に依頼人に付け込まれないプロとしての実力と実績」がやはり不可欠であろうと考えます。

 そうは言っても、(イ)(ウ)のような邪な考えをもって依頼に来るクライアントを少なくする事は出来ても、全く無くす事は不可能であります。そんな中での事例を最後にいくつか列挙してみたいと思います。

【元政治家秘書からの依頼】

元秘書「元気そうやなぁ。今日はなあ、ひとつ申請を取り次いで貰いたいんや。後援会筋からの話しでな、やってくれるな?書類は一通り揃っているはずやから!」

書 士「ざっと見た感じでは、だいたい揃っているようですが、精査させて頂きたいので・・・。質問は、この方の電話番号へ直接させて頂いて宜しいですか?」

元秘書「わかっているやろ。ワシに聞いてたって!本人は忙しいらしいからな。頼むな!」

 有無を言わさない、威圧的な言い方は、海千山千の元秘書だけのことはあります。しかし、書類を一見して、怪しいと直感したのでした。それは、本当に書類が揃い過ぎているからで、実に良くできていると言うか、出来すぎているのです。なぜ、本人申請しないのかと、疑問に思ったのでした。

 こうして、事務所に戻って1枚1枚、念入りに読み込み始めて30分、「これだ!これはやばい!早速断ろう!」。どこからどう見ても文句なしのように見えた申請書類であったのでしたが、賃貸借契約書の条文の中の「店舗」という文字を見つけたのでした。「事務所」のはずなのに、なぜ店舗なのか?これはもう、すべてが虚偽の内容であると決めつけて良さそうでした。

 早速、元秘書先生をお訪ねして:

書 士「この申請のお手伝いですが、辞退させて下さい。」

元秘書「なんでや?何かあるんかいなぁ?」

書 士「この事務所の賃貸借契約、”店舗”って書いてありますよね?これでは、取次できません!」

元秘書「ほんまやわ!わかった。あんたの言うとおりや。悪かったなあ。」

 この元秘書氏が知っていてやった事なのか、今となっては知る由もないのですが、あっさりと引っ込めたところを見ると、どうも私を利用しようとしたと思うのです。ちなみに、6年ほど前のこの一件以来、この方とは疎遠となっています。

【偽日系人に関わる申請依頼】

依頼人「彼は、妹の配偶者でして、今回、もう一人の妹を呼び寄せたいのですが。私は今、失業中なので、彼に保証人になって貰いたいのですが・・・」

書 士「保証人は、収入がしっかりしていれば誰でも良いのですが、申請代理人は、兄である貴方がなるべきでは?義理の弟である彼が申請代理人になるのは、2親等の姻族ですから問題はないのですが・・・、ちょっと不自然ですね。」

依頼人「でも、今は仕事が無いものですから・・・。わかりました・・・。」

 何か、乗り気でない依頼人に比べて、義理の弟と称する饒舌な男が、積極的であった事がちょっと気になったのですが・・・。

 ところが、申請して2~3週間してからであろうか、依頼人が一人で突然事務所を訪ねて来たのでした。

書 士「申請結果について、まだまだ2ヶ月はかかりますよ。今日は何か?」

依頼人「質問なのですが、本当の妹でない申請をしたら、どうなりますか?」

書   士「どうなるって、虚偽の申請ですから、最悪逮捕されますが・・・」

 と、突然、依頼人は泣き出して、

依頼人「済みません。申請したのは、本当の妹ではないのです。本当は、あの一緒に来ていた義弟の妹なんです。彼に、頼まれてしまって・・・。」と、ポロポロ涙を流し始めました。

