例えば、ある南米ペルー人夫婦が、本邦において、
昨年の某月に、調停離婚を成立させ、
同年某月に、居住地の市役所に離婚届を出したものの、
気が変わって本国での手続を行わず、
その数ヶ月後に再び同居を始め、
そして、再婚の届出をしようとしたところ、
婚姻具備証明書が提出できないので、
受理できないといわれた事例の場合、
皆さんならどうされますか?
本来、外国人の実質的婚姻要件は、
その外国人の本国法であるペルー民法によりますから、
本国での離婚手続(裁判所で行う必要あり!)が
終わっていないことから、彼らが日本で再婚すれば、
重婚となる虞があります。
そこで、市役所は、「婚姻要件が具備されていない!」上に、
重婚となる可能性もあるので、再婚届は受理できないと
回答することは当然の話です。
ところが、以下のような戸籍先例があり、それを知らないと、
そのご夫婦お二人の人生をも狂わせてしまうことにも
なりかねないのです。
つまり、平成18・1・20民一128回答によれば、
「日本方式でブラジル人男と協議離婚したペルー人女が、
ペルー人男との婚姻の創設的届出を提出してきた事案において、
婚姻成立の問題の先決問題となる離婚の有無につき、
先行する離婚が法例(法適用通則法)により定められた
準拠法により有効に成立していれば、
当事者の本国法上成立していない場合であっても、
本件婚姻は重婚に当たらない」という戸籍先例があります。
この先例を知っていれば、このご夫婦が、この先例に従って、
婚姻要件具備証明は提出はできないが、重婚とならずに
再婚できることが分かります。
そこで、彼らが居住する市役所の戸籍担当職員さんに、
この戸籍先例を事前に説明すれば、手続がスムーズに進み、
彼らご夫婦のやり直しに協力することができるのです。
実際、そんな事案をつい先日に受任し、
受理照会(いったん、届出を法務局へ上げて審査された後、
「受理・不受理」の指示が、各市区町村戸籍窓口に下される制度)
の上、先日受理(受理日は、最初の届出日に遡って受理)されました。
http://kosekikenkyu.blogspot.jp/2013/06/blog-post.html
一方で、日本に居住する韓国人どうしの離婚を
前述の考えに従って進めてしまうことは、
あとあとに、大変な問題を引き起こすことになります。
それは、韓国法では、離婚は熟慮期間を設けており、
熟慮期間を経ないで行った離婚は、無効となってしまいます。
つまり、日本に居る韓国人同士の協議離婚は、
平成16年9月20日以後は、
在日韓国大使館で離婚届(大使館離婚)する
以外にはないのです。
勿論、日本に常居所を有している韓国人の場合、
市区町村の窓口で協議離婚届出が受理されてしまう一方で、
本国である韓国では上記の熟慮期間が必要であり、
安易に日本式で協議離婚をしてしまうと、
それこそ韓国法上の重婚となってしまいます。
このシステムを知らないと大変面倒なことになってしまいます。
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この様に、それぞれの外国人の方々の本国法や、
婚姻や離婚の挙行地である日本法、
更には、本邦の法務当局の判断などにより、
手続方法や解釈が全く異なってくるのが、
渉外戸籍手続なのです。
この分野は、弁護士さんでも詳しい方は少なく、
まして、司法書士さんの大多数はご存じ居ない方々ばかりです。
また、この分野は、外国人の在留資格にも密接に関わることから、
在留手続のプロである行政書士が、その専門家として、
積極的に台頭すべき分野なのです!
ところが、残念ながら、まだまだ多くの行政書士が、
専門家と呼べるレベルに達していません!
今からでも遅くありませんから、どうかお近くの同業者達と共に、
この難しく、深い渉外戸籍を勉強して、定型業務の一つとして、
組み込まれるよう、日々研鑽して頂きたいものです。
渉外戸籍、得意分野になりたいです!
是非、やって下さい。渉外戸籍手続の虎の巻もありますので、東京にお越しの節はご連絡下さい!