野田新政権がスタートした。
まずは、震災復興が急務ではあるが、税と年金の一体改革や財政再建、そして近隣諸国との外交、沖縄普天間基地移転問題の他に、特に自由貿易の問題としての国内産業保護の問題などもある。
自動車、同部品、電子デバイス、精密機械、産業機械などの日本製品輸出によって富としての多額の外貨を稼ぎ出している国内産業に対しては、当然ながら特に産業保護政策は行われていないので、諸外国からはこれらの日本製品には一定の関税を掛けられている。
一方で、米、麦、肉製品、乳製品などでは未だに国内産業保護や食料品自給率確保の名の下に輸入数量制限やら高率関税によって保護されている製品が多々ある。
これらの関税を原則無くそうというのが、TPPなどの自由貿易協定である。
輸出型の国内産業にとっては、関税の撤廃によって円高による苦しみは和らぎ国際競争力は維持できる一方で、輸入品と競合する国内産業にとっては、安い輸入品が大量流入することでその産業は大打撃を受けることとなる。
革製品、靴、衣料品などは、海外高級ブランド品や低価格輸入品の台頭によって、国内産業が衰退の一途を辿っている事も事実ではあるが、高級衣料品や高級皮革品では、海外ブランドの下請工場として生き残っている企業もあり、ユニクロのように多国籍化させた戦略で、寧ろトップランナーになっている企業もある。
また、ウィスキー、ビール、ワイン、洋菓子、野菜、オレンジなど、かつては国内産業育成の名目で高関税率によって保護されていたこれらの製品でも、関税率の引き下げで確かに輸入品は急増したものの、全体としての流通量はむしろ増えて、国産品も育っている産業もある。更には、一歩進んで、一部の国産品では世界レベルに躍り出て、国際競争力にも優れた品となっているものもある。
お米も、一部外国産米が輸入され始めてからは、逆に輸出できるような高級国産ブランド米もちらほらと出始めたようである。
この様に、産業を過度に保護する事は、その産業の成長力や変身力を却って阻害させているかのようにも見える。一般的には衰退産業を保護したとしても、結局はその産業の延命行為にしかならないという考えが有力なようだ。
しかし短期間に一気に門戸を開放すれば、倒産による廃業やら、業種転換に追い込まれる事業主も多々出るであろうから、セーフティーネットとしての倒産・廃業対策や業種転換保証制度などは確実に必要になると思う。
かつての花形産業であった蚕糸産業、石炭産業、繊維産業などをその衰退期に保護をせずに、これらの産業の壊滅的な衰退を招き、多くの倒産企業や失業者を生み出した苦い経験もある一方で、新たに国際競争力の優れた数多くの製品も生み出す産業も育ったことも事実なのである。つまり、結果として歴史的に間違っていた産業政策とは評価されなかったようである。
どの顔も立てようとする野田新政権のスタイルから、どの産業にも顔を立てようとすると、残念ながら矛盾を起こしてしまうのが産業・貿易政策である。
さて、果たして後生の歴史に正しいかった政策と評価される政策を行えるのか、或いは、あの時の政策が日本経済にとって致命的となったと言われるのか、まさに正念場となる内閣なのである。