書 士「そうすると、出生証明書は偽造書類なんですか?」

依頼人「いえ、書類は本物です。旅券も本物です。」

書 士「ちょっと、待って下さい!どうゆう事だか、よく分からないのですが・・・」

依頼人「書類は、市役所の元職員達が作ったものですから・・・」

書 士「なるほど、市役所職員達が出生登録簿を改ざんしたのか、差し替えたのですね?ですから、旅券もその名前で発給させているのですね。」

依頼人「私は、どうなんるのでしょうか?どうすれば良いのでしょうか?」と、目を真っ赤にした依頼人ですから、彼も被害者かもしれないと思ったのでした。

書 士「幸い、貴方が首謀者ではないようですが、犯罪に関与した事には疑いはありません。今、言った話を、正直に書面に書いて下さい。宛先は法務大臣です。」

 相変わらず、涙を流す依頼人に、今正直に言わないと、本当に逮捕されるかもしれませんよ!と警告して、自白書面を書かせ、訳文を添付して翌日取り下げに行ったのでした。

 幸いに、担当官は好意的に応対してくれ、「正直に話して下さったのですから、今回に限り不問にしますが、義弟の方にはそれなりの処分が下りる覚悟はして下さい。それにしても、本物であれば偽造とは分かりませんよね!困りましたね・・・」と嘆いていたのが印象的でした。

 その後、こういった偽造書類事件には数回遭遇しました。なかには、女性弁護士さんが届け出た偽造婚姻証明(届出人自体も存在しない人間だった!)を数年後、依頼人の要望で発見した事もあります。

 また、依頼人自身が気が付かないでいるようなケースも多々ありますので、こういった偽造書類(なりすましも含めて)はなかなか無くならないのが現状です。しかし、こう言った偽造書類を多用するような依頼人に簡単に利用され易い士業ではあってはならないと思います。

 行政書士にも守秘義務はありますが、こういった虚偽申請事件に関しては、守秘義務は該当しません。ですから、積極的に当局に通報して、協力して行くことがとても大切だと、私は思う次第です。

 以上、今回のシリーズでちょっと、仕事をするのが恐くなった思った方もいるのではないでしょうか?実際、この手の依頼を受け、騙された事で、「もう、こんな仕事は受けたくない」と、その分野で撤退した同業の方も実際にいらっしゃいます。しかし、最初に書いた例ではないのですが、虚偽申請を見破る事、これもプロの技で、快感なのではないのでしょうか?切磋琢磨して、頑張ろうではありませんか!

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士業ビジネスのモラル(シリーズ第7回 その2)

2007-09-04 03:10:09 | 行政書士のお仕事

 前回お約束したように、ひとつ間違えば犯罪行為に手を染めてしまうような事例をいくつか紹介してみよう。

【事例1】日本人と結婚して1年数ヶ月で、姑さんとの不仲が原因で、離婚してしまった女性のケース。

書 士:「離婚届は、もう出したのですか?」

相談者:「ええ、主人は本当は良い人で、別れたくなかったと思うのですが・・・母親との間で板挟みになっていて、仕方がないと思って諦めたのでしょう。昨日出しました。」

書 士:「今はどういったお仕事ですか?そして失礼ですけど、最終学歴は?」

相談者:「貿易会社でアルバイト事務員をしてます。大学は、結婚したので、2年目で中退してしまいました。」

会社上司:「よく働いてくれるので、会社としては、何とかしてあげたいと思うのですが、何か良い方法はあるのでしょうか?」

書 士:「お話を伺った限りでは、婚姻期間が短いので、元日本人の配偶者としての在留資格の変更は許可されないでしょうし、学歴もせめて短大でも卒業していれば、貿易業務で翻訳などをやっているようなので、可能性があるのですが・・・」「仕事を続けるというのは難しいですね。」「離婚されたばかりで、失礼な質問ですが、どなたか交際している方でもいるのですか?それであれば、待婚期間が過ぎるのを待って、結婚されるのも方法かとは思うのですが・・・」

相談者:「とくに・・・。今は・・・いない、の・・ですが・・・」

会社上司:「この年まで、縁がなかった男ですから、XXさん良ければ、形だけでも私の名前をお貸ししても良いのですが・・・。それで、XXさんが日本に残れるのであればですが・・・。」

書 士:「ちょっと、待って下さい!」「それは、偽装結婚になってしまいますよ!」「それだけはお勧めできません。」「最悪、お二人とも捕まってしまうのですよ!」

相談者:「あのう・・・。その話、少し考えさせて下さい。嘘の結婚とかではなくて・・・」「でも、急な話で、びっくりしちゃって・・・」

書 士:「あら!意外な展開になって来ましたねぇ!」「しかし、まあ、お二人の心が本当に熟すまで、もう少し待って見ましょう。ところで、XXさんはお若いし、日本語もお上手ですから、大学受験をして見ませんか?まだ6ヶ月以上あるので、勉強は間に合うと思うのですが、やってみませんか?」「学校生活が慣れるまでアルバイトの許可は下りませんが、今の在留期間ぎりぎりまでは働けます。そして、学校を真面目にちゃんと通えば、後期からは1日4時間以内のアルバイトも許可されますよ。頑張ってみませんか?」

相談者:「あ~!その方法いいかもしれません。実は、もっと勉強もしたかったんです。」

会社上司:「日頃良くやってくれているので、会社としてもXXさんが勉強できるような態勢で協力して行きます。」

 と、まあ目出度し目出度しといった結末ですが、実は、この話し、5年~6年ほど前に実際にあった二つの話をくっつけて作った架空の話です。しかし、偽装結婚してまでも、何とか日本に残してあげたいと言った方が、本当にいましたし、姑と折り合いが悪く、日本人夫と離婚して、急遽大学受験の勉強して、見事に合格した外国人女性も本当にいました。

 前者の場合、変な同情が過ぎると、偽装結婚を助長したり、或いは見逃したりすることになってしまうのです。本事例のように、同情か恋愛感情かが不明瞭な事案の場合については、結婚という話を敢えて教唆するような言質は極力避けるべきでしょう。やはり、原理原則を相談者には、とことんまで説明し、理解して貰うことが大切なのです。

 一方、後者の場合ですが、このような適切なアドバイス(大学受験)ができるかどうかが、最大のポイントです。相談者ご本人の年齢や将来性を考えれば必然的に出てくるアドバイスなのですが、ついつい簡単な解決策である、身分を使った解決法、すなわち、次の結婚相手を見つけるように、と、まるで偽装結婚を教唆しているのと同じ事なアドバイスになってしまいます。

 ちなみに、こういった外国人と偽装結婚しても良いと思うような、いわゆる戸籍を売るような日本人男性とのルートがあって、もし紹介でもしたのならば、これはもう立派な犯罪です。

 ですから、下手な親切心や同情から、犯罪へ関わることを避けるためには、やはり実務に精通し、的確なアドバイスが常に出来る行政書士であることが求められます。その為には、短時間に相談者のシチュエーションを確実に把握し、あらゆる可能性を検証できる知識が不可欠ではないかと思います。これが足りないと、親切心や同情心ばかりが先行してしまって、結果として、虚偽申請に関わってしまう事も多々あるのではないかと想像する次第です。

【事例2】建設業許可に関する相談で、要件不足がはっきりしているケース

書 士:「お話を伺った限りでは、社長ご自身の技術者としての経験年数が、どうしても1年足りませんね。」「やはり、XXの有資格者を常勤で雇用されるしかないでしょうね。」

相談者:「常勤ですか?アルバイトというか、非常勤の有資格者では駄目なんですかねぇ?」

書 士:「常勤性については、社会保険の加入や通勤定期券のチェックがある場合がありますから・・・」

相談者:「何か、そういった有資格者をご紹介頂けないですかねぇ!それも、こちらにとっての好条件で・・・。」「そうゆう事、やってくれるんじゃないのですか?」

書 士:「それは、名板貸しといって、犯罪になっちゃいますよねぇ。」「こんな僅か10万15万の報酬で捕まったら、割が合いませんよ。尤も、それが、100万、150万でも、私は、やりませんけどねぇ!ハハハ。」

 こう言ってしまえば、勘違いしている相談者は、大人しくお帰り頂けると思うのである。ちょっとでも、物欲しそうな顔をすれば、そこに付け込まれるのは確実なのだ。何せ、彼ら経営者の方々は、海千山千の強者ばかりですから・・・。中には、裁判所の法廷でさえ、平気で嘘を並べ立てる輩もいるくらいなのですから・・・。

 さて、次回は、恥ずかしながら自分の実例も含めて、過去に実際に騙されたり、利用されたりした事例をご紹介しようと思う。

